24Last scene
大みかにて、私たちの計画。
「凛、オーストラリア1周する時間、どお考えても足りないよ」
「うん。ウエスタンは諦めるしかないね」
奏の肩に寄りかかった。
「だな。半周だけしてみるか」
「奏の計画は?」
「ざっくりだけど、ウルルまで走って、ケアンズ飛んで、ゴールドコーストまで走る」
「バイク?」
奏の前髪をチョイチョイとすいた。
「いや、車だろうな?」
「車かぁ……そうだよね。だったらさ、彩と健人さん誘ってみない?奏さえ良ければ」
「そうだな。いいよ。いろんな町めぐりながら、「チーム凛」で行ければ楽しいな」
電話した。
「彩、オープニングイベントの準備どお?寝れてる?」
「凛、余裕だよ。健人くんは走り回ってるけどね。」
「あのね、休みが10日とれたから奏とオーストラリア半周しようってことになって、
車で周るから、彩も一緒に行かない?」
「行く。行きたい。でも、ふたりの邪魔にならない?」
奏に太ももを撫でられた。
「ううん。奏も健人さん誘ってみるって。「チーム凛」で行ければ楽しいって言ってるよ」
「そういうことなら、行きたい。」
奏も電話した。
「健人、そっちは順調か?」
「奏、うん。もう少し。「彩音Ayane」のために、もう少し詰めたいとこかな」
「助言いる?」
「いらない。オレに任せろ」
「健人、オープニングイベント終わったら、ウルルとケアンズとゴールドコースト周ろうと思うんだけどさ」
「行く。絶対付き合う。お邪魔虫でも行く」
奏の脇腹をつついた。
「大丈夫。凛も彩さん誘ったから」
「テントがいいなぁ。キャンプファイヤーして酔っ払いてー」
イベント終了後。翌朝。
「凛、奏くん、健人くん、昨日は本当にありがとう。彩音Ayaneは順調に成長してるよね?」
「彩、私の方こそ感謝している。私の名前が日焼け止めになるなんて、凄く嬉しいの」
「Men'sの時は、健人にして欲しいなあ」
「いやいや、奏でしょ。ね、凛」
「オレ、日焼け止めつけたことないんだけど……健人、色白だし、いいんじゃないか?」
「奏くん、そこは譲っちゃダメでしょ」
「健人さん、私も健人でもいいけど、KENTがいいかな?」
「でも、Men's出す予定ないよ」
「……」
「凛さん、エアーズロック、一緒に行っていいの? 奏、貸すよ」
「ううん。4人で見たいの。」
「健人ごめんな。それ違うわ。凛が言うんならともかく……」
「でた。凛中毒」
「……」
私は赤くなった。
ランクルを借りて、4人でエアーズロックを観に行く。
2,840キロのドライブだ。
シドニー→ブロークンヒル(約1,160km)。
ブロークンヒル→クーバーペディ(約950km)。
クーバーペディ→ウルル近郊ユララ(約730km)走る。
ウルルから、飛行機でケアンズへ向かう。
2,500キロの国内線。プロペラ機ではないだろう。(ぞわっとする)
ケアンズから海岸線でゴールドコーストに向かう。1,800キロのドライブ。
ケアンズ→タウンズビル(約350km)。
タウンズビル→エアリービーチ(約550km)。
エアリービーチ→ゴールドコースト到着。(約900km)。
ブリスベン空港から日本に帰る。
彩と健人さんはLAに帰る。
私たちにとって最高に贅沢なバカンスだ。
先ず、奏がハンドルを握り、私がナビゲーターだ。
「奏、凄いな。ワクワクするよ。あのさ、泊まる場所選びオレと彩さんに任せてくれる?」
「ああ、もちろん。助かるよ。」
「了解。凛、希望ある?」
「シャワーがあって、食事ができて、足を伸ばして寝れるとこなら、どこでもいい」
「テントでも?」
「いいけど……カンガルーに襲われない所にして欲しいです。」
「襲われるの?」
「うん。集団で。荷物持ってっちゃうよって聞いたことあるの」
「夜行性だから、寝ている隙に持っていくんだよ。健人くん、危ないよ」
「それは、人がカンガルーの仕業にしてるんだよ。なぁ、奏」
「かもしれないな。でも、人の方がカンガルーより怖いぞ」
「……」
奏が明るい雰囲気を壊した。
「じゃあ、オレと彩さんで決めてから、「チーム凛」リーダーの凛さんが確認する。」
「了解。いいよ。あと、給油までオレ走るぞ。水分控えてな。」
「奏、任務中みたいだね」
下りてきた前髪をすいてあげた。
「そんなことないって。この風景観ながら走れるんだから」
奏は、500キロ走った。途中から彩は寝てしまった。
私は、給油後に、ナビを彩に代わってもらった。
給油して奏は、300キロ走った。
健人さんも途中から寝てしまった。
陽が傾きだして、
「健人、起きろ。ドライバー代わってくれ」
私は、奏と後席でゆっくり景色を眺めていたけど、
寝てしまった。
「健人くん、いいもの見せてあげるよ」
