ガイブ辺境伯屋敷
辺境伯令嬢マリア・ガイブ
私は自分を呪う。
――なぜ、私はわがままを言ったのか?
――なぜ、ただ殺されるのを見ているだけだったのか?
――なぜ? なぜ? なぜ?
毛布にくるまって、部屋を閉め切る。
自分の存在を世界から消し去るように――
(私なんて、死んでしまえばいい。)
あの人が命を懸けて助けてくれたのに。
こんなに簡単にそれを無駄にしようとする自分が――
本当に嫌い。
メイド長
今回のお嬢様への襲撃――
結果的に損失は小さい。
お嬢様は無事で、敵の情報も得られた。
失ったのは数人の護衛と、ただの一介の従者のみ。
だから、"問題はない"はずなのに――
無意識のうちに、早くなっている足音。
私は自分の焦りに顔をしかめる。
あの襲撃から十日が経った。
屋敷は一見、いつも通りの様子を保っている。
ただし、ある一点を除いて。
「お嬢様、朝でございます。」
返事はない。
あの日から、一度も。
「開けますよ。」
奥様から了承は得ている。
扉を開け、換気のために窓を開ける。
お嬢様は、ただボーっと私を見つめるだけ。
以前より明らかに痩せていて、目の下には深いクマができている。
生気がない。
「報告が二点あります。」
私は、何事もないかのように話す。
「一点目ですが――」
「先日、お嬢様が先生から頂いた双子石が、割れていました。」
――双子石が割れたからといって、キースが生きている証拠にはならない。
だが、今のお嬢様には、それがかすかな希望になる。
お嬢様の目が大きく見開かれる。
私は、その反応を逃さず、さらに続けた。
「二点目ですが…」
私は少し迷った後、口を開いた。
「最後に――」
私は少し迷った後、決意を固めて口を開いた。
「そろそろ目を覚ましてください、お嬢様。」
言った瞬間、背筋が凍る。
――この言葉を口にしたら、お嬢様に嫌われるかもしれない。
それでも――
それでも、ここで目を覚ましてもらわなければならない。
お嬢様をこのまま朽ち果てさせるわけにはいかない。
だから、私は覚悟を決めて続けた。
「あなたはガイブ辺境伯領の次期領主です。」
「そのようなていたらくでは、ガイブの名に傷がつきます。」
「そろそろ目を覚ましてください、お嬢様。」
そして――
「キースに置いていかれますよ。」
お嬢様の目が驚きに見開かれる。
「メイド長は……ずるいですね。」
震える声で、お嬢様は笑った。
「そんなこと言われたら……頑張らないといけないじゃないですか。」
これにて第二章は終わりです。次の投稿は少し遅れます




