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風神の墓標【初稿版】  作者: 白馬 黎
らくがき
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twitterらくがき 1

らくがきなので時系列入り乱れてます。本編読了後推奨。

2013/6/12@ハゲTL(本編完結十数年後)

 歳を重ねても金が銀に変わっただけ、さほど見た目の変わらぬエヴァンスをフギンは恨む。後退した生え際を指でなぞり、いっそのこと全部そり落としてしまおうかと思いながら――それでも一度「死んだ」ときのまま時を止めたウラルに寄り添う彼の目元に刻まれたシワの深さに、異国の友を恨むのはよそうと、そう、共に歳を重ねた妻の口元にキスを落とした。小さなウラル、いとしい娘の額にも。

 歳を重ねるほどエヴァンスはジンに似てくる。ジンが重ねることのできない歳をかわりに負ったかのように。彼は声を上げて笑うようになった。彼はときどき寂しげな眼で丘を見ている。そうして少し呆れたような、はっきりと透る騎士の声の声で今も遠くのフギンを呼ぶ。



2013/8/9@ハグの日(第三部‐第四部間章3あたり/第四部エピローグエヴァンス視点)

「アラーハ。いつも守ってくれてありがとう」

「どうした、やぶからぼうに」

「ううん」

アラーハの身体はウラルの腕が回り切らないほど大きくて。赤茶の毛皮に鼻をうずめてみれば、獣脂と若菜とかすかな花の香りがした。

~~~

「ウラル」

祝いの席、ころんと涙をこぼし始めたウラルの頬を指でぬぐう。悲しい涙ではない、それは新郎新婦への祝福、そしてエヴァンスには見えない者たちへの追悼だ。微笑む彼女を胸へ抱き込み、エヴァンスも言葉に出さずそっと告げる――その覚悟に敬意を。愛していると、そう。



2013/8/11(本編完結後)

「エヴァンス、みて。星がきれい」

「……」

「あの星が六つ並んでいるの、わかる? 風神の竪琴座っていうの」

「リーグには、北極星はないのか?」

「北極星?」

「旅人が北のしるべにする星だ。リーグとベンベルでは星座も星の動き方もまったく違う」

#うちの子で星を見に行こう



2013/8/17@ヴァイキングの火祭りの記事読んだ後(第一部第一章4リメイク)

「旅芸人が劇やるってさ!」「今年はどんな?」「アレントの叙事詩!」子どもたちがお菓子を振り回しながら転げまどいつ駆けていく。大通りは出店で埋め尽くされ人でごったがえして、思わず息継ぎのように空を仰げば家々の間にに張られたロープからきれいなランプがたくさんぶら下がっていた。きっと日が暮れたらあのランプに火が入って、大通りでは松明をかざした兵士たちが鼓笛隊の音楽にあわせ陽気な歌を口ずさみながら練り歩くのだ。想像しつつウラルは前を行くジンらを必死で追う。はぐれてしまっては一大事、人ごみのなかで肩から上が飛び出している大男アラーハは格好の目印だ。人ごみに酔ったのか本人は気分が悪そうにしているけれど。



2013/9/17@クッキーババア流行(本編完結後/本編開始前)

「珍しいわね、エヴァンスからリクエストなんて」

「ベンベルの菓子にも似たようなものがあってな」

「ふるさと、なつかしい?」

「思い出すことが多くなった。未練はないが」

フェンネルシードをたっぷり練りこんだクッキーは香ばしく、甘く、ほろ苦い。

#うちのこにクッキー焼かせる

~~~

秋も暮れになると、ウラルは毎日のようにたくさんクッキーを焼いている。山で採れたクルミや干しブドウたっぷり入れて。そうして冬支度に忙しい男たちに声をかける。

「そろそろお茶にしませんか?」

お茶とクッキーの匂いのする白い息がウラルは昔から好きだった。

#うちのこにクッキー焼かせる



2013/11/22@いい夫婦の日(本編完結数年後)

 フギンの一日は夜明け前に始まる。寝ぼけまなこをこすりつつ同じベッドに眠る妻と愛娘を起こさぬようそうっと起きあがると、極寒の夜気がびりびりと身を貫いた。布団から出たくないが馬が待っているのだから仕方ない。

 きぃんと冷えた義手を右肩につけ、真っ暗ななか震えながら服を着替える。昔からの仲間たちは戦後で混乱している国を立て直すべく戦い続けているものの、隻腕で幼い娘のいるフギンはその役から降ろされ〈フェスオ・ソルド〉の軍馬養成牧場――〈エルディタラ〉の牧場で軍馬の生産・調教をやっていた。

「……おとうしゃん」

 ごそごそやっている気配で起こしてしまったのだろうか。布団の中で幼い娘のかわいらしい声がした。

「ウラル、おとーさんお仕事行ってくるな。おかーさんと一緒に寝てるんだぞ」

 聖女であり古い友人の名を冠した娘の額にキスを落とし、フギンは緋色のマントを肩にかけて外へ出た。



2013/11/28 エヴァンスの恋(第三部第二章4視点不特定)

 エヴァンスがウラルの額や首筋に浮いた汗を湿したタオルでぬぐってゆく。ウラルは昏々と眠ったまま、睫毛一本微動だにせず、たださらりと揺れた髪が揺れたタオルの水気をうっすら浮かべた鎖骨にかかるだけ。ウラルの首筋に魅入るフギンにお構いなく、エヴァンスはもう一度桶の中に浸したタオルを固く絞ると、ウラルの左手をとってぬぐい始めた。手のひらをぬぐい、手の甲をぬぐう。親指、人差し指と丁寧にぬぐい、爪を磨く。何をしているのだと思わず強い口調で咎めたフギンに、ベンベル人はこうするのだとエヴァンスは少しばつの悪そうに答えて、次はウラルの右手を同じようにぬぐい始めた。ベンベル人は礼拝の前に手を清める。意識のなく祈れない者がいるときは近くの者がこうして手を清めてやることで祈りにかえるのだと。そう弁解のように説明し、エヴァンスはタオルを桶の水へぽしゃんとつけた。

 青い瞳のなか、かすかに揺れ始めた想いに。フギンも、エヴァンス自身も、このときはまだ気づいていない。



2013/12/28 お題「金」(第四部第四章7あたりシャルトル視点)

「本当にいいんですね」主人はもう迷いなくうなずいた。長髪は高貴なベンベル人男性のたしなみ、けれど主人が覚悟を決めているならば否の言いようがない。生唾をひとつ呑みこみシャルトルは鋏をいれてゆく。夜の窓を鏡代わりに、見慣れた長い金髪に。主人が似せたい男をシャルトルは知らない。主人自身も正確に覚えているかは怪しいものだ。けれど短く刈った髪を褐色に染めると、「――これでウラルに会える」そう、しずかに笑った。青く澄んだ目を細め、薄氷が内から爆ぜるように。


たぶんちょこちょこ増殖します。

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