千文字の邂逅
イザベラ様とのご対面ですわね~~~~~~~~~!!!!!!!
父が先触れを出してくれていたおかげで、ホワイト邸へはすんなり通された。
整った広大な庭園が私とスピキオを迎え入れてくれる。
「ようこそお越しくださいました。 お嬢様は私室にてお待ちです」
恭しくロマンスグレーで流行りの片眼鏡をした執事が挨拶をし、
イザベラ様の私室まで案内してくれた。
通常、他家の貴族が訪問した場合は応接室に通すものだが、
千文字病を恐れる使用人もいるそうで、彼女は自発的に私室に引きこもっているという。
「手前勝手な理由で誠に申し訳ございません。
お部屋に関すること以外は、精一杯おもてなしさせていただきます。 ああ、お返事は結構ですよ」
思わず言葉が喉から出そうになるのを堪え、
簡単にジェスチャーで気にしていない、感謝していると伝える。
しきたりを無視する事に心苦しく思っているのだろう。
短く感謝の言葉を述べると、執事はイザベラ様の部屋をノックした。
「入れ」
硬質の透き通った声が耳をくすぐる。
銀の刺繍が丁寧に施された水色のドレスを身にまとい、
振り返ると同時にぱっと広がったオーロラ色の絹糸のような髪と、
氷の洞窟の最奥を湛えたような静かな青い瞳。
オルスフェーンの至宝と名高き輝く公爵令嬢。
噂に違わぬ傾城の美貌が確かにその場の時を止めた。
気づいたら執事は立ち去っていた。
「ファリア!」
一瞬何が起こったか理解できなかった。
重たいドアが静かに閉じた瞬間、私はイザベラ様に抱きしめられていた。
「本当に……本当に良かった。 会いに来てくれてありがとう!」
伝説級の美貌が目の前で涙を流している。
今日が初対面のはずだが、生き別れの妹に再会したかのような歓び方だった。
まずい。
ベリー系の甘くて、でも品の良い匂いがする。
思ったより低めのお声素敵だな。
生まれてこの方、商家あがりの一代成り上がり男爵貴族は
社交界では結構な扱いを受けてきていた。
それが雲の上のような立場の方にここまで喜ばれてしまったら、
心からの忠誠を誓ってしまう。
「あっ……ごめんなさい私ったら。 初対面なの、」
続きは指で作ったバツで防がせてもらった。
必死でイザベラ様の世界的に有名な彫刻でもギリギリ勝てるかわからない美しさの左手を指差す。
なんてことを! たかが男爵家の粗忽者のために。
あなたも千文字の呪いに取り憑かれているのに!
「ああ、その事なら平気よ」
一瞬だけイザベラ様は寂しそうに微笑んだように見えた。
「千文字の呪いを受けた者同士は、どれだけ話しても平気なの」
こんなに美しいのに呪いでお嫁に行けないなんて大変ですわ~~~~~~~~~~!!!!!
でもなんだか様子がおかしいわね~~~~~~~~~!?!?!?




