第10巻、極寒の最終決戦!「ダブルダブル」で「クロスクロス」
前回のあらすじ3行。
「アルジは自身開発の近中距離対応銃剣変形型武装・チェンジスラスターで雪の女王と交戦。その最中、救出された相棒の雪女キネシスが再び操られてしまう」
「アルジの必死な訴えが通じ、催眠の解除に成功。二人で放ったチェンジスラスターの一撃で雪の女王を庇ったクールがやられる」
「強化アイテムによる変身をナスに阻まれるも、異次元から浦島太郎とカメーンが現れ窮地を脱出。ダブルクロスコネクターによる新たな姿に変身」
『ダブルキャストチェンジ――――二重変身!』
アルジの持つダブルクロスコネクターが装着された状態のキャストパスはそこそこに大きく、いつもの手癖で三回回せなかったのでそのままチェンジスロットへ差し込んた。
『オ レ と オ マ エ で!ダブルダブル・チェンジー!』
機械音声とともに光に包まれた中で金太郎のシルエットへ変化すると、その姿が二人に分裂した。
「アルジが……。金髪になって二人に増えやがった!!」「ぱつきん二人になった、ですね!」
興奮する浦島とデビ子。良い意味で期待を裏切ることが出来たようだ。
「すげえ、エネオプにはこんな物が作れる奴が居たなんてな……」
つい感嘆の声を漏らすゾーコ。
「ええと……。どっちも、アルくん?」
金太郎が分裂し、どちらが本体か困惑するキネシス。
「へへ……。実は、な」
自慢気に、そして少し嬉しそうにしているキャストドライバーを巻いている方の金太郎こと、アルジ。
――――「俺様の姿をした……、お前さんか?」
「おう。また生きてるところを見られるなんてな、金太郎!」
正確には、もう一方はオレではない。
「俺様とまた一緒に戦おうぜ、お前さん」
「もちろんだ!『金太郎――アタックチェンジ』そら、マサカリ!」
「おう、悪りぃな!」
生成した大きなマサカリを渡すとアルジ自身はチェンジスラスターをスラッシャーモードに変形させ、構えた二人は雪の女王を見やった。
「キャストパスに登録した人物しか使用できない代わりに、オレの記憶とキャストパスで取り込んだ撮影データから人格諸々を再現してみたんだ。すげえだろ~キネシス」
「よくわかんないけど、すごいことしてるのはわかった」
「何なのだ……。わたくしの前で一体何が起きているのだ」
状況が分からない雪の女王の前に、唯一残った配下が立ち上がる。
「女王様、早くここから逃げていただきたいでナス!二対五では不利ナスから、一度撤退して体制を……」
「――するものか。アリが幾ら集まろうと象には勝てぬことを教えてやる」
せっかくの部下の進言だったが、それを拒んで敵の声がした方へ歩き出す。
「アルジら。あのナスの相手はワシらに任せて、親玉をやっちまって欲しいんだぞ」
「任せるになって。今ならトライデントだってある」
「今のお前なら何とかなんだろ!アリのこと舐めてたら痛い目に遭うってこと、たっぷり思い知らせてやりな(カメェーーン!)」
「助かるよ、あんたら」
三人に背中を押されるアルジ。
「さっさと勝つぞ、お前さん」
「おう(アルくんがんばれ~)」
(迫ってきた雪の女王だったが、やはり音が無ければ狙いが定まらないようだな。ならば……)
位置を探っているのか耳を立て始めた雪の女王。しかし――。
「なにボケっと突っ立ってやがんだよッ!!」
「しまった!?」
そういえば金太郎は雪の女王が盲目であることを知らなかった。
既に一目散に走り込んでマサカリを振り上げてしまっていたところでやむを得ず追いかけるアルジ。
「……そこだな」
金太郎の足元から突然氷柱の槍が何本も生えてくる。
「へっ、読んでいたぜ!」
そこは流石に戦いの師匠だった金太郎。
足裏で感じ取った一瞬の違和感に気付いてジャンプすると、持っていた巨大マサカリの刃を下に構えて座布団のように上へ座る形で飛び移り、その氷柱を受け切ったのである。
へい、へいとオレにハンドサインを送っていたのでチェンジスラスターをパスすると、その足場から飛び上がった。
「本家本元、雷…堕とし!!」
トリガーも引かずに振り切ったそれは、女王が直前に張った氷の盾にジグザグの切断面を作って地面を呈する流氷の表面ごと粉砕した。
「ちっ、外したか~。そらよ、アルジ」
アルジから預かっていた武器を返そうと後ろへ投げる金太郎の背後で雪の女王が虚空に睨みを利かせている。
だが、金太郎によって投げられたチェンジスラスターはアルジではなくマサカリの下敷きになっている氷柱の方向へ。
「――あの男はそこか」
女王は飛んでいく武器の音から着地点を予測したのか、氷の塊を空中で10発分生成するとそのまま発射した。
最初の氷弾がマサカリを支えていた氷柱に命中するタイミングで金太郎が雪の女王の眼前へと飛び出したかと思うと、体勢を切り替えて飛び蹴りを胸元に叩き込み、金太郎の攻撃で凹んでいた氷床の壁まで吹き飛ばされて激突する。
「音に反応して動くようなのは此れで大体わかったぜ、お前さん」
シュゥゥと音を立ててマサカリが金太郎側へ滑ってきたが、それを拾わずに持ち手側の刃を女王の方向へ蹴り飛ばす。
胸に大きな痣ができ、頭から出血している雪の女王。
(あれ、あの時見た再生は……?まさか、あの物語改変光線を受けたことで無くなっているのか!)
