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俺の相棒はいつも艶々している  作者: せりざわなる
セットアップの章
6/6

6.それではご確認下さい

「おー!」


朽木は目をキラキラさせて、水晶を見た。

いや、水晶の前にある何かを見ている。

そして笑顔全開で、後ろから様子を伺っていた新城を見る。


「ユウ!俺!戦士だって!しかも勇者!」


会場がざわめく。

出た。また、テンプレ!

性格は様々だけど、クラスの中心的な奴が勇者になるっていう展開だ。

そして、鑑定したサイラスさんが大袈裟に驚いて朽木を褒め称えるんだよな。


……あれ?


俺の予想が外れて、サイラスは軽く頷くと側にいた従者に何か囁き、それを受けた従者は手に持っている筆記用具で紙にメモをとった。


「では、クチキさま。これで、ご自分で情報を見れるようになるはずです。お席の方でご確認下さい」


サイラスは朽木にそう言うと、その後ろにいた新城へ視線を向ける。


「では、次は、あなたがなさいますか?」


新城は、一瞬朽木を見たが頷く。朽木は席に戻って自分でもう一度見てみたらしい。おおっと再び声を上げている。


「この者の、潜在情報を解放せよ」


そんな朽木に一瞥もくれず、サイラスは新城と共に水晶に手を置いて先程の言葉をまた言った。


ぱあっと水晶が光る。だけど、今度は白い光だ。

新城は少し目を見開いて、朽木と同じように奴しか見えない何かを見ている。

サイラスは頷いて従者に囁き、従者はメモを取る。


「では、シンジョウさまも、お席にてご確認ください。次は……」


会場はざわついていた。

魔法が使える世界で自分のステータスがわかるなんて、まさにラノベの世界だ。

そして、水晶は光るわ、朽木は勇者と言い出すわ、新城は朽木と違う光になるわ。

おお、勇者よ!と盛り上がらない展開は、まだ焦らされてるだけなのかも知れない。


サイラスと行う「鑑定」は、最初に朽木が手を上げたからか、同じ円卓に座る俺たちからやっていく事になったらしい。

新城が席に戻ると、次は隣の女子が。そしてまたその隣が。

やることは皆一緒だから、鑑定に向かう皆の足運びに躊躇いがなくなっていく。淡々と。そしてサクサクと作業は進む。


ただ、水晶の光は人によって違った。

朽木は赤。新城は白。二人と同じ色もあったけど、色はそれだけじゃなかったようだった。

結果を先にいえば、赤、白、青、緑、黒の5色。

もちろん、俺も流れに逆らわず水晶に触れたし、光ったから自分は何色だったかわかっている。


緑だった。

さて、どういう違いがあるんだろうな。


鑑定を終えた他の奴らは、自分達のステータスを確認するのが多かったけど、俺は水晶の光の色や、サイラスが何かリアクションするんじゃないかと周りを見ていた。

だが、光は5色しかなかったし、サイラスは何の反応も見せなかった。


ふーむ。ちょっと期待はずれ。

まあ、いっか。じゃあ、自分のステータスを確認して……


「皆様。ご協力ありがとうございました。今はとりあえず、魔法を使用するというきっかけとなり、ご自分でご自分の情報を参照できるようになったかと思われます」


ステータス、オープンと。

お、できる。


ワタセ カノウ、15歳、男。

身長168センチ、体重58㎏。

職業は、ハンターと【勇者】…………


は!?


俺は焦った。


危うく、ガタンと音を立てて椅子から立ち上がるところだった。

誰かに気づかれたんじゃないかと周りを窺う。

心臓がバクバクしている。

良かった。

サイラスが話始めても、まだざわついていたから気づいたから目立たなかったようだ。


それにしても、どういうことだよ。

見返しても、やっぱり俺の職業にはハンターと勇者とある。

勇者は朽木のはずだろ?


その答えは。サイラスの口からあっさりと出た。


「…しかし結果を拝見致しますと、この度の皆さまには、【勇者】と【英雄】をもたれる方が数名いらっしゃるようです」


ざわついていた会場が、静かになる。


「え?勇者って一人じゃないの!」


GJだ、朽木!

キャラ的にも、真っ先に勇者宣言してくれたお前が言ってくれると、場がいい感じで流れる気がする。

すると、思った通り。

ちょっと無邪気な雰囲気を見せる朽木に、サイラスはやや頬を緩めて優しい眼差しになった。


「おや、クチキさまの世界では、勇者はおひとりなのですか」

「一人ってわけじゃないけど。こう。おおっ!勇者!すげえ!あなたに世界を託したい!みたいな盛り上がりがあったり……とか?」


朽木を、最後の方で新城に顔を向け、だよな、と首を傾げている。対する新城は、同意を求めるなと変わらず冷静な様子だが。


「確かに【勇者】や【英雄】はあまり得る事のない、珍しい職業ではございます。ですが、その職業があるなし関係なく、皆さまは我ら都合にご協力頂く大切な方々。世界を託すなど、傲慢無礼な事は申し上げられません」

「だったら、勇者や英雄ってあんまり意味ないのー」


がっかりしたように、誰かが声を上げている。

俺も、せっかくの【勇者】なのに残念なような、変に目立つ事無さそうで良かったような気分になった。


「そのような事はございません。【勇者】と【英雄】には特徴的なある効果がございます。それは、後に活動される本人はもちろん、その他の皆さまにとっても、益になる部分が多いでしょう」



……ほほう




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