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【4000view感謝】恋愛ゲームの世界なのに私は攻略対象キャラじゃないので情報屋になろうと思います  作者: フユめん


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パッケージヒロイン襲来

「佐伯佳奈さん。あなた最近、何か良くない事をしてないかしら?」

 私の机の前に、桜子ちゃんが仁王立ちしてる。その目つきの冷たさと言ったら、冬も本格的になってきた今の季節より、ずっと冷ややかだ。

 声は柔らかくて穏やかなのに、その声に含まれる圧と目線は、結構迫力がある。

 それはさておき、桜子ちゃんが、向こうから接触してきたんですけど。二年の三学期になるまで、ほとんど絡み無かったのに。

 なんで今頃。いや、こちらとしては手間が省けますけども。

「よ……良くない事とは、具体的にどのような?」

 良くない事をしてるだろうと言われたら、私の存在自体が良くない。この世界にとってイレギュラーな、情報屋というキャラをやってる事がそもそも良くないのだけど、桜子ちゃんの癇に触るような事はしてないはず。

「みんな佐伯さんの名前を出すと、不安そうな顔をするの。佐伯さん、何かしでかしたんじゃないの」

 それは多分、私がヒロインちゃんと距離を取るようにした結果、みんなにやたらと心配されるようになった件だ。

 それもまあ、良くない事と言えば良くない事なのだけど、仲が良い故の反応なのだから、悪業ではないだろう。

「私が最近色々ありまして、お誘いを断っているので、心配させてしまっているのですよ。私用のためだと再三再四、申し上げてはいるのですが」

「……そう、それなら良いんだけど」

 明らかに疑われてる。若干、軽蔑の色が混じってるような気がする。

 うーむどうする。このまま流すべきか、何か弁明するか、いっそ営業トークに入るか。

 軽蔑されたままは嫌だし、ここで弁明するのは、言い訳っぽすぎるかもしれない。

 なら、営業だ。どうせ怪しまれてるんだから、胡散臭い言動をぶつけたって、これ以上マイナスにはならないだろう。

「ところで藤原さんは、お悩みなどはございませんか?

私、佐伯佳奈は、皆のお悩み、具体的には恋のお悩みや、喧嘩騒動などを解決して回った結果、席の温まる暇も無いほど羨望を集めまして、お誘いを断らなければならないほどになりました。

藤原さんは、私を疑っているご様子。一度実例を見ていただければ、その疑いも晴れましょう」

 桜子ちゃんは、当然というかなんというか、露骨に困惑している。

 怪しんでる相手に、いきなり営業かけられたら、そりゃ困惑もする。いや、怪しんでなくても、急な営業は困惑するか。

 桜子ちゃんは、困惑しつつも、興味がなくはない、という顔をしている。

 ふふふ、分かっているぞ。

 いくらガードが固くても、桜子ちゃんはギャルゲーヒロイン、そして思春期真っ只中。興味を持たずにはいられまい。 

「それはまあ……、私だって悩みくらいあるわよ」

 よし食いついた、食いついたけど、その内容までは言わないか。ここは、こちらからグイグイ行くか。

「ほう、一体どのようなお悩みでしょうか」

 問いかけに対して、桜子ちゃんは、ちょっと悩む様子を見せたあと、小さな声でぼそりと呟いた。

「朝倉君が、私にプレゼントくれたりするのって、そういう事よね? 応えてあげた方がいいのかしら」

 あれ、もしかして、これまで好感度が上がりにくかったのって、ず〜〜っと保留してるだけだったりします?

 ガードが固いというより、恋愛の仕方を知らないだけだったりします? 分からないから、気持ちをどう持ったらいいか、応えていいのか悩むっていう、そういう事?

「はい、朝倉くんアレはそういう事です、私も相談されました。藤原さんが、答えを迷っていらっしゃるのは、どのような理由で?」

 好感度が上がらない理由が、桜子ちゃんの恋愛下手が原因だとしても、浮気男嫌いの件もあるし、理由は知っておいた方が良さそうだ。

「うちの親、結構厳しくて、男の人と遊ぶって事をさせてくれなかったの。それなのに、そろそろ恋の一つでもしろなんて、急に言い出すんだもん、イヤになっちゃう」

 親が厳しいのは、ステータスにも書いてあったな。でも、桜子ちゃんは警戒心を育てつつ、親の言いつけには辟易としてたんだなぁ。

「私、そんなだから、男の人と、どうやって付き合ったらいいのか分からないの。その上、あちこちに唾付けて回ってる朝倉くんでしょ? 私が付き合える相手なのかなって」

 うぶな自分と、遊び人の朝倉くん。桜子ちゃん目線だと、そういうふうに見えるんだろうな。

 そう見えちゃってる原因の一端は、私にある。とりあえず、ヤリチンではないという事だけは、伝えておくべきだよね。

「まあ、非常にモテるので、女の子の友達も多いですが、あくまで友達関係で、藤原さんが思うような、ギラギラした男性ではありませんよ」

 朝倉くんは、エンディングのイベントが起こるまでは、恋人関係まで発展しないんだから、現状でのヒロイン達は、友達でしかない。

 だから、嘘は言ってない。もう結婚してても不思議じゃないレベルでスキスキアピールを食らいながら、いまだに友達をやってるとか、常識的に考えたらだいぶ変だけど、この世界がそうなってるんだから仕方がない。偽らざる真実だ。

「そうなの? それなら、もう少し親切にしてもいいのかしら」

 現状の桜子ちゃんは、物凄い塩対応を朝倉くんにしてるから、多少は塩抜きしてもらいたい。秋田のぼだっこから、一般的な塩鮭くらいにはなってもらいたい。

「そうしてあげると、彼も喜ぶと思いますよ」

「そうね……、でも、今まで厳しくしすぎた気がして、ちょっと気まずいわね」

 確かに。急に桜子ちゃんの達度が軟化したら、朝倉くんも不思議に思うかもしれない。

 不自然にならず、且つ、私自身も嫌な思いをしない方法となると___

「では、伊集院さんのお家でされているお茶会に来ませんか? 男女問わず大勢集まるので、そこで親交を深めるというのは、いかがでしょうか?」

 サシでの対話は気まずくても、大勢の中でなら、気まずさもいくらかマシだろう。

 朝倉くんには話を通して無いし、マヤちゃんの名前も勝手に使っちゃったけど、まあ、どっちも快諾してくれるでしょ。

 特にマヤちゃんは、私が久しぶりに参加すると聞いたら、大喜びで用意してくれそう。

「いいの? 私、伊集院さんとは、あんまり仲良くないんだけど」

「その点は心配ございません。伊集院さんは、友達が多いに越した事はないという考えですから、誰とでも仲良くしてくれる方ですよ」

「というか、本人が居ないけど、いいの?」

「ご安心ください。私と伊集院さんの仲でございますから、まず断られません」

 結局、桜子ちゃんもお茶会に来る事になり、マヤちゃんは案の定、大喜びで受け入れてくれた。

 これで、桜子ちゃん攻略の糸口は掴めた……掴めたよね? ヒロインちゃん達とも、久しぶりに遊べるし、お互い楽しめたらいいな。

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