地底の魔王
日記に書かれていた魔法陣が発動して、私達は知らない場所に飛ばされた。
その場所は薄暗いけど広い部屋だった。
そして天井には美しいシャンデリア並び、窓には豪華なステンドグラス、奥には、玉座の様な豪華な椅子が置かれまるで、どこかお城の王座の間の様な部屋だ。
そして、その椅子には誰がか座っていた様だったが、私達に気が付いたのか立ち上がり、こちらに向かって歩き出した。
目を凝らして、その姿を見れば10歳位の子供の様だった。
赤紫色の髪と瞳と、少し吊り目気味だけど、人形の様に整った顔立ち。
頭には宝石や金で装飾が施された黒いベレー帽をかぶり。上等な黒いスーツに白いスカーフタイを締め、ハーフパンツと膝まであるソックスを履いている。
そして装飾の付いた革靴。
その姿は上流階級の子供だけど、ただの子供には無い威圧感や威厳を感じる。
そして、私の近くまできた。
私と目が合うと笑顔を見せたので、私は少し安心したが、次の瞬間に衝撃的な言葉を言われた。
「魔王城にいらっしゃい。聖女」
その言葉に私は驚き声が裏返ってしまった。
「ま、魔王城?!」
私達の驚きとは裏腹に魔王と名乗る少年はニコニコと笑いながら自己紹介を続ける。
「そう。ぼくの名前はウラド。人間達には、地底の魔王とか呼ばれている、あの魔王様だよ」
「えー?!」
「あ、驚いてる、驚いてる」
そう言うと私を見て愉快そうに『クスクス』と笑いながら話を続けた。
「君を呼んだのは、ぼくだよ。聖女。君にセインフォードの呪いを解いて欲しいんだ」
「は??呪い?」
そう言われて、私は混乱する。
「ああ。人間達は『王家の病』や『神罰』と言っているやつだよ。ま、このぼくから言わせたら、あれは姉さんが掛けた呪だよ。そして、あれを解くのは聖女、君にしか出来ないんだ」
どうやら呪とは『王家の病』の事だったらしい。
そして、きっと姉さんとは、女神アルティミの事だと思う。
私は確かに王家の病を治す方法を探していたし、その方法が分かるなら有り難い。
「そうだけど…。本当に、その方法を知っているの?」
私が恐る恐る、そう聞いたらノアールが慌てて私を止める。
「マリア。騙されてはいけませんわ。魔王は、人の弱みや欲につけ込んで、その望みを叶える代わりに、とんでも無い対価を要求するんですから!」
ノアールが強い口調で、そう言って魔王と私の間に立ち塞がり、尻尾を立て威嚇する姿を見せた。
だけど魔王は余裕な表情で私達に言う。
「やだな〜。今回に限り対価は要求しないよ。確かに聖獣の君との取り引きの時は、対価を貰って君は残念な無能猫になったけど。アハハ」
「う〜。残念な無能猫で悪かったですわね〜」
ノアールと魔王の話を聞いて、私はノアールが魔王と関わり合いがあるのは理解出来た。
「ノアールは、魔王と何か取引して、何か代償を差し出したの?」
私がノアールにそう聞けば、ノアールは困った顔をして返事をした。
「マリア。……それは」
「無能猫が言いづらいなら、ぼくが教えてあげるよ。そこの無能猫は、聖女、君の魂と、ロザリアの魂を入れ替える魔術の成功と引き換えに、ぼくに魔力を探し出したのさ」
「え?なんでノアールが?!」
「それは…。ロザリアの為ですわ…。マリア、本当にごめんなさい。元の場所に無事に帰る事が出来たら、詳しい話をしますわ。でも、これで分かったわでしょう。魔王の言う事を真に受けてはいけませんわ」
「だから!今回は代償は要らないって!ただぼくは魔獣と人間の闘いを楽しみたいんだよ。そして、今、人間の中で一番強いセインフォードと魔獣と闘わせて楽しみたい。だーかーらー彼を死なせたく無いのさ。聖女をクリーヴァに呼び寄せて無事に解決かと思ったら、全然、進展が無い。だから君を呼んだのさ。聖女」
「なっ!そんな事の為にロザリアを誑かしてマリアをクリーガァに呼んで、更には魔王城に呼びましたの?!」
「そんな事?!失礼だな。ぼくは魔獣の闘いを楽しみにしているんだよ!だから聖女、セインフォードの呪いを解いてよ。なにせ彼の呪いは、君にで無いと解けないからね」
魔王の様子を見るに、真実を言っている様に思える。
だから、私は、もう一度、魔王に確認する。
「本当に、代償無しで教えてくれるの?」
そう言うと魔王は笑顔であっさりと方法を教えてくれた。
「もちろん。簡単だよ。聖女。君がセインフォードにキスをすればいい」
だけど、その方法は私の想像の斜め上な事に驚ろいて、再び声が裏返って、顔に熱を帯びていくのが自覚できた。
「ええー//キ、キス?!//」
だけど魔王はそんな私の驚きが以外だったらしく、きょとんとして口を開いた。
「なんでそんなに驚くの?異性からのキスで解呪なんて物語でも書かれている、メジャーな方法だよ。だからぼくが事前に言ったでしょう?あれは呪みたいな物だって!それに帝国時代の聖女は、今のクリーヴァの王族達の嫁いてたんだよ。つまり再び聖女がクリーヴァ王族に嫁いだ時、過去の罪が許され、完全に呪いが解けるって事だよ」
言っている事は分かったけど、まさか本当に、そんな方法だなんて思いもしなかった…。
私が混乱していてもお構い無しに魔王は話を終わらせる。
「じゃあ。このぼくが、ここまでサービスしたんだ。さっきも言ったけど、ぼくは人間と魔獣のワクワク、ドキドキな闘いを期待してるんだ。強い魔獣を一ヶ月後には森に出現させるよ。だから、さっさと呪を解いてね。よろしくね。聖女」
「バイバイ」
魔王が、そう言うと、いつの間にか周りの景色代わり私達は元の部屋へと戻っていた。
私は、もう色々と驚きの事だらけで呆然としていたけど、ノアールの言葉で我に返った。
「はぁ~。色々と驚きましたわね」
「え?!ええ!そうね」
「それで、マリアは、どうするんですの?」
「どうって//それは…。出来ればセインフォード殿下を助けたいと思ってはいるの。でもキスなんて///そ、そのおでことか頬とかじゃダメかしら?///」
それだって、私にはとても勇気がいる。
「魔王は物語でも書かれた方法と言ってましたから唇なのでは?頬やおでこにキスして、呪が解けたなんて話、あたくしは知りませわ」
「ううっ///」
そうノアールにもはっきりと言われて、私は益々困ってしまった。
「まぁ。落ち着きなさいマリア。強い魔獣が現れるのは一ヶ月後ですし、その間に、まぁ何とかすれば……」
「な、何とかって、何ともならないわよ///」
「はぁー。めんどうな子ですわね。取り敢えず、マリア。先ずは、あたくしの話を聞いてくれますか?」
「え?あ、うん。ノアールと魔王な関わりの話?」
「ええ。そうですわ」
そうして、ノアールは昔話を初めた。




