三十一話
目を覚ますとまた知らない天井だった。
「生きてるってことは」
やっぱり僕を助けてくれたのはカイムさんだったんだ。起き上がると胸を広く重い痛みが襲い、合成種の大剣を受け止めた時のことを思い出す。もっと言えば両手両足全部痛い。痛くないところはないってくらいだ。
僕が生きているってことはレイも生きているはずだ。早くカイムさんに感謝を伝えに行きたいが全身がハンマーで叩かれたように痛い。どうしようもないのでもう一度ベッドに入る。
僕が目を瞑ってすぐに扉が開く音がして目を開ける。
「目が覚めたんだね」
「ヒルダさん」
ヒルダさんはベッドの横の椅子に座る。聞きたいことは山ほどあったが順々に聞いていく。
「レイは!?」
「大丈夫だよ。特に目立った外傷もないし、魔力切れだから今は隣の部屋で休んでる」
それを聞いて一気に安心感が充足する。だが、同時にヒルダさんが心配そうな顔で僕を見る。
「レイちゃんより、大変だったのは君だよ」
「え?」
「え。じゃないよ。君を見つけた時なんて身体中の骨という骨が折れてたんだから。優秀な回復魔法師がいたから良かったけど」
何故か申し訳ない気持ちになり謝罪する。
「すいません」
「許す」
「僕ってどれくらい寝てましたか」
「どれくらいだろう。一日は経ってないけど」
「ほぼ丸一日!?」
長くて半日くらいだろうという予想は大幅に裏切られた。
「まあ結構疲労も溜まってたみたいだししょうがないよ」
そこでふと疑問に思う。
「そういえばどうして皆さんは僕たちの居場所が分かったんですか」
「カイムの魔法でね」
全くピンとこない。僕はカイムさんの魔法を受けた覚えはない。
「僕に魔法がかかってたんですか?」
「うーん。かかるっていうか付着するっていうか。……カイムくんの魔法に火の粉を飛ばしてそれがついた生物の位置が分かるって魔法があってね。最初は逃げた盗賊を追いかけるために使ったらしいんだけどそれがたまたまロアくんについてたってわけ」
要するに僕が助かったのはかなりの幸運だったってことらしい。でも一緒に盗賊を追いかけたのはもう三日くらい前のことのはず。どうしてまだ魔法の効果が続いてたんだ?
「食欲ある?」
特にお腹は空いていない。
「特には」
「そっ。じゃあ無事も確認出来たし、戻るね」
「あっ、色々ありがとうございました」
ヒルダさんはニコッと笑うと部屋を出て行った。
ほぼ一日中寝ていたらしいが疲労は取れても痛みは取れない。何も出来ないのでぼーっとしていると疑問も浮かぶ。
「魔物を操ってる黒幕は何者なのか。そもそも目的は?」
さっぱり分からない。でも黒幕を捕まえなければマズイことになる。そんな直感があった。
ようやく動けるようになったのはもう一度寝て起きた後。恐る恐る足を床につけたら痛みがなく、僕はレイがいるであろう隣の部屋に行こうと、部屋を出ると、廊下にレイがいた。
「レイ」
「お兄!」
レイに強く抱きしめられ、身体中が悲鳴をあげる。
「......またこの......展開。レイ離れろ......」
「いーや。せっかく生きて帰ってきたんだからサービスだよ」
レイが僕の胸あたりで顔をスリスリしてくる。それさえ重傷だった胸に的確にダメージを与えてくる。
だめだ今はマズイ。
「傷が治ったら絶対サービスするから」
「じゃあいいけど」
レイは意外とすんなりハグをやめた。
落ち着いたレイを連れて、さっきの部屋に戻り、僕がベッドに入ると何故かレイもベッドに入ってきた。
大きくはないベッドだが決して小さいわけでもないベッドだ。別に頑張れば二人で寝れないこともないかもしれないが、明らかにレイは密着し、さらに僕を着々と左端に追い詰める。
「痛いし、落ちるからもっと離れろ」
「それははっきり言って無理な話だね」
まつ毛の数さえ数えられそうなくらいだ距離が近い。いつ、どこを押されるか分からないから正直もう怖い。
「イッタイタタタタッ」
これで離れざるを得ないだろとレイを見るとレイはニヤリと片方の口角を上げる。
「兄、今嘘ついたでしょ」
自信のある口ぶりだった。
「いや、すっごいほんとだけど」
「お兄の嘘をレイが分からないわけないじゃん」
嘘を付いた罰なのかレイが僕を抱きしめた時、ついに僕の身体は本当に悲鳴を上げた。
「イッテーーー」
「今度はほんとみたいだね」
今度はあっさり僕を解放した。
「お前、僕が本当に痛くなるまでくっついてるつもりだったろ」
都合が悪いことを聞かれたのかレイは僕から背を向ける。
そんな背中を見て僕は一言。
「なんで僕たち散々寝たのにまたベッド入ってんの」
「確かに」
僕とレイはベッドを降りて、カイムさんがいると思われる集会所に向かった。
カイムが【炎の鱗粉】を使った部分が抜けていました。
すいませんでした。