氷の剣に変形させていた右腕を吹き飛ばした後に見せていた再生能力を使っている様子が見られない。
出血している様子を見るに、まさかアイツはもうアイスドール由来の氷の身体ではなく人間になっているのかと、アルジは砕けた氷の中からチェンジスラスターを取り出しながら察していた。
雪の女王は飛んできたマサカリを音で察知すると再び氷の盾を目の前に作る。
ところが金太郎、それが盾に突き刺さるや否や走り出してマサカリの上に再度飛び移り、そこから女王の頭上まで飛び上がった。
「か……、かと堕とし!」
「―――二度目は、ない」
金太郎の技名を叫ぶ癖が仇となってか、女王は自身の頭上へ大き目な氷の塊を生み出す。
(ありゃまずい)
『アタックチェンジ――――浦島太郎』
木造りの釣竿を召喚すると同時に、金太郎の声が聞こえた方角へそれが発射された。
しかし。
小石ほどの氷の欠片を釣り針に刺している最中のアルジには見えていた。氷の砲弾の陰で無数の氷柱が金太郎へ向く形で生成され始めたことに。
「でっけえ氷だな、そらッ!」
踵を飛んできた氷塊へそのまま振り下ろし、それを粉砕。すると―――。
「罠に掛かったようだな、金太郎とやら」
「は?――やっば!?」
崩れた氷の下から現れた大量の氷柱。
「これであと四人、だな」
金太郎は両腕を交差させて受け身の姿勢に入る。
「それはどうかな!」
その声とともに金太郎の右足に巻き付く釣り糸。
「セイヤー!!」「おぁぁぁーーー!!」
アルジは力の限り釣竿で糸を引っ張り、大物を釣り上げた。
「いやぁ……、助かったぜ、お前さん」
前方から標的の声が聞こえたことで雪の女王から舌打ちが出る。
「お、おう……。(このままじゃ埒が明かないですね、アルくん)こうなれば奥の手だな」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「すまん、ナス。一思いにやられてくれ!」
「素直にやられると思うナス!」
ゾーコとナス、同族同士で爪の攻撃を当て合う戦い。
「かつての仲間同士で命の奪い合いはなんか、こうなることはわかってたけど心苦しい、になるよね」
「正直どっちも見た目が同じだから、どっちを攻撃すりゃいいのかわかんねえって」
「あぁ…、あはは……」
デヴィガイオは同意を求めていたが、浦島の率直な感想には納得させられてしまった。
互いに互いを傷つけ合い、両者の氷の鎧が所々剥がれてきていた。
すると、アイスオーガの一人が背後に下がってきて声を掛けてきた。
「おい、そこの人魚と浦島太郎!こっちがゾーコだ」
「ダウト!(カメェェーーーーーーン!!!)」
デヴィガイオの持つトライデントが氷の肉体に突き刺さると、更に浦島の蹴り、本物の爪攻撃、カメバイクのカメーンによる自動操縦の突進まで飛んできた。
「ゾーコは”デビ子”ってよく呼んでる」
「くっっっっそぉぉぉぉぉーーー!!」
拘束から逃れようとうつ伏せのナスはカサカサ動くが、
「パパ、力を貸して……。――――海神よ、生きとし生ける大海の生命よ、潮のように流れ込む数多なる輝きよ、トライデントに今こそ宿れ」
デヴィガイオの赤い瞳から海色のオーラが漏れ出し、同時に刺したままの黄金の三叉槍が蒼い光を纏う。
「潮騒の蒼罰!!」
槍の先端から高圧の海水が3本飛び出し、ナスの胴体を貫いたかと思うと、飛んで行った先の水がイッカク、シャチ、ホホジロザメの姿を模した形に変化し、空中を泳ぐように飛来してきた。
ゾーコ、浦島、カメーン、その上に槍を抜き取ったデヴィガイオを乗せて離れると、それら海の最強生物軍団がナスの正面に突撃し、飛沫とともに大爆発を起こした。
「よっしゃ!あのナス野郎を倒したぞ!よくやったな、人魚の嬢ちゃん」
「ナスも、すまない……。―――ありがとう……。ワシからも礼を言わせてくれ、デビ子」
「二人とも……。えへへ、だね」
クールと同様、散らばった機械部品の残骸のようなものがパラパラと落ちてくる。
「二人とも、早くアルジの元へ駆けつけよう!飛ばしてくれ、カメーン!(カメェェーーン!!)」
