24.銀髪の美女
負けてからしばらく落ち込んだ。
自分でも分かるくらいに落ち込んでいたし、厩務員のお兄さんが全力で気を遣ってくれるくらいにははっきりと落ち込んでいた。
だから――
今、目の前に銀髪の美女が主と立っているこの状況が正直、よく分からない。
『はじめまして、アクアファーナ。私はアイリス。あなた、本当に素晴らしい馬ね』
差し出されたのは、赤くてみずみずしい果物。
――苺じゃん?!
馬になってから初めて見たよ!!!
人間だった頃の大好物にありがたくかぶりつく。
……うん。
やっぱり美味しい。
それはそれとして。
重要なのは、そこじゃない。
――私、この人間が何を言っているのか、分かる。
なんでかって?
そりゃあ、分かる。
だって――
この人、日本語でしゃべってるから。
『ジュラ、――――』
……あ。
今のは分からなかった。
途中で言語が切り替わった。
たぶん。
いやぁ、人間の言葉がちゃんと分かるなんて本当に久しぶりの感覚だ。
普段は「なんとなく」しか分からないし、難しい話になると一気についていけなくなる。
外国から来た騎手もいる世界だし、この世界に日本語を話す国があってもおかしくはない。
……ない、よね?
いや、それより。
私は果物を噛みながら改めて目の前の女性をじっと見た。
銀色の髪。
整った顔立ち。
そして――
目の奥に宿る、妙な熱。
それにしても。
この銀髪。
どこかで見たことがあるような……?
胸の奥が微かにざわつく。
理由は、分からない。
ただ。
あの白い馬のことを思い出した時と少しだけ、似た感覚だった。
※完結まで毎日投稿です。




