第5話 俺たちのパーティに必要なものは
今日のクエストは、炭鉱から町の外れにある製鉄所へ運ぶ荷車を護衛する仕事だ。
割と単調な仕事ではある。
ただし、護衛任務があるということは、この辺では魔物が最近ときどき出没するということを意味する。
「このまま何事もなく終わればいいのじゃがのう」
「まあ、本当、退屈なクエストではあるかしらね」
なんかルチアさんもメルちゃんも退屈そうな顔してるよ。
そうこうしてるうちに、俺たち護衛パーティーと鉱物を運ぶ一段は、深い森の中に入っていた。
本当何か出てきそうな場所だなあ・・・
このまま何事もなければいいんだけど・・・
「まって・・・なにか魔物の気配よ!」
ルチアさんが何かに気づいたようだ。
ガオオオオオオオッ!
突如、魔物の咆哮が轟いた。
俺たち一行の前に、一匹の巨大な狼男が立ちはだかる。
「リカントよ!気を付けて!」
ルチアさんは魔法を詠唱して先制攻撃の魔法をリカントへ向けて、ぶっぱなした。
しかし、魔法はリカントの前でかき消された。
「むう、このリカントはだいぶ魔法耐性があるようじゃのう。ルチアよ、接近戦で仕留めよ。わらわが魔法で援護するぞ」
「わかったわ、そうしてみる!」
しかし、リカントは、俺にターゲットを定めたようだ。
やべえな、こっちに突進してくるぞ・・・
マジ無理だから!死ぬし!
刹那、俺の右手の甲に浮かび上がる水色の紋様が光り輝き始めた。
なんだか、俺の体が軽くなったぞ!
強敵に出会うと発動するのか。
なんて不便な勇者補正なんだ・・・
しかし、これでいけるか・・・!
俺は剣を抜き、向かってくるリカントを迎撃した。
俺の剣がリカントの胴体をとらえた。
しかし同時にリカントの爪が、俺の胸をえぐったようだ。
クソ痛いじゃねえかよ・・・!
血が噴き出たし!
グオオオオオオオッ・・・!
リカントは断末魔の叫びを上げて倒れた。
リカントが俺の攻撃で怯んでいる瞬間に、ルチアさんの近接攻撃とメルちゃんの魔法攻撃で、仕留められたようだ。
「ふう、なんとか仕留められたかしらね。アキナリ、大丈夫?」
「そちとしてはようやった。褒めてつかわすぞ」
俺はそのまま荷台に乗せられて、とりあえずの応急手当を施されて、一行は製鉄所を目指すこととなった。
しかし、俺は異世界を舐めてた。
強くなければ冒険者なんて無理だ
こんなことが続いたら、俺マジで死ぬぞ・・・
まだ死にたくないしな。
紋様が発動しなければただの引きニートだしなあ・・・
困った、今後どうすればいいんだ・・・
どうやら、リカントの爪には毒が塗られていたようで、俺の傷は思った以上に重傷のようだ。
全身が痺れるような痛みが走って、起き上がるのがやっとというありさまだ。
もう、宿屋のベッドに寝込んで三日目。
今、メルちゃんが俺を看護してくれている。
もっとも気高き魔王のメルちゃんはただ見てるだけなんだけど。
「勇者の能力の発現をコントロールすることも大事じゃが、いかんせん、そちは弱すぎじゃのう。もっと鍛錬せよ」
「俺の世界じゃこんなあぶない目にあうことなんてないんだよ!」
とまあ、メルちゃんに説教されながら、過ごしてるわけで。
そうこうしてるうちにルチアさんが俺の部屋にやってきた。
「アキナリ、元気そうね。よかったわ。これ、宿屋のおばさんがお見舞いだって言ってくれたのよ」
ルチアさんがもっていたのは、たぶん生ガキだ。
これは醤油が欲しいぞ。
しかし、この世界には醤油はないんだよなあ。
オイスターソースならあるか。
「ルチアさん、オイスターソースを持ってきておくれ。俺の世界じゃカキは生で食べるんだよ」
「はぁ?カキは蒸しバターが一番おいしいんじゃないのかしら?」
「いいから、言った通りにしてくれよ」
「しかたないわね。ちょっと待っててね」
こうして、俺は生ガキを食すことになったのだが・・・
生ガキを舐めてた。
腹まで下してしまった・・・
「本当、そちは愚かな下等生物じゃのう。魚介類を生で食べるなんて」
「だから、、蒸しバターがいいって言ったのに。本当バカね」
リカント戦でおった傷と毒、そして生ガキで当たってしまい、三重苦になっても、ルチアさんとメルちゃんにボロクソに罵られる始末でして。
そんな中、部屋のドアをノックする音が聞こえた。
「はい、どうぞ」
聖十字教団の神官服を身にまとった少女が入ってきた。
「こちらですか。解毒の治療が必要な方がいるというのは」
「はい、俺です。ついでに生ガキに当たって下してます・・・」
「わかりました。ではまず。解毒の祈りを捧げましょう」
神官少女は祈りを捧げた。
お、全身の痺れが消えたぞ!
ついでに腹痛も消えた!
「では次に、傷の治癒もしましょう」
神官少女はもう一度祈りを捧げた。
うお、リカントにつけられた傷の痛みも和らいでいくぞ!
神官魔法すげええ!
薬いらねえじゃん、この世界!
「元気になられてよかったです!」
神官少女は、ニコっと笑顔で答えた。
「つか、どこで俺が重症だって聞いたの?」
「冒険者ギルドですよ!」
「なるほど。なぜ聖十字教団の神官さんが冒険者ギルドに?」
「教団に指示されて派遣されてきました!」
「どういうこと?」
「このトポロジアで、伝説の勇者様が誕生したと聞きまして、教団から勇者様を助けるようにと派遣されてきたわけですよ!でもタイミングがよかったみたいです。こちらのパーティでヒーラーを募集してるようなので!」
ヒーラーを募集?
どういうこっちゃ?
「あーそれあたし。先日のリカント戦で、あたしたちに足りないのは、ヒーラーだと感じて、ギルドの掲示板に募集の紙を貼ったのよ」
「そじゃな。ヒーラーがおれば、よりクエストの幅も広がるであろうと思ってな。そちが寝込んでいる間に募集をかけておいたのじゃよ。感謝せよ」
なるほどね。
確かにヒーラーがいれば、色々とクエストのバリエーションも広がるし、パーティの強化にもつながる。
なによりも、命を救われる場面も多くなるしな!
「というわけでして、私は神官イレールと申します!基本治癒関係しかできませんが、よろしくお願いします!」
こうして、俺たちに新しい仲間が増えた。
つか、結構本格的なパーティになってきたな。
勇者(引きニート)、魔法剣士、魔法少女、そして神官少女。
バランスいいんじゃない?
さーて、明日からバリバリ、クエストこなしますか!