「すまんが、ワシはここでお別れだぞ。元同僚の二人を弔いたい。二人とも、アイツによろしく頼むぞ!」
「おう、わかった!ありがとうな、よく知らん氷の鬼さんよ~!」
まさか、ワシらが襲ったかつての標的に助けられちまうとなあ。
「これも運命の悪戯、なのかもな」
ゾーコを残し、一行はアルジと合流すべくカメーンで向かった。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
『クロスクロス』
アルジの後ろで半透明のキネシスが青いボンボンを両手で振って応援している中、ダブルクロスコネクターの背面にある縦に並んだ『VVVV』の金字を『><><』に回し、再度起動した。
「金太郎!エェーンド……」
二重に響く機械音声。それに合わせて金太郎がアルジの右側に歩いてきた。
「オレのもう一つの力を見せてやるよ――『桃太郎!』」
アルジの左側に桃太郎の立ち姿のホログラムが出現する。
「今度はなんだ!」
そう叫ぶ雪の女王の声を無視して、端末をキャストドライバーに再度重ねる。
『クロスキャストチェンジ』
「…撤退だ。次会う時こそ、カイはわたくしのモノにしてやる」
そう言うと女王はふわふわと浮上していく。
「おーい、変身の途中で逃げるヤツがあるか!?」
「何とでも言え。わたくしとて、目的遂行の前に命を無駄にするわけにはいかぬのだ」
このままでは逃げられる…。やっと倒せると思ったのに!
「乗れ、アルジ!(カメェーーン!!)」
浦島太郎とカメーンの声だ。
「よっしゃ!」
「ふふ……いつの日か。――何の音だ」
氷原を走る一筋の爆音。
「ムカつくぜエセの女王!オレの変身を待たずに逃げやがって! 何でオレに気持ち良く変身させねえんだ!」
カメェーーン!!との甲高い叫び声とともにブチギレている声が響き渡る。
「何なの、後ろの人……」
カメーンで追いかけている最中にふと、隣から一言掛けられる。
『またいつでも俺様を呼んでくれよな!お前さん』
右手側にホログラムの金太郎が出現していた。
「ありがとな、金太郎」
金太郎の眼差しを横目に、
「――――交差変身!」
移動前にキャストドライバーにはスキャン済だったため、そのままベルトのチェンジスロットへ突っ込んんだ。
『カ・サ・ネ・ロ、タ・マ・シ・イ!クロスクロス・チェンジー!』
走行中のアルジの上で金太郎と桃太郎のホログラムが混ざり合い、上から降りてきた金と桃色の光のオーロラを身に纏う。
「うお、なんかアルジがまた何かに変身してるぞ!」
「アルジの進化、止まらない、だね」
見ていた浦島らもその状況に驚いている。
金太郎と桃太郎、二つの英雄譚を重ね合わせた新たなる形態。
黒い鎧の上から金の字の前掛けという融合した装衣、鋭さと朗らかさを併せ持つ黒と金のオッドアイと髪は、桃太郎の正義と金太郎の無垢な闘志、その両方を宿しているようだった。
「浦島のバイクにも乗ってるし、もはや三位一体ってところだな。……よし、この坂からなら!行け、カメーン!!」
「カァァ……メェェェェーーーーーーン!!」
全速力で隆起して出来たような氷の坂を駆け上り、大空へと飛翔した。
アルジはキャストパスを抜き取ると、三回ドライバーに翳した。
『ラストアタックチェンジ—―クロスクロスブレイカー』
空中でカメーンを踏み台に雪の女王へ向けて飛び上がると同時にチェンジスロットへ端末を差し込むと、少しだけ引き出してチェンジスラスターのアプリを起動し、直ぐに差し直す。
「—―—―お前のエピローグは、決まった!」
融合元の声が混じって発せられたアルジのセリフが視えない雪の女王に追いつかれていた事実を告げ、思わず声のする方へと振り返った。
「カイは……、どこ」
何処で愛した者の名を呼ぶ女王の辞世の句に合わせたかのように、アルジの右には金太郎、左には桃太郎の得物を振りかざす影が重なる。
「叩っ斬れぇぇぇー!!」「オラァァァァァーーー!!」「決まって、くださぁぁぁーーーい!!」