彩は、バックミラーの角度を変えた。
「凛の寝顔。奏くんに寄りかかって安心しきってるよ」
「幸せそうだね」
「凛、起きて。シルバーシティだって。銀の町よ。何処かにお土産屋さんないかなあ?」
「健人くん、休憩しましょう。泊る所も決めようよ」
ブロークンヒル。かつて世界最大の銀鉱脈。
「パレスホテルのプリシア・スイートかアウトバックリゾートに泊まるよ」
「健人さん、テントじゃなかったの?」
「いや、いい。明日も運転するし、ゆっくり休みたいわ」
「記念にプリシアスイートの寝室はどお?私が凛と奏くんにおごるよ」
「アウトバックリゾートは皆で泊まれる、家族向けリゾートみたいで景色がいいみたい」
「彩、気持ちは嬉しいけど、アウトバックリゾートがいいな。4人でガヤガヤしたい」
「そっか。了解だよ。ガヤガヤしよう。ここは私がもつからね」
奏の寝顔を見つめながら、三人で盛り上がっていた。
赤茶けた大地に忽然と鉱山都市が現れた。
奏のおでこに「の」の字を書いた。
「奏、起きて。夕暮れのブロークンヒルだよ」
翌日、明け方。
「おはよう、今日は私が運転するね」
「オレがナビするよ。ほとんど一本道だけど。あ、健人、起こすわ」
「ふたりとも元気だね。私も、まだ眠いわ」
私と奏で、700キロ走った。アウトバックの風景は、本当に赤土と砂漠だけが何時間も続く。
スピード感を感じないくらいだ。120キロ出しても、景色が動かない。
たまに、奏をつついたり、奏に肩を揉まれたりしながら集中を保った。
そろそろ運転変わろう。あとは健人さんと彩に任せて休憩だ。
「彩さん、砂漠というか赤い地面しかないよ。町あるのかな?」
「世界最大オパール産地だから、ドーンと現れるよ」
「地下都市らしいんだよ。初めてだし、オレも事情がつかめない」
「奏くん、凛、起こす?」
「いや、たぶん同じだと思う。待って。ドーム型の建物が見える」
2泊目、クーバーペディは、世界最大のオパール産地。
灼熱を避けるため住居も教会もホテルも地下に掘られた「地下都市」
地下に作られた家に民泊として泊まることができる。
「夕暮れ前に着いちゃったな。オレたち凄いな」
「凛と奏くんが700キロ、ぶっ飛ばしたからね。健人くん寝てたけど」
「健人、朝焼け見せたかったのに、起きなかったからな」
「赤い大地しか記憶ないわ」
「おはよう、早めに休めたんだから、そろそろ出発します」
「凛、まだ外、真っ暗闇だよ。あれ?地下か……」
「彩、奏と健人さん散歩行ったよ。多分あの二人、閉所恐怖症だよ」
「凛、知ってて地下でOKしたの?」
「ううん。実は、全く知りませんでした」
「私と彩は後席で、ゆっくりと赤い大地を眺めていた」
「奏、オレたちのテーマソングかけながら走ろう」
INXSの「Suicide Blonde」だった。
「趣味悪い歌」彩が呟いた。
「詩はどうでもいいんだよ。ギターリフが最高なんだ」
はるか彼方に赤い丘のようなものが、見えてきた。
エアーズロックは、先住民アナング族の聖地。一枚岩としては世界最大級。
日の出・日没で赤からオレンジ、紫へと表情を変える。
2019年に登山が禁止されている。
「近くまで行って、全体を眺めながら夕暮れ時まで過ごしましょう」
「凛、その前に休憩。ホテルと夕飯を確保しておく」
ウルル近郊のユララで デザートガーデンズホテルに泊まれることになった。
ウルルを望む部屋だ。
夕食はセイルズ・イン・ザ・デザートのイルカリレストランで、
アボリジニのスパイス料理を食べることにした。
健人さんが、ご機嫌で全て奢ってくれる。
「荒野のオアシス。陽を遮る白い布。風で生き物のように揺れてさ。」
「渇いた喉を潤してさ。生きてて良かったあって、笑いながら食事するんだよ」
「それが、オレ夢だったんだ」
私と奏は、二人にサプライズを用意することにした。
「ベースウォーク」(一周約10km)を予約した。
予約と称して、身長、体重、靴のサイズまで確認して。
こっそりエアーズロックリゾートのショッピングモールで買い物した。
サンドカーキの短パンとミリタリージャケット。ハットとソックス、ブーツ、そしてブルーのバンダナ。
「彩音Ayane探検隊」
明日の明け方に、彩の部屋と健人さんの部屋にホテルの人から届く。
◇奏語り◇
健人が気を遣って、凛とオレでW。健人と彩さんは、それぞれS。で部屋をとってくれた。
ダブルベットの背にもたれて、ふたりでエアーズロックのシルエットを眺めた。
月明かりで紫色に浮かび上がっていて、南十字星が輝く。幻想的な風景。
明日の朝の「彩音Ayane探検隊」楽しみだ。
そういえば、シドニーで喧嘩してから凛とゆっくり過ごしてなかった。
◇/◇
♪♪その㉕♪♪
凛、彩さんと健人の部屋って隣りとかかな?
