ギルドにて
どうぞ腰かけて下さいと言われるがまま座りながら、値踏みする様な威圧感のある視線から解放されて安堵しながらも出る時にもでくわすであろう事に少し苛立ちを覚えた。
夢見が悪かったせいだろうか、ストレスが溜まっているのか、前の世界の『時実玲二』としての記憶が14歳の大人になりきれてない青年の『レージ』という身体に拒絶反応の様に俺の思考を垣見だしてくる。
思えば、お城でバッジを貰う時もあまり記憶が無く、呆けていた気がする。俺が思っているよりメンタルが弱い様だ、ショック過ぎる。
一方、リアは何故かウキウキした表情で隣に座り男性職員と地図を広げて何やら話し始めていた。俺は塞ぎ込んで考え込んでいた為に何の話をしているのか最初は分からなかったが暫くするとダンジョンの話をしていた様だった。
「……なるほど、それでボスを倒してクリアしたということですね……ちなみにボスは?」
「ゴーレムよ、頭に核があるタイプの」
「なかなかの難易度ですね、二人で討伐となると……ふむ、攻略者として認めましょう。人工型ダンジョンですのでトラップもあるでしょうが、その分道すがらに遺された宝も存在するでしょう。ダンジョンの情報としてこちらで扱っても?」
「ええ、いいわよ」
「ありがとうございます。ちなみに宝の換金の方はいたしますか?」
そう言われてリアは此方を見てきたが俺は首を横に振った。
「……そうですか、残念です。聞けばボス部屋の全ての宝を手に入れたとか、是非とも一目見ておきたかったのですが……それにしてもいい魔法袋をお持ちですね。」
俺は咄嗟に嘘を付く。
「あ、あぁ。親から譲り受けた物なんだ」
「それはそれは、貴方の親も立派な冒険家だったのですね。素晴らしい事です。本日は長々とお話いただきありがとうございました。ダンジョンの件について手続きさせていただきますので今日の所はこれで以上とさせていただきます」
そう言った男性職員は深々と頭を下げる。その動作を見ていたら、ほら行くわよとリアに引っ張られ部屋を出た。
いったい何だってあの部屋に案内されてダンジョンの話をしたのかちんぷんかんぷんだったが他のギルドの人達が集まるカウンター前に戻った時に事情を理解する。
リアはそのままカウンターへ俺を引っ張って連れて行くと元気な声でカウンターの女性が話し掛ける。
「本日はありがとうございました!ギルドカードを頂戴いたします!!」
俺とリアはさっき貰ったばかりのギルドカードを渡すとこちらが新しいギルドカードになりますと別のギルドカードが出てくる。
先ほどのとはカードが分厚く硬くしっかりしており、光沢がある。カードには『ダンジョン攻略者』との記載が。
「ダンジョン攻略者としての実績を認めランクが上がりました! 本日よりお二人のギルドランクはFからD+となります!C-までのお仕事が受注出来ます!! 今後の活躍ご期待しております!!」
会話が終わったとたん振り替えると辺りは騒がしくなっていた。
掲示板の方にいる人達の会話で俺達の事だとわかった。
「まじかよ」「ダンジョン攻略者が出たってよ」「……詳しい情報は」「あの姉ちゃん可愛いな」
……またか。だが、先ほどとは違い好奇の目で見てくる奴らが増えている様だ。それでも視線を感じるのが気持ち悪くリアとさっさとギルドをあとにする。
すぐ終わるとリアが言った割には結構時間が立ってる気がする時刻も昼過ぎ、流石に腹が減ってきた。さて次は飯でも食べて宿でゆっくりしようかと何処へ行こうかと悩んでいたところに。
「おう、新人。ベテランハンターの俺がギルドのなんたるかを教えてやるよ」
「へへっ、そこの可愛い子ちゃんも。手取り足取り教えてあげるよ」
どうやらもたもたしているせいで変な奴らに絡まれてしまった。
高圧的な態度と図体のダブルコンボな大男と鋭い目でねぶるようにリアを見ている男の二人組。
本来なら素早く時間を止めて鎮圧なりすればよかったのだが、その横暴な態度に前の世界の記憶が重なり身体が動かなくなる。
恐がり萎縮した姿を見せてしまい気を良くしてか、大男の方が俺の肩に腕を回し顔を除くようにして脅してくる。
「……お前、運く出口に繋がったダンジョン見つけてお宝たんまりあるんだろ? 教育料金として俺にくれよ、それからそこの女も」
そう言ってリアに手を伸ばして捕まえようとする、リアはダメだリアはだめだ、リアだけは……。
身体は一向に動かない。内臓という内臓、全てのはらわたが引っくり返った様な異常な気持ち悪さと全身の異常な震えに声も出なかった。それでも俺は……リアを。
「こらっ!!君達!何をしているんだ!!」
いきなりの声にそちらを見ると白い甲冑の女騎士と似た形の甲冑を来た騎士が数名がこちらに向かってきていた。
それを見て大男は肩を組むのをやめて騎士から逃げるように去っていく。
「……危ないところでしたね、ギルドにはガラの良くない者もいます。次からは注意していださい」
ありがとうございますとお礼をする、本当にリアに何かあったらと思うと感謝の念しかない。いえいえ、これが私の仕事ですからと優しく、それでいてしっかりとした対応は本当に騎士の鏡である。そんな女騎士は何かに気がついたかの様でふとこちらに問い掛ける。
「……ところでですが、セルディア王国の魔法庁、リア様では?」
「え、もしかして貴女……」
「ではやはり!お久しぶりです!!何年ぶりでしょうか」
どうやら二人は知り合いの様だった。