出現した剣装状態と合わせて三人による同時攻撃を受け、雪の女王は川の字に切断される。
両側の二人は消滅し、アルジが重力に従うように落下するとともに女王は大爆散した。
「オレ達が……、勝ったぁぁぁぁーーー!!」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「そうか。納得だが、ゾーコがそんなことを。ふーむ……」
決着がついてから約三十分後のこと。
空を覆っていた曇り空、流氷や雪原、極寒ともいえる寒さに覆われた世界だったが、綺麗に元通り。
蒼い海、広い砂浜、白い雲と晴れ晴れとした青空、最初に頭を打ち付けたあのヤシの木。
世話になったので挨拶にと、再びアイスドールで姿を見せたキネシスに期待通りの驚きを見せる浦島だったが。
「まあ、急ぎでなければ移動前に顔でも見に行ってやるといい。景色が戻ったのも確認出来たし、ボクはもう、早く元居た世界に帰らないと……。正直名残惜しいけどね。またいつか会おう、アルジ!みんな!(カメェーーン!)」
「じゃあな!浦島とカメーン」「色々とお世話になりました!」「またバイク乗せて、だよ」
カメーンが灯りで前方に時空を超える穴を開け、帰り道を照らし出す。
最後にカメーンに乗り込んだ浦島は左手を振る。
「おい雪の嬢ちゃん!」
「わたし、ですか」
「そいつとの結婚決まったらカメーンと行くから、招待状待ってるわ!」
「早く行けやバカ太郎がよー!!!!」
赤面した顔を両手で隠すキネシス、ヒューヒューなどと口で言っているデビ子、最後までコイツはほんと…と呆れかえる三人を背に、はっはっはっとの笑いと「ハシィィーーーン!!」というカメーンの鳴き声を残して賑やかなヤツらは帰っていった。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「クール、ナス」
海の見える丘に小さな二つの土饅頭、その上に割り箸のような小枝が突き刺さっている。
二名の名前を呟きながら静かに手を合わせている一人のマシンオーガ。
「木の棒だけじゃ寂しいだろ、ゾーコ」
「アルジ……。その花は」
「通りがかった木にあったんで採ってきた。看板にあったが、名前フトモモらしいぜ」
彼岸花と一瞬見誤りそうなほど鮮やかな赤い花。
「カメーンと帰る直前の浦島に聞いたんだ。仲間を弔っているってな」
アルジはそう言うと墓の前に供え、両手の皺を合わせた。
「しかし、見晴らし良いよなここ」
「そうだろうぞ。他の二人はどうした」
アルジ以外の姿が見えない。
「デビ子は人魚だから此処までは登れないだろ。今頃、キネシスと別れを惜しんで浜辺で遊んでるだろうぜ」
「それはよかった。――色々と世話になったぞ、アルジ。感謝してもしきれんぞ」
「いいってことよ。そういや、ゾーコはこの後どうするつもりなんだ?エネオプに帰るとか」
あわよくば一緒に旅でもしてみたいと思っていたが、キャストドライバーの次元移動はあいにく一人用。
現実で出来ないことは発言するものではないと考えているアルジ。
「ワシは戻らねえぞ、あんなとこ」
「マジかよ」
「ああ。お前の命を狙っているような企業なんざこっちから辞職させてもらうぞ。それに……」
視線の先だけで、もう聞かなくても分かってしまった。
「お前こそ、早くこの世界から移動した方がいい。エネオプのことだ、きっと此処の異変を嗅ぎ付けて直ぐにでも社内の兵士を寄越してくる筈だぞ」
「忠告か、素直に受け取っとくよ」
「そうだぞ。受け取るんなら、ついでにこれらも持っていけ」
ゾーコは立ち上がると、柔らかい腹部と装甲の隙間に爪を突っ込み何かを取り出した。
「オートカイロと、もう一つは…何だこれ」
金貨をあしらったその下に左右を向く赤と青の矢印が特徴的なアイテムだった。
「名は『カワセンジャーMB3』という。遠征先で資金難にならないよう、ワシらのような遠征する部隊に配布されていたものだ。ペジルのままでは他所の世界で買い物も出来んだろうしな」
