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パーティへ!

あっという間に2週間が経ち、私は戦勝パーティーに向かうための特攻服に身を包んでいた。


・・特攻服って何かしら。

こうやって、見たこともないものなのに例えとしてポンと頭に浮かぶのにもだいぶん慣れた。


2週間経って、分かってきたことがいくつかある。


ひとつめは、やはり、ちふとの交代はちふの判断でしかできないということ。


それからふたつめは、お互いの知識が混ざり合うように私とちふの中にあって、共有しているということ。


げぇむのことも攻略者のことも、スチルが頭の中にあって、気持ち悪いんだけど、ふわっとどんな人か、みたいなことが理解できている。


すちる・・って何だったかしら・・?


ともかく、私の中にいるちふは・・間違いなく存在しているのだ。


「うっんっ!」


きつくコルセットが締め付けられて、私は思わず声を詰まらせた。


「もう少しだけ絞りますので壁に手をついてくださいませ。」


え、まだっ?!


とは、はしたないので声に出さないで、大人しく壁に手をついて踏ん張った。


『うぎゃぁ!締め付けすぎだって!絶対体に悪いやつ!もうやめとこうよエスタん、後で変わった時に無理よりの無理ってなるやつじゃん!』


まぁ、例えそうだとしても貴族の令嬢として、このようなことぐらいで音をあげるなど言語道断である。


「さー息を止めてっ!!」


メイドの号令で息を止める。

ぎゅううっとコルセットが締め付けられて、私は物理的に死ぬんじゃないかと思ったのだった。


『まーでもさ、すっごい綺麗じゃん、あれだわ、馬子にも衣装っての。ドレスってヤバいね。』


なんだかんだあったけれど、とりあえず着替えを終えた私はカウチに腰を据えて紅茶を飲んでいた。


ちなみに今日は付き添いとしてついてくるセバスチャンが給仕をしている。


「何がどうヤバいのかわからないけれど、褒められているのはわかるわ。ありがとう。」


『いいえ!これで私の大人の魅力でジンを堕としてみせるわよ!』


・・・それは、本当に大丈夫なのだろうか。


今日の計画は半分以上ちふ任せになっている部分がある。


不安だが、かといっておこちゃま全開の私自身に女性キラーの大公を篭絡する術はないのは確かだ。


「俺はそんな女なんかよりお嬢さまのが大公を籠絡する可能性はあるんじゃねぇかと思いますけどね。」


セバスチャンだけが私を過大評価していると言っていいだろう。


でも、当の本人が無理だと思っているのだからそこは私の意見を汲んでほしい。


「間も無くお時間ですね。動けますか?」


懐中時計を胸元から取り出したセバスチャンが言う。


動けるか・・だと?


今の私にはくびれた腰とくびれた腰が出来たことによって生まれた胸の膨らみがある。


膨らみの方は・・ちょっとだけど。

それでもコルセットをしていない時にはなかったほどのしっかりとした膨らみだ。


そして、その幸せが生まれたことによって、生じた苦痛に、私は呼吸さえも奪われつつあり、セバスチャンがそれを察して言っているのは間違いない。


「・・っうごけっる・・。」


ぎし、とぎこちなく立ち上がり、ものすごくソッと歩き出す。


「・・優雅には程遠いな。」


・・余計なお世話よ・・。


『ギリギリまで代わるのはやめとくね・・?』


ちふまで逃げた。

ひどい。


王城の大広間を使って執り行われている戦勝パーティーは盛大の言葉に尽きる盛り上がりようだった。


オーケストラの奏でる音楽に、立食形式の豪華な食事、ダンスをする者、歓談する者、それを見る者、など様々な人がいる。


「エスタ、大丈夫かい?」


一緒に来てくれた正装したお父様にリードされながら、私は『呼吸がくるしいんですが』という苦しみを笑みの中に隠して顔を上げた。


「大丈夫です。問題ありませんわ。」


『問題ありありですわ。息詰まりで死にかけですわ。酸素、酸素を求む!えすおーえすえすおーえす!メーデーメーデー!』


頭の中でちふが冗談まじりに叫んでいる。


けれど、今はとりあえず無視だ。


「そうかい?緊張しなくていいんだからね?」


「ええ。ありがとうございます、おとうさま。」


ものすごく言葉が片言になる。

息苦しさのあまり。


「セバスチャン・・エスタのことを頼む。」


お父様はあの一件以降、セバスチャンにものすごく冷たくあたる。


お母様はヤキモチよ、と言っていたけれど・・、お父様にはセバスチャンを嫌わないでほしい。


「かしこまりました。」


「・・誰にも触れさせるなよ・・もちろんお前もだからな。」


ぽそり、とお父様が何かをセバスチャンの耳元で囁いている。


セバスチャンはこくこくといい笑顔で頷いているので大したことではないのかもしれない。


「もちろんです。どんな虫も寄せつけしません。」


「・・だからお前もだからな。」


と、そんなやりとりがあったことには、息苦しさと戦っているエスタリーゼに気がつくことは出来なかった。

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