二十九話
まだ浅い。
追撃をしなければならない状況だが、身体中の力が抜ける。
僕たちはここで知った。合成種の尻尾が飾りではなかったことを。
「お兄、危ない!」
レイに横から押され、力の抜けた僕は簡単に倒れた。
「どうしたレ......」
それは間違いなくリザードマンの特性だった。もしあのまま突っ立っていたら炎で焼かれていた。
「射出・雷針」
小型の針が火を噴く合成種の口に放たれ、異変を感じた合成種は火を噴くのをやめた。
腕に抑え込んだ気を全身に流れ出すイメージし、力が戻った僕はすぐに後方に下がる。
「あれは多分、リザードマンの特性だと思う」
ホワイトウータンの生命力とオーガの装甲にさらにリザードマンの火炎まで備わっているらしい。外見に出てないだけで他の種も混ざっている可能性もある。
レイは有効打になる魔法があるが僕の場合有効打を与えるには多かれ少なかれ隙が大きい。通用するのは【極】か【一閃】くらいだろう。そして二つとも有効打にはなっても決定打にはならない。
「レイはあいつにトドメさせる?」
「魔力全部絞ってぶつけてみる」
レイの右手にはまた光と音が流れ出していた。
口から放たれる火炎をかわす。
今度は永続的なものじゃなくて断続的なものか。合成種から放たれたものは最初のを火炎放射と呼ぶなら今のは火炎弾。
焦点は僕にあっていて、ステップを繰り返して、火炎弾を避ける。どうやら僕も脅威と認識したらしいな。
僕に注意が向いている今は絶好のチャンスだがレイは魔法を撃たない。一発に全てを込めるらしい。
下半身に気を溜めて回避重視の態勢を整え、接近して注意を自分に集める。僕の剣が脅威だとわかった以上無視はできないはずだ。実際は薄皮も削げないが。
大剣の大振りを右にかわす。さらに上段の振り下ろしに右からの横振りは右斜めに跳躍し、回避。それもお見通しだったのか空中の僕に照準を合わせる。放たれた火炎弾も旋回することでかわし切る。
合図はまだなのか。時間がとてつもなく長い。
着地したところを狙った横払いを剣で防ぐが力負けし、3mほど位置が右にずれる。両脚に力を集中させている状態で剣を使っての防御はキツイ。避け切るのが理想的だ。
合成種の猛攻は続く。何の捻りもない単調な剣でも威力と速度が速い。それにこっちは自分から攻撃を受けに行かなければならないのだからいいマトだ。
ただひたすら予備動作を見ては回避を繰り返していく。当然、火炎にも前段階はあり、放たれる直前に口の中に燃え盛る炎が見える。
それを見て後方にステップする。後ろに下がるのは連弾をかわしやすくするためだ。距離をとって紙一重で火炎弾を避けていく。
でも予想外のことだって必ず起きる。合成種は僕が攻撃してこないと見切りをつけたのか遠方のレイに火炎放射を見舞う。
「レイ!!」
後ろを振り返った時、まばゆい光に目が眩む。これは嫌でも狙うな。その光からレイが魔法を完成させたことを悟る。
「お兄、ありがとう」
右手から過去最大の光を放つレイが歩く。雷の線のようなものがらレイの周りに浮き出ては消え浮き出ては消えを繰り返す。それはまるで
「雷の鎧!?」
「もう大丈夫。下がってて」
僕はその言葉を信じ、後方に下がる。
距離がまばゆい光が合成種を照らし出す。火炎弾は全てレイに当たる前に纏った雷が阻害する。攻守どちらにおいても力を発揮するのか。
レイは一気に跳躍し、合成種の背丈をはるかに上回ると、下に向けて放った。
【雷鳴】
雷が合成種の身体を深々と貫く。
そう。確かに雷は合成種を貫いた。だが、合成種は雷に火炎放射を当てて威力を軽減してた。万が一はある。
全速力で近づき、肩で息をするレイを抱きかかえて走る。
「お兄、ごめん。仕留めきれなかった……」
察知は命なきものには反応しない。未だ合成種は生きている。魔力切れで倒れたレイを草むらに横にならせて、合成種と再び対峙する。
手負いの虎は侮れないとはよくいったものだ。
腹部に大きな風穴を開けながらもその爛々とした目つきは消えない。僕には今のあいつが一番恐ろしく思える。
レイと合成種の対角線状で剣を構える。深呼吸で呼吸を整える。
僕にとどめがさせるのか。レイがいない今、力を溜める暇だってないのに。
思考中、合成種は僕に向かってその大剣を投擲した。
避ければ問題な……ダメだ、後ろにはレイがいる。
腕に力を集め、大剣を剣で受け止める。
「……ギッ。……う……おらぁ!」
数歩分後退したが何とか弾く。ただそれも見越していたのか眼前には合成種の姿。
力が脚に溜まってない。決死の覚悟で大剣を受け止めるが、力負けし、身体を地面に叩きつけられる。合成種は追い打ちとばかりにもう一本の大剣を抜いた。
「兄!」
知っていた。呼ばれるだけで力が湧くこと。
知っていた。居てくれるだけで心は折れないこと。
決めている。レイを一人にはしないと。
理屈も理論も知らない。生き残る力があればいい。
「まだ死ねない」
ボロボロになった剣でそれでもなお生を拾いにいく。
横に構えた剣で大剣を受け止める。
防げてはいない。現に胸を圧迫されてこみ上げる血を吐く。
圧倒的に絶望的。知るか、そんなこと。
生きて生きて生きて生きて生きて。
二本目の大剣を合成種が構える。
「......来るなら......来い」
瞬間、合成種を炎が包み込む。
「ウゴァァァァァ」
叫び声があってもその声はよく聞こえた。
「よく頑張ったね。二人とも」
意識が離れていく。
過去の話の行間を開けました。読みやすくなっていたら幸いです。