「うおお、こういうの欲しかったんだよ!やっぱ現地の物品は生成しようがないし。ありがとな、ゾーコ」
「なぁーに、もうワシには無用の長物だぞ。使ってくれるモンが居るなら、無駄にならなくて済むぞ」
二つのアイテムを早速キャリーカプセルに収納した。
「エネオプは裏切り者を次元の果てまで追いかけてくるぞ。気を付けるんだぞ」
「ああ。短い間だったけど、色々と助かったよ。また会おうな」
(また会おう、か。マシンオーガ族なら物語の人物と違って世界が一周しても記憶消えないし、落ち着いたら行ってみるか)
アルジは丘を後にした。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
『ディメンションゲート』
キャストパスから次元移動用のアプリを起動すると、過去の変身履歴から行先を追加する。
「キャストサーチ履歴より座標設定完了」
「これ、カメーンの穴みたい、だね」
「うん……。名残惜しいけど、デビ子ちゃんともお別れかぁ~」
陽が沈み始める砂浜。次元の穴が開いたところで別れの挨拶を交わす三人。
「……いつかアルジみたいに優しい王子様と、会うになってみたい。人魚姫っぽく」
「えっ、ちょっ」
ボソッと呟いたデビ子の言葉にキネシスが動揺して顔を赤くする。
「ふふっ!――二人とも。いつかまた会う、になろう!」
別れの挨拶に合わせて一瞬で表情を切り替え、落ち着いた素振りを見せるキネシス。
「うん……!行ってくるね、デビ子ちゃん!」
そう言うと、キネシスを象っていたアイスドールは砕け、アルジの精神内に戻った。
「デビ子。……元気でな」
「行ってらっしゃい!アルジー!」
会話を終えると、アルジはパスをチェンジスロットに差し込んだ。
『座標……N64MB1R2EE35』
出会えるといいな。お前の言う……その王子様とやら。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
『エネオプは裏切り者を次元の果てまで追いかけてくる……』
分かってるが、オレらの旅に終わりは来るのだろうか。オレに、ブックワールドのあの計画と金太郎をやられた復讐の炎を鎮められるそんな時はいつ訪れるんだろうな。
「アルくん。次の世界はどんなとこなの?」
「そうだな……。着いてからのお楽しみでいいか」
「なにそれ~、教えてくれたっていいじゃ~ん!」
「おいやめろ!頭ん中で暴れんな!おぉーい!」
旅の答えは、やはり旅の中で見つけるしかない。
エネオプの用事を先延ばしにするつもりはない。
けど今はただ、相棒の笑顔がまた見られるようになっただけで安心している。
お陰でオレ達は、まだ前に進めそうだ。
幕間『へへ……エンコ詰めずにアンコール、だよ!』
「えっ、ちょっ、ちょっと待ってアルくん! さっきまで砂浜に無かったのに、この立派なアイドルステージはなにっ!? しかもど真ん中の水槽にデビ子ちゃんが入ってるんだけど!?」
「うん。 歌うたう、になるね」
「そういうワケだから聴いてやってくれ、キネシス。 ――デヴィガイオで……『Loop in Tide』」
【Loop in Tide】
作詞:ユッキング加賀 唄:デヴィガイオ
プカ プカ 海の中
ユラ ユラ 心の中
潮の流れるまま 気の赴くまま
十五の朝のこと 海の外を知る
ヤシの実 直撃 し・た・よ
いま思えば 偶然 じゃない
きっと 必然なのだと 感じている
それはそれとして 痛いから
その指 詰める なろうか
きら きら 水底へ
しゅわ しゅわ 泡沫に
抗えないかな 憶えたいのにな
プカ プカ 海の中 ユラ ユラ 心の中
繰り返している
(プカ プカ 海の中……)
(ユラ ユラ 心の中……)
(きら きら 水底へ……)
(しゅわ しゅわ 泡沫に……)
◇◇◇
「デビ子ちゃん、やたら人の指を詰めようとしてるけど……何か理由あるの?」
「うんっ! ニンゲンの描いた任侠マンガ、ぞくぞくして好きっ!」
「デビ子の趣味、特殊過ぎるだろ……」




