表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
X-it《エグジット》人をモノに変え、モノを人に変える、相反する力を巡る神々と人々の攻防  作者: 向愛 水哉
第2章 The Y-axis

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

50/69

怪盗マシン・6

 さて、彼らが戻らんとしている『本拠地』であるが、現在アキラが父から仮初(かりそめ)に預かる会社の第2プラント、東京と神奈川の境目付近にある。


 アキラの曽祖父の代から廃棄物処理業を営む『K.K.リング』は、(ちなみに社名は2度、時代に合わせて変更済)法令遵守(ほうれいじゅんしゅ)(むね)とする、真面目(まじめ)な中小企業である。産業廃棄物と一般(いっぱん)廃棄物の両方を扱い、中間処理工場に、安定型と管理型の各最終処分場、加えて日本では極少数の遮断型最終処分場も小規模ながら有しており、唯一 感染性産業廃棄物を除けば、他の あらゆる廃棄物の引き受けが可能な、ゴミ処理のエキスパートのような会社である。


 1都1県に分散する3つのプラントを所有するK.K.リングであるが、『怪盗マシン』の一味(いちみ)が『本拠地』とする第2プラントは、中間処理工場と安定型最終処分場から成る、主に建設系と工業系の産廃が運びこまれる場所である。


 その中間処理工場の奥深く―、社内でも、限られた人間しか立ち入ることを許されない、地下1階の1室、少々子煩悩なアキラの父が、息子の為に作り与えた20畳の『研究室』が、彼らの『本拠地』となっている。


.

 誰もいない深夜の工場に到着したアキラと野木(のぎ)は、駐車場の(すみ)に1台置かれたトキオのミニバイクの隣に車を停め、今宵の戦利品を確認すべく、一路(いちろ)『研究室』へと向かう。


 『許可無き者の立入りを禁ズ』と表示されたドアを開け、コンクリート製の階段を降りた先に、コンクリートの床と壁と天井で囲まれた『研究室』の扉はある。


 「―トキオ、帰ったよ―、」


 (おおむ)成功裡(せいこうり)に終わった今宵の作戦に満足し、意気揚々と『研究室』のドアを開けたアキラであったが、そこに居たのは、この世の闇を一身(いっしん)に背負っているかのような、がっくりと項垂(うなだ)れて、コンクリートの床に座り込んでいるトキオだった。


 部屋の灯りも何割か削減されてしまいそうな、トキオの(ただ)ならぬ暗さに、思わず顔を見合わせてしまったアキラと野木だが、何か不測の事態でもあったのか、野木は すぐさま その理由を問い(ただ)す。


「―どうしました? トキオ―? 何か ありましたか? ――誰かに何か見られたとか、…もしや偽物を掴まされたとか―?」


 野木の提示した2つの可能性に、アキラも固唾(かたず)を呑んでトキオの答えを待ったが、炭素棒を振動させて発せられるトキオの声は、常より震えを増して、聞く2人の耳に届いた。


「―ニンニク臭い…!!」


 ―2人が拍子抜けしたのは言うまでもない―


「なんだ、そんなことですか、大げさな…!いずれ消えますよ、(にお)いなんてものは…、」


 野木は心底(あき)れたように切って捨てる。


「―だって…!! ほんとに すっっっごくクサいんだよ―!? こんなクサいの生まれて初めて―!! 僕、餃子(ぎょうざ)なんか、自分家(じぶんち)でだって滅多(めった)に作ったこと無かったのに、一体(いったい) 何万何千個作らされたんだろ…!? ―狂気の沙汰じゃん! こんなの ひどい…!! 僕 めちゃ かわいそう…!!」


「―気持ちは分かるけどさ、…需要があって、それに答えようという人達が、多分それと知らずに君の腕を使ってただけなんだよ。工場の人達はきっと悪くないし、むしろ善意の第三者にして盗みの被害者でもあると思う。だから、そういう言い方は止しなよ、トキオ。」


―と、いうのはアキラの弁。これに野木が続く―。


「―そうですよ。それに、中々の評判だったらしいじゃないですか、君の手で握った餃子は―。意外と自分では気づかなかった才能があるのかもしれませんよ? 餃子作りの。」


「―え~~~!? …どうせだったら、もっと こう カッコいい何かに使って、カッコいい才能を見つけてもらうのが良かったな~~! 僕、『神』なんだし…!」


「―トキオ、職業に貴賤(きせん)は無いんだよ。餃子を美味しく作れるのだって、立派な才能だし、カッコいいことじゃないか。―そもそも悪いのは『転売屋(てんばいや)』なんだ。君の身体を作り変えて、勝手に売り飛ばしたりしなきゃ こんなことにもならないだろ?」


「―アキラくんの(おっしゃ)る通りです、トキオ。それに…仮に職業に貴賤が有るとすれば、今 我々が働いている泥棒稼業(どろぼうかぎょう)こそが最も恥ずべき(いや)しい行為と思い知りなさい―。

 我々としても、事情が事情、場合が場合だから 君に協力しているのであって、でなければ、誰が()(この)んで こんな火中の栗を拾うような真似をすると思います―?

 勝手に過酷な扱いを受けていたことには同情しますが、何より まず、我々への感謝を忘れてもらっては困ります―。」


 2人がかりの説教を受け、過去経験の無い(にお)いに我を失っていた神たるトキオも すっかり(かしこ)まり、居住(いず)まいを(ただ)して2人に頭を下げた。


「―ほんと、そうだよね、―ごめんなさい―!

―ありがと、アキラ…! 野木センも…、」


「―どういたしまして―」


「―まぁ ともかく、意に()わない奴隷的な反復労働から解放されただけで まずは良しとしなさい。―それで―? それは間違いなく貴方(あなた)の『左腕』なんですか? トキオ、」


「―うん、間違いないよ―、ちょっと見ててね―?」


 おそらく臭いの強さに衝撃を受け、床に投げ出したのであろう そのロボットアームに向け、トキオは機械で作られた仮初の左腕をかざす。


ここまでお読みくださり、誠に ありがとうございます。

貴方様の毎日に、少しでも彩りを添えられる作品を お届け出来ているか、

日々頭を悩ませつつも、楽しく書かせていただいております。

引き続き、次回も お立ち寄り願えましたら幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