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 アンモン様が遠くを見つめるように窓の外を眺めながらゆっくりと話し始めた。


「この国には二種類の貴族が居る。一つは建国以前から居た貴族家で、もう一つは建国後に出来た新しい貴族家で、私達アンモン家も其方になる」


「え~っと、アンモン様は元王家ですよね?」


「うむ。君に知っておいて貰いたいのは我がアンモン家の成り立ちとアルバハン王家に反する一部勢力の事だ」


「反王家・・・それが建国以前から居る貴族なんですか?」


「そうだ。全てではないがジュイダ王国時代の栄華を忘れられない愚か者達が表向きは王家に忠誠を誓いつつ、裏では私欲のために法に、王家に反する利敵行為を繰り返しているのだよ、自分達がニール殿の慈悲で生かされていると理解出来ない大馬鹿者共だ」


 アンモン様の表情が怒りを孕んだ物へと変わり、真っ直ぐに僕へと視線を向けた。


「私達アンモン家を含むアルバハン王家派の貴族には王家以外に真の主が居る。それがニール殿とアマンダ殿のお二方だ」


 僕も姿勢を正しアンモン様を真っ直ぐに見た。


「私達アンモン家は王家を含めた全ての家を監視し、お二方の意に背く者達を排除するのが真のお役目なのだよ」


 王家を含めた貴族家の監視と聞かされて困惑した。

 ニールさん達がそう言う事をやらせるとは思えなかったからだ。


「・・・・・諜報部とかなんですか?」


「いや、私達が勝手にやっているだけで王家もお二方もご存じない筈だ」


 アンモン家が勝手にやっていると聞かされて更に困惑した。


「何故そこまで・・・いえ、解らなくは無いんですけど・・・・・」


「その疑問も解からんでもない。普通の貴族家であればハビラ王国から独立していても不思議ではない程の〝力〟をアバタ領は持っているからな」


 アンモン様の言う通り、僕がアバタ領で見た軍事力に経済力は王都のそれを遥かに凌ぎ、独立所かハビラ王国の全てを掌握していても不思議じゃない程だった。

 その殆どはゴタード商会とニールさんによるものなんだろうけど。


「何故私達アンモン家がお二方に王家以上の忠誠を誓っているのか、そして君に知っておいて欲しいのかを話さねばならん」


 そう言ってアンモン様は遠い目をして窓の外に視線を向けた。


*


*


*


 オルト達が去った後のルナミリク家では、兵士や使用人達が当主に叱責されていた。


「それでお前達は引き止めもせずに行かせたと言うのか!」


「も、申し訳ありません!ですが、アンモン家のカール様と言えば例の件も有りますし・・・その、敵対行動を取る訳には・・・・・」


 嘗てアンモン家を担ぎ上げようとしたり王家に敵対行動を取った者達は一切の証拠も無く悉く消されていたために、どの貴族家からも恐れられていた。


「クッ!・・・アンモン家と陛下に抗議の書簡を送る!あの小僧は娘のお気に入りと言うだけでなくゴタードに対する切り札になるやも知れんのだ!何としても手に入れるぞ!」


「は、はいいぃぃ!」


「・・・何が『破裂のカール』だ、馬鹿馬鹿しい」


 中でも嫡男のカールに逆らった者達は密室状態の自室等で頭部が破裂した状態で発見されたために反王家の貴族達から『破裂のカール』と呼ばれ、死の象徴として忌み嫌われていた。


 ルナミリク子爵はこの話を全く信じていなかったが、真実だったと三日後に身をもって知る事になる。


*


*


*


「ジュイダ王国がハビラ王国へと変わって二年後の事だ。南のタイラ王国がハルハ王国へと本格的に侵攻してきたのだ」


 当時ハルハとタイラは長年小競り合いが続いており国土の狭いハルハは少しづつ押されていて食料の1/5をジュイダ王国からの輸入で賄っていたそうだ。

 そしてそのジュイダ王国が無くなった事でハルハは食糧難になるだろうと目星をつけてタイラが一気に攻め込んで来たと。


「タイラ王国軍が王都の手前まで侵攻してきて最早これまでかと覚悟を決めた時の事だった。漆黒の魔導具に乗った男女が現れタイラ王国軍を蹂躙し、王都を救ったのだ」


 ニールさんとアマンダさんか・・・・・


「そして二人は王城へと赴き国王にこう告げた『タイラ王国を滅ぼしてくるからハビラ王国に入れ。俺の言う通りにすればタイラとハルハはお前達の領地にしてやるし今の数倍は発展させてやる』と」


 普通に考えれば信じられない話だけどゴードンさんの話を聞いた僕には十分信じられる話だった。


「勿論俄かに信じられるものではないが、タイラを滅ぼす事が出来るならと了承すると彼等は魔導具で南へと向かい、たった二人で、しかも僅か十日でタイラ王国を滅ぼしてみせたのだ」


 すげぇ・・・たった十日で国を滅ぼしてきたんだ・・・・・ん?あれ?二人でって事はアマンダさんも戦ったって事?とてもそうは見えなかったけど・・・あ、でもリサも見た目は可愛い女の子だし、有り得るのか・・・・・


「そして彼は『約束通りタイラは潰してきたぞ、次はお前達が約束を守る番だ』と言い、ハルハとタイラを纏めてアバタ領とし、王家をアンモン伯爵家へ、王都はツォアルに改名し、ハビラ王国へと編入・・・・・そして全ての貴族家は平民としてハルハとタイラの各町村の代官としてアンモン家に仕えるよう命じた」


「・・・は?えぇ?!そ、それをすんなり受け入れたんですか?!」


「そんな訳なかろう。当然全ての貴族家は受け入れられないと憤慨した・・・だがな当時の国王、アンモン家の開祖様はそれを許さなかったのだ。背後に控えていた近衛の腰に下がっていた剣を抜き、一番近くに居た侯爵家の当主の喉元に剣を突き付けると『今より我はハビラ王国アバタ領領主アンモン伯爵だ!アルバハン王家とシルフライン夫妻に永遠の忠誠を誓う者と知れ!我が臣民として生きる事が出来ぬと言うならば今この場で引導を渡してやる!』と涙を流しながら啖呵を切ったのだ」


「そ、それって・・・・・」


「ああ、開祖様がやらなければお二方がその場で全ての貴族を手にかけたであろうよ・・・だから開祖様が動き臣下の命を救ったのだ・・・今でも各町村の代官は代々アンモン家に忠義を尽くしてくれている」


 だから我がアンモン家はその忠義に報いるためにもお二方の意に背く者達を排除しているのだとアンモン様はそう話を締めくくった。

ここまで読んで頂き有難う御座います。

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