スカウトという名の腐れ縁の存続
「ね、カナちゃん。」
「何でしょうか……いや、言いたいことはなんとなくわかるけども。」
「その猫飼わない?」
「やっぱり……あのな、俺は今職がないの。就活しなきゃならないの。そんな余裕はねぇ。」
あれま。すごい大変なんだね。今不景気だし。
「それなら大丈夫。僕が雇うから。」
「は?」
「だから、僕が雇ってあげるって言ってるの。っていうかまあスカウトだね。カナちゃんは優秀だから。ぜひともウチにほしいなと。」
そう言って一枚の紙をひらひらと見せる白雪さん。
「研究所……ってお前こんなもの経営してたの?」
「経営していたというよりは高校卒業までそこに勤務して、その後譲り受けたが正しいな。」
「……そんなんアリ?」
「特例。まあ学業に支障はなかったし。いつ行ってもいいって言われたから。たいして顔出してないな。」
そりゃあ経営者になってからはアメリカにいたわけだしね。行けるわけないよね。
「で、俺にここで働けって?」
「いやなら無理にとは言わない。でもいい話だと思うよ?いつ来てもいいし、お給料は結構あるし、そこに成果を上げれば臨時ボーナスも入るし。好きなだけ研究できるんだよ?」
確かにかなりいい話ではあるよね。まあ問題は……。
「……で、そのかわりに俺は何をすればいい。」
そう、問題なのは条件。いい話ほど裏がある。これ重要。
「一つ言うとすれば、雨欺のために働くんじゃなくて僕のために働くことかな?」
「……それだけ?」
「うん。あ、ごめん。もう一つ。その猫が大学卒業するくらいまでは養ってやってほしい。その二つが条件だね。」
「本当にそれだけなんだな?」
「うん。それだけだよ。」
それならこんないい話はないと思う。猫アレルギーとかでなければ。
「分かった。条件を呑もう。なんか手続きとかいるのか?」
「ありがとう。これにサインしてくれればいいよ。あ、英語でよろしく。」
紙にサインしていく奏芽さん。うーん……あの万年筆高そうだなー……いくらかな?
「白雪の名前ってさ、偽名だと名前から読んでもおかしくないけど本名だとかなり読みづらいよな。」
Sirayuki Amagi……読みづらいというかなんか変な感じ。ま、Kaname Siyoukaもだいぶ変だけどね。
「大丈夫。暁留もたいがいだし。」
Akito Amagi……うん。変だね。というか雨欺って言う名字がすでに変だしね。どうしようもないよねこれ。ってちょっと待って。その場合私は……Honoa Amagi……
「うわー……。」
微妙すぎるわ。結婚するのやめたいわ。
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切らせてくれない腐れ縁。