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第78話 周辺部族、入朝(3)

「オシマ族の族長、グランテよ」

 平伏するグランテの頭上から、ハーンの言葉が響いた。

「この度『日登りの国』中部諸侯を纏め、我らに帰順したこと。そして南部を治める汝自身の帰順。汝の功績は、極めて大である」

「ハーンは、グランテ殿が諸侯を主導し、帰順された功績を高く評価されておいでです」

 コアクトがハーンの言葉を復唱すると同時に、グランテは平伏した。

「恐悦至極に存じまする……!」


 見上げたグランテの眼前で、絹幕に映し出されたハーンの影がゆらめき、眼がひときわ輝いた様に見えた。

 そして続いてハーンが発した言葉は、彼にとっては思いもかけないものであった。

「その功績を評価し、朕は汝に『左日逐王(さにっちくおう)』の位を授けるものとする」

「偉大なるハーンは、グランテ殿の本領を安堵するとともに『左日逐王(さにっちくおう)』に封じられます」


 コアクトの言葉に、おおっ……と周囲の者たちから感嘆の声が漏れる。


 彼には他の諸侯達に与えられた「爵位」ではなく、「王位」が与えられるというのだ。

 しかも「左日逐王(さにっちくおう)」の地位である。

 それは、右賢王(うけんおう)サカ、左谷蠡王(さろくりおう)ウス=コタに次ぐ地位であり、現在のリリ・ハン国ではNo4の地位にあたる。

 極めて高い地位であり、今後の彼がリリ・ハン国を主導する幹部として処遇される事を意味していた。


 グランテにとっては、予想だにしていなかった過分の地位である。

 「日登りの国」南部を統治する彼ら自身の帰順。そして中部地域の諸侯を主導してリリ・ハン国に帰順させた功績が、彼自身が考えていた以上に極めて高く評価された事を意味していた。


「ありかとうございます。恐悦至極に存じ上げまする」

 ハーンの言葉にグランテはただただ恐懼感激し、平伏してお礼の言葉を言上するのであった。

 グランテの言上に、薄幕を通してハーンも頷いている様に見えた。



 ……………



 続いて、ハーンの言葉が響いた。

「功績を嘉して、汝にも下賜するものがある」


「汝には……」

 平伏して続く言葉を待っていたグランテであったが……何故か、しばらくの間声が掛からない。

「……………?」

 不思議に思ってちらりと目を上げると、薄幕の後ろで、ハーンが口ごもっている様に見えた。

 そして小さな声で誰かを呼ぶと、呼ばれたのであろう、大尚書コアクトが薄幕の後ろに入っていく。そして二人で何か会話を交わしている様だった。


 何だろう?

 不思議に思って平伏したまま待っていると、暫くしてコアクトが出てきて、元通り薄幕の前の位置まで戻ってきた。

「……………?」



 訝しげに見ていると、薄幕の後ろから、改めてハーンの玉音が響いた。

「オシマ族族長、左日逐王(さにっちくおう)グランテよ」

「汝には……」

 ハーンが、一瞬だけ口ごもった様に聞こえた。

 そして、その後に続ける。


「汝には……朕の、鎖骨酒を授ける」


 コアクトが復唱した。

「偉大なるハーンは、左日逐王(さにっちくおう)となるグランテ殿に、畏れ多くも、鎖骨酒を下賜されます」

「おお……っ!?」

 その言葉に、謁見の間は大きなどよめきに包まれた。



 ……………



 鎖骨酒。

 文字通り、鎖骨の窪みに注がれた酒である。

 ハーンの玉体……鎖骨の窪みに酒を注いで溜め、掬い取った酒が、下賜されるというのである。


 中部諸侯たちに下賜された、玉湯……ハーンが身を浸していた浴槽の湯も、勿論貴重で高貴なものである。

 しかしハーン自身の身体に、しかも鎖骨の窪みに直接注がれた、ハーンの素肌に触れた、ハーン自身を器とした酒が、下賜されるというのである。

 それは……玉湯とは比較できない程、貴いものなのであった。


 グランテの後ろに居並ぶ中部諸侯たちが感嘆の声を上げ、羨望の眼差しで彼を見る。

 そしてグランテ自身はあまりの衝撃に、そして感激に身を震わせていた。


「あ、ありがとうございます……。こ、光栄に、恐悦至極に存じまする……」

 ただただ恐懼し、うわごとの様に感謝の言葉を呟くしかなかった。



 ……………



 今だ震えて平伏しているグランテを前に、玉座の方では準備が進められていた。


 純銀の酒器を携えた大尚書コアクトが、一礼して薄幕の後ろに入っていく。

 そして、浴槽の中で一糸纏わぬ姿で立っているリリ・ハーンの身体に、酒器を傾けた。


 独特の香気を放つ、白濁し、どろりとした濁り酒が、ハーンの素肌の上をゆっくりと滑り流れていく。そしてハーンの鎖骨の窪みの中に溜まっていくのであった。

 窪みから溢れ零れた白濁液が、ハーンの微かに膨らみかけた胸を、なだらかなお腹を、そして下腹部を滑り落ちて、ぽたぽたと湯の中に落ちていく。

 ハーンの身体に溜まり、白い軌跡を残しながら、身体の上を滑り落ちていく白濁液。

 コアクトはその様子を、そしてハーンの表情をじっくりと凝視しながら……そっと器を鎖骨に当てて、窪みに溜まっている濁り酒を移し取る。

 そして酒器から改めて濁り酒をハーンの鎖骨に注ぎ、窪みに溜める。

 この行程を何度か繰り返して、少しずつしか取れない鎖骨酒を少しずつ掬い取り、器の中に溜めていくのであった。



 ……………



 暫くして、大尚書コアクトが薄幕の後ろから退出して来た。

 その手には、小さな器が持たれている。

 コアクトはグランテの前まで来ると、小さな盃を置き、器からその中に濁り酒を注ぎ入れた。


「……………」

 グランテの目の前に、小さな盃が置かれている。

 その中には白く濁った酒が……ハーンの鎖骨酒が注がれている。

「どうぞ、お召し上がり下さい」

 大尚書コアクトが言った。



 彼の後ろに並ぶ「日登りの国」中部地方の諸侯たちが、羨望の眼差しで彼を見ている。

「ありがとうござりまする。ハーンの鎖骨酒を賜ります」

 グランテはそう言うと、盃を手に取り……ぐっと、喉に流し込んだ。


 その途端。

「お……ほぉおおおっ!!!」

 グランテが大きな呻き声を上げて、びくりと身体を震わせる。


 喉に流し込んだハーンの鎖骨酒が。ハーンの鎖骨の窪みに注がれていた白濁液が舌に触れ、喉を滑り落ちる。

 鎖骨酒に含まれる成分が。そしてあまりにも濃厚なハーンの味が、濃縮された滋養と神気が染み渡り、グランテの身体を震わせる。


「お、ほ、おあぉぉぉぉぉっ……」

 一瞬にして絶頂に、いや、それ以上の高みに持ち上げられたグランテは、意識が吹き飛び、目を剥きながら仰向けに身体を仰け反らせ、ビクビクと身体を震わせた。



 仰向けにのけぞり、ビクビクと跳ねる様に痙攣を続けるグランテ。

 その姿を、諸侯たちは羨望の眼差しで見つめていた。


 読んでいただいて、ありがとうございました!

・面白そう!

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・更新、頑張れ!

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 今後も、作品を書き続ける強力な燃料となります!

 なにとぞ、ご協力のほど、よろしくお願いします!

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[良い点] ヘンタイのレベルが高度過ぎる……入朝したい……
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