――境界の夜――
読んでいただき、ありがとうございます。新しく連載をはじめました。
本日同時に次の話のプロローグとともに投稿しております。
本当に久しぶりの連載です。完結までお付き合いいただければ幸いです。
よろしくお願いいたします。
――境界の夜――
かつて、この世界の境がまだ曖昧だった頃。
強き者も、弱き者も。
大きな者も、小さな者も。
輝ける者も、闇に潜む者も。
水の者も、空の者も、大地の者も
すべての種族は、ひとつの世界で手を取り合っていた。
人々は種族の垣根を越えて交流し、国々は栄えていた。
だが、富める者たちは、さらなる富を求めた。
大帝国ブルガールの神殿で、人々は祈った。
もっと豊かに。
もっと強く。
もっと多くを。
その祈りは風に乗り、光に溶け――
やがて、この世界には存在しないものを呼び寄せた。
若き者。
老いたる者。
異形の者。
この世界とは異なる知恵と力を持つ者たち。
人々は彼らを受け入れ、交わった。
そして――世界の均衡は、静かに崩れ始めた。
ひとつの街が栄えると、別の街が衰えた。
ひとつの祈りが叶うと、別の祈りがひび割れた。
小さな争いはやがて大きな争いとなり、人の国に綻びが広がっていった。
やがて、異変に気づいた者たちは人の輪から離れ、それぞれの国へと戻っていった。
残された人々は、ようやく気づいた。
自分たちが呼び寄せたものは、富をもたらす存在ではなかった。
この世界の「形」と、異界の「形」は――
決して重なり合わないのだと。
そして、ある夜。
空から、裂けるような光が大地を覆った。
大地が低く唸り、大海原が割れた。
偉大なる大帝国ブルガールは、海の彼方へと墜ちていった。
その日を境に、世界は変わった。
人々は恐れた。
再び「異界のもの」を呼べば、世界はまた軋むのではないかと。
だから今も、語り継がれている。
――異界のものは、この世界を乱す「禁忌」である――
そして人々は、あの夜をこう呼んだ。
『境界の夜』と。
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