告白
カーニバルを見学してから、私達はフレイア領へと戻って来た。
駅まで、迎えに来てくれた馬車に乗り込みフレイア公爵邸へと向う。
ほんの数日しか離れて居ないのに、フレイア公爵邸を見ると懐かしく感じる。
そして玄関まで来ると公爵夫妻が出迎えてくれていた。
馬車が止まりドアが開くと養父で有る公爵閣下が手を差し伸べてくれたので、私は、その手を取って馬車を降り挨拶をする。
「ただいま戻りました」
「おかえりなさい。マリア」
そう言って、2人は笑顔で迎えてくれた。
そして殿下が馬車を下り様とした時不意に足元がふらついた。
私は、その様子が心配になり声をかけた。
「殿下?大丈夫ですか?」
だけど返事は無く、そのまま馬車を下りた所で倒れてしまった!
幸い、公爵閣下がセインフォード殿下の体を受け止めたので怪我は無かった。
私は慌てて殿下に駆け寄って様子を見ると、意識を失っているのが分かった。
私は急いで殿下にヒールを掛ける。
公爵夫人は使用人達に指示を出して、殿下を急いで部屋へと運び込んだ。
幸いヒールが効いたのか、殿下は直ぐに意識を取り戻していた。
ベットに横になって居る殿下に私は静かに話かける。
「具合はいかがですか?」
「もう大丈夫だ。心配かけた」
「申し訳ありません。具合が悪い事に気が付きませんでした…」
私が、そう謝罪すると殿下は優しい笑顔で否定する。
「マリアのせいでは無い。それに、ここ最近は、病気の事を忘れる位、ずっと調子が良かった」
そして体を起こして私の手を握り殿下は固い表情で語りかけた。
「マリア。大切な話がある。聞いて欲しい。私の病は王家の人間だけが、患う病、いや本当は『神罰』なんだ…。我がクリーヴァ王家は、300年前の大帝国時代の帝室に血が連なる家系で、かつて聖女を巡って兄弟が骨肉の争いの果てに、その時の聖女様を偽聖女として処刑してしまった。そして、それが女神アルティミの怒りに触れて私達王家は罰を受けた。それが、この病の原因なんだ。
ただ、その事を公にすると王家の威信に関わるから、病だと言っている。
だから私の病気は絶対に治す事は出来ないんだ」
「そんな…!」
「私は、いずれ衰弱して命を落とすだろう。50年に一度、王家の誰かが罰を受ける。大抵は、その時の王子で、今回は、私が病になった。私はクリーヴァの王子に生まれ恵まれた人生を送ってきた。もう十分生きた」
「もう十分生きた。なんて言わないで下さい。きっと何か方法がある筈です」
私がそう言うと、セインフォード殿下は首を横に振って否定する。
「クリーヴァ王家でも、神の許しを得ようと、昔から色々とやってきた。でも残念ながら許される事は無かった…。
それに私は今まで病に罹った、どの王子達よりも恵まれている。
君にヒールや薬を作って貰えたお陰で体調が回復して、再び両親や兄弟に会う事が出来た。こうして辛い苦しみから逃れられている。全てマリアのおかげだ」
「嫌です。私が、きっと何か方法を見つけます。だから絶対に死んだりしないで下さい」
「ありがとう。マリア。大丈夫だ。私は、そう簡単に死んだりしない。長生きする様に善処する。
だからマリアも無理だけはしないで欲しい。もっと自分を大切にして欲しい」
「無理なんてしてません」
「君は、いつもそう言って人の事ばかり心配する。だから、私もマリアの事が心配なんだ。大丈夫。君が幸せになるのを見届けるまで、長生きすると約束する」
そう言って泣いてしまった、私の頭を優しく撫でて慰めた。
その後、セインフォード殿下は、再び眠ってしまった。
私は、看病をするつもりでいたが、旅から帰ったばかりで疲れているのだから、部屋で休む様にと公爵夫人に諭され、てその言葉に従い少し涙目のまま部屋へと戻った。
私が部屋に戻ると、ノアールが、びっくりして私の様子を聞いてきた。
「マリア。泣いてますの?どうしたのです?」
そう言って私の様子を確かめに来たノアールを、私は『ギュッ』と抱きしめた。
「なんですの?!」
「…ノアール」
ノアールを抱きしめると再び涙がこみ上げてくる。
そんな私の様を心配したノアールは抵抗もせず、私が落ち着くまで側にいてくれた。




