疑惑
フレイヤ公爵邸から、マリアが異端審問官との面会の最中に毒を盛られて倒れたと聞いた。
その知らせを聞いた私はフレイヤ公爵邸へと急いだ。
マリアの事が心配で悠長に馬車なんて乗っては居られない。
私は急いで馬を準備させた。
本来なら人が沢山いる王都で馬を掛けるなんて危険な行為だが、マリアの事が心配で仕方がなかった。
幸いシュープリームは利口な馬だ人を上手く避けてくれた。
王宮からフレイヤ公爵邸に全速力で駆けても事故も無く無事に着いた。
フレイヤ公爵邸に着いて直ぐに門番に、シュープリームを預けてマリアの居る場所を聞き急いだ。
「マリア!無事か?!」
大きな声を出してノックもせずに部屋の扉を開けて入ってしまったので、マリアは驚いていた。
毒を盛られたと聞いて居たので、もしかしたら意識もなく苦しんでいるかも知れないと想像していたが、マリアの元気な様子に少しホッとした。
(体調は大丈夫なんだろうか?)
私は彼女の肩を掴み引き寄せて確かめた。
「毒を盛られて倒れたと聞いた。大丈夫なのか?どこか苦しいとかは無いか?!」
「えっ?!ええ、ご心配お掛けして申し訳ありません。セインフォード殿下」
その返事とマリアの元気な姿を見て私はやっと安心する事が出来た。
「良かった!!」
そうして私はマリアを強く抱きしめた。
そこに居合わせた異端審問官が軽く咳払いして、私に事情を説明して来た。
私はマリアの事しか目に入って居なかったので、正直、マリアと一緒の部屋にラインベルト審問官が居た事に驚いたが、それよりも人前で抱きしめられて、マリアは顔を真っ赤にしている。
私は仕方なくマリアを離して審問官の方に向き直し話しを聞く事にした。
「セインフォード殿下。ご安心下さい。我々は毒物を口にしてはいません。犯人を炙りだす為に毒物を飲んだ演技をしたのです//」
「演技?」
私がそう聞き返すと、マリアは本当に申し訳なさそうな顔して、もう一度謝罪して来た。
「ええ。本当にご心配をお掛けし申し訳ありません。あの、それに、もし毒を飲んでも私なら神聖力で直ぐに解毒できると思いますから心配ないですわ。それよりも困った事になってしまって…」
「マリア。例え神聖力で解毒可能でも毒物を口してはダメた。万が一の事があったらいけない。それで困った事とは?」
「あの、それが私達に毒を盛ったのがカロリーナかも知れないんです」
マリアが、そう言ったので私も驚いた。
「カロリーナが?!まさか?!」
「ええ。私も何かの間違いだと思うんですけど…。色々と調べたらカロリーナが持って来た茶葉に毒が入っていたらしくて、それに毒物の騒ぎの時に、カロリーナが裏門から逃げ様としていたのを聖騎士達が捕まえたんです」
「そんな事が…」
私も話を聞いて、どう対応して良いか色々と考えていると、ノアールが私達に話し掛けてきた。
「…その話ですが。ちょっと宜しいかしら?あたくし先程の聖騎士達が連れて来たカロリーナがカロリーナだとは思えませんの」
ノアールがそう言うとマリアが不思議そうに答えた。
「?ノアール。何を言っているの?意味が分からないわ」
「今、分かり易いく説明いたしますわ。先程、聖騎士達が連れて来たカロリーナからは、いつものカロリーナとは違う匂いがしたのです。
あたくしは動物ですから正直人間よりも嗅覚や視覚、聴覚には優れている自信があります。
確かに見た目も声もカロリーナなのですが匂いだけは違ったので、あたくしは違和感を覚えたんですの。
聖騎士達が連れて来たカロリーナからは高級な香料の麝香の香りがしましたの。麝香は最近では貴族の令嬢達の間で流行っている高級香水のベース使われる事が多い香りですわ」
「麝香か…。異国から輸入している、とても高価な香料だな。確かに平民のカロリーナから、そんな香料の香りがする事は無いだろな」
「ええ。あたくしが知る限り、カロリーナから麝香の香りや貴族の令嬢達が使う様な高級な香水の香りがした事はありませわ」
ノアールの話を聞き終えたラインベルト審問官が、呟く様に口にする。
「成程。見た目や声も変える魔道具『闇の魔道具』を使用しているのかも知れませんね」
その呟きにマリアも反応する。
「それでラインベルト審問官の命を狙ったのかしら?」
私は、ここで議論していても結論は出ないと思ったので直接、偽者と思われるカロリーナに話を聞く事にした。
「そうかも知れないな。取り得ずここで色々と推測して考えても何も解決しない。もし偽者のカロリーナなら本者のカロリーナの行方も気になるし心配だ。だから詳しい話は偽カロリーナに、直接、聞いてみよう」
私はそう言って偽カロリーナを閉じ込めている地下室へ向かった。




