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癒しスキルの俺に、あやかしたちが集まりすぎる  作者: たぬたぬ


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第一章 神社の奥で見つけたもの

その日は、朝からずっと雨だった。


 六月の終わり。

 高校からの帰り道。


 傘を叩く雨音を聞きながら、相澤ユウトは重たい足取りで坂道を歩いていた。


 黒髪に、少し跳ねた前髪。


 身長は平均くらいで、顔立ちも特別目立つわけじゃない。


 良く言えば親しみやすい。

 悪く言えば、どこにでもいそうな普通の男子高校生。


 ただ一つだけ特徴を挙げるなら、頭の上でぴょこんと跳ねた一本のアホ毛くらいだった。


「はぁ……」


 ため息が漏れる。


 別に嫌なことがあったわけじゃない。

 ただ、なんとなく疲れていた。


 教室ではそこそこ友達もいる。

 成績も普通。

 特別不幸ではない。


 でも――。


(なんか毎日、同じことの繰り返しなんだよなぁ)


 そんなことを考えながら、住宅街の細い道を歩いていた、その時だった。


「……え?」


 視界の端で、何かが動いた。


 電柱の陰。


 そこにいたのは――小さな女の子だった。


 白い髪。

 薄汚れた和服。

 年齢は、五歳くらいに見える。


 でも、おかしかった。


 身体が、少し透けていた。


「……」


 少女はじっとユウトを見上げている。


 雨の中なのに、なぜか濡れていない。


 その手には、小さな青白い火がふわふわ浮いていた。


(……え、なにあれ)


 一瞬、頭が真っ白になる。


 幽霊?

 コスプレ?


 いや、そんなレベルじゃない。


 でも――。


 なぜだろう。


 怖い、とは思わなかった。


 むしろ。


「……迷子?」


 気づけば、そんな言葉が口から出ていた。


 少女の肩がぴくりと揺れる。


「あ、いや……ごめん。違ったら……」


 すると少女は、


「……っ」


 小さく目を見開き――次の瞬間、ぱっと駆け出した。


「あっ、ちょっ……!」


 ユウトは反射的に追いかける。


 少女は細い路地を抜け、住宅街を走り、どんどん人通りの少ない方へ向かっていく。


 まるで何かに導かれるように。


「待ってって!」


 雨で滑りそうになりながら、必死に追いかける。


 やがて少女は、石段の前で立ち止まった。


「……神社?」


 そこは、町外れにある古びた神社だった。


 鳥居は色が剥げ、石灯籠には苔が生えている。


 普段なら絶対近づかないような、寂れた場所。


 少女はそのまま石段を駆け上がっていく。


「お、おいって……!」


 ユウトも後を追う。


 雨はさらに強くなっていた。


 境内には誰もいない。


 風が吹く。


 カラン――。


 どこからか、鈴の音が響いた。


「……え?」


 その瞬間だった。


 鳥居の奥の空間が、ぐにゃりと歪んだ。


 まるで水面みたいに。


「なっ……!?」


 少女は振り返る。


 金色の瞳が、真っ直ぐユウトを見た。


 そして――。


 ふわり、と笑った。


 その笑顔を見た瞬間。


 ユウトの身体が、前へ引っ張られた。


「うわっ!?」


 足元が消える。


 重力が反転する。


 景色が歪む。


 雨音が遠ざかる。


 身体が落ちる。


 どこまでも、どこまでも――。


 そしてユウトの意識は、深い闇の中へ沈んでいった。

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― 新着の感想 ―
 いや、ユウトくん……あれは怖いよ。少女幽霊にしか見えないよ。最後も取り憑かれそうじゃないですか……といった感じでホラー味を感じ震えました。ひーーー。  少女だからって安心し過ぎですよユウトくんはって…
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