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体を入れ替えられて聖女では無くなったけど何も問題ありません  作者: アイ氏
1章『病』の王子と『冷遇』聖女

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魔導機関車の旅②

カロリーナやノアールと楽しく話していたら、何時の間にか晩餐の時間がきた。


私は、カロリーナに手伝ってもらって急いで支度をして食堂があるという車両に移動する。


公爵邸での晩餐でも、ノアールは遠慮して部屋で食事を食べていた。


初日はともかく、その後は、殿下や公爵夫妻もノアールの同席をお許し頂いたので私は前の様にノアールも一緒に食事を食べようと誘ったけど、今回も断られてしまった。


『見知らぬ人達に囲まれて食べる晩餐は、あたくし苦手ですの。どんな美味し料理を出されても人間達の視線が気まずくて味わって食べられませんわ。それなら、あたくしは部屋で、ゆっくり1人で食べた方が良いですわ』


そう言って、いつも一緒に食事をしてくれない。


 どうやらノアールは、かなり人見知りな性格らしく、気に入った人間としか関わり合いになら無いらしい。



正直に言えば私も晩餐やパーティが、アルティミに居た頃は、とても苦手でだった。


私を居ない者として空気の様に扱うルーファス殿下。


そして私を孤児と蔑む貴族達に囲まれ、少しでも失態があれば、だから下賤な生まれの者はと、私の耳に聞こえる位の小声でコソコソと嘲笑う。


そんな事ばかりだったから…。


だからノアールの気持も分かる。


だけど今は公爵夫妻もセインフォード殿下も、優しく、そして楽しい会話をしながら一緒に食べる食事は楽しいし。


そして、そこにノアールも居てくれたら最も楽しくなると私は思ってしまう。


食堂の車両へと着き、カロリーナがドアを開けてくれたので、私は部屋へと入る。


そこには既にセインフォード殿下が席に座っていた。


私は慌てて謝る。


「お待たせして申し訳ありません」


「いや。大丈夫だ。私も今は来た所だから」


そう笑顔で答えてくれたので、私はホッとした。


その後、近くで控えていた人が椅子を引いてくれたので私も席へ座る。



私とセインフォード殿下が座るとグラスには水やジュースが注がれた。


本来なら、こういう席では、お酒なのだが、セインフォード殿下は病気療養中。


私は余りお酒が好きでは無いのでジュースにして貰っていた。


そして前菜が運ばれて来た。


私達の前に置かれたのはパレットの型をした可愛らしいお皿。


前菜は野菜のテリーヌ、サーモンのマリネ(ミモザ仕立て)

トマトとモッツレラチーズのカプレーゼと説明された。


どれも一口サイズで遊び心あるお皿の上に品良く盛り付けられている。



早速、ナイフとフォークを手に取り、私は料理を口に運ぶ。



その後も、パンとスープ、魚料理、口なおしのグラニテ、お肉料理、そして最後にデザートと私達の食事のペースを見ながら絶妙なタイミングで運ばれてくる。


食事が終わり、ゆっくり食後の紅茶を飲みながら窓の外を眺めるが、残念ながら外は既に真っ暗で何にも見えない。


出発の時には、窓の景色を楽しんでいたが、カロリーナやノアールとの会話に夢中で、その後は全然景色を見ていなかった。


改めて考えると、ちょっともったいない気がする。そう思い、私は気持を口にしてしまった。


「外の景色が真っ黒なのはちょっと残念ですわね」


「そうだね。景色か…。それならマリアは、明日、朝早く起きれる方か?」



「え?はい。起きれますわ。でも、どうしたんですか?」


「マリアに見せたい景色がある。ラウンジのある車両に来て欲しい」


「はい。分かりましたわ。楽しみにしてますわ」


そうして、セインフォード殿下と約束してから分かれた。


部屋に戻れば、カロリーナがお風呂の用意をしてくれた。


車両にも狭いとはいえ、バスルームがありバスタブやシャワーがある備えられている。


まさに至れり尽くせりのだ。


◇◇◇


翌朝、私は約束した通り早朝起きた。


起きられ無かった困るので、一応、目指し時計をカロリーナに頼んでセットしてもらっけどた、時計の音が鳴るよりも先に目が覚めてしまった。


私はベットから起き上がりノアールに声を掛ける。


「ノアール。おはよ」


「マリア…何、で、すか?Zzzz」


返事の様な答えは返って来たけど、まだ寝てるみたい。


(寝ぼけているのかしら?ふふふ。可愛い)


私は、ノアールを起こさない様に、そっとベットから起きて身支度を済ませて静かに部屋を出る。

クリーヴァに来て、1人で身支度をする生活をしていた経験が役に立つ。


ただ1つ残念な事を上げるなら、私の三つ編みを編む腕は余り上達していない事だった。

それでも仕上げにドレスと同じ色のリボンを結び私はセインフォード殿下と約束したラウンジの車両へと急ぐ。


「おはよう。マリア」


「おはようございます。殿下。またお待たせして申し訳ありません」


「いや。私も今は来た所だ。それより早くこちらへ」


そうして案内してくれた場所には、大きな窓があり外の景色が見えた。


更には、ゆっくりと景色が眺められる様に椅子置かれている。


殿下の言っていた、見せたい景色とは、この海の景色だった様だ。



「まぁ!これがもしかして海ですか?!」


見渡す限り一面、青い景色が広がっている。


「そうだ」


その後も窓から海が眺めいると次第に水平線の方が、明るく輝いてきた。


そして徐々に、深い青色の海が黄金に染ていく。


その景色の美しくさに驚き、私は無意識に椅子から立ち上がり窓辺で「わぁ!」っと声を上げて景色を見入ってしまった。


そんな私の姿に隣に居る殿下が私を見て「クス」って笑っていた事に気が付いて私は子供の様にはしゃいだ自分が恥ずかしくなった。


私は窓側から、慌てて殿下の方に向き直し謝罪する。


「た、大変失礼しました。その海を初めて見たものですから//」


「いや。私も海を見るとテンションが上がってしまうからね。以前にも、こうして機関車から朝日を見た事がある。とても美しくてね。だからマリアにも見せたかった。自分が思ってた以上に喜んでくれて嬉しいよ」


そう笑顔で答えてくれる。


「こんな素敵な景色を見せてくれてありがとうございます」


私は、きっと、この日の事をずっと忘れ無いと思う。


初めての、魔導機関車の旅は、私に取って忘れられない素敵な旅になった。

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