ううん。階が違うよ。下の階かなぁ?
そっか。じゃあ遠慮はいらないな。
凛も遠慮はいらないから。
なんのこと?
「声。」
「もぉ」
「おはようございます。お支度してウルルに出発ですよ」
彩「……?」
健人「……?」
私と奏はランクルの前で二人を出迎えた。私たちも501とセントジェームスで揃えた。
二人の姿を見て、指をさして笑い合った。奏は、凄く凄く楽しそうで、いい顔をしてた。
「ふたりとも、ペアルック似合ってるね」
「奏くん、笑い過ぎ。」
「でも彩、「彩音」の制服も揃ってたよ」私も笑いが止まらない。
「オレ、ウルル行きますよって言われて、てっきり参加者全員、着るのかと……」
「私も。短パンとソックスと編み上げブーツまで、渡されたら信じるでしょ」
「ブルーのバンダナもいいでしょう。私たちも、お揃いだよ」
私は、頭に。奏は、首に。
「奏、笑い過ぎ。」
ベースウォークを終えて、記念撮影して、
ランクルともお別れして、シャトルバスで空港に向かった。
「健人くん、見て。凛が奏くんのお尻のポケットに手を突っ込んでるよ」
「ホントだ。わかるよ。なんか、さみしいな。彩さん、エアーズロックとお別れだよ」
「うん。でも楽しかったぁ。感動した。健人くんも普段クールなのに、はしゃいでたね」
私は、振り返った。
「まだ半分です。贅沢な時間は続きます」
私たちは、これから飛行機移動でケアンズに向かう。
シンプソン砂漠を横断した。
「凛、飛行機で正解だったな。きっと、車じゃ路面が滑りそうで飛ばせないよ」
「うん。現地の人から煽られたら嫌な気分になりそうだしね」
「出たな。凛の負けず嫌いが」
「ううん。奏が飛ばし過ぎてスタックしたら困るもの」
飛行機を降りると、乾いた赤土の匂いから、湿った緑の匂いに変わっていた。
ケアンズは、グレートバリアリーフの玄関口。世界最古の熱帯雨林ダインツリーが隣接。
スカイレール・クランダ観光鉄道で高原へ。ダイビング・シュノーケリングのツアー基地。
南国らしいゆったりした空気。同じ顔のランクルを借りた。
「うわー、空気が違うわ」
健人さんが真っ先に窓を開けて、身を乗り出す。
グレートバリアリーフへは、健人さんの手配で夕昏前のクルーズに間に合った。
装備のいらないシュノーケリングにした。スキューバダイビングと迷ったが、
海が綺麗で波も穏やかで透き通っていたからだ。
「あそこの珊瑚礁。オサガメ?マジか? 凛、飛び込むぞ」
私と奏は、まだ停泊していない船から、シュノーケル片手に服を脱ぎ捨てて、飛び込んでしまった。
あまりの気の早さに、彩と健人さん、他の客人たちも呆然と見ていた。
全く気にならなかった。奏が一緒だし。実は、凄く気持ちよかった。
彩が、私と奏が脱ぎ捨てた服をたたみながら大声で呼んだ。
「凛、せめて船が錨下ろし終わるまで待てないの?」
「奏が……オサガメって言ったの」
「オサガメ!オサガメ!」大騒ぎになった。
「ごめん。デカいアオウミガメだったわ。健人、早く来いよ」
一同、「……」
「上級エージェントのスキルと体力には驚かされっぱなしだよ」
「朝、10キロ歩いたんだぜ。」
「健人くん、私たちのペースで。デッキから、のんびり眺めてからにしようね」
夜、ダンディーズウォーターフロントレストランで、
彩が「彩音」の新しい香りのアイデアを話し出した。
「この雰囲気、南国の湿った緑の匂いを閉じ込めたい」
奏は地図を広げて、翌日からの海岸線ルートを確認している。
健人さんは、すでにホテルを三択に絞って彩に見せていた。
「クリスタルブルックライリーに泊まるよ。近くにショッピングモールがある」
「出発前に、いろいろ買い足したい物もあるし、ブラブラしたい」
私も同感だった。ロングドライブ後半が始まる。
「そうだね。私もブラブラしたい。」
「あのさ、オレは、滝見たいな」
ケアンズを出て、私がハンドルを握った。左側は海が続き、右側はサトウキビ畑が続いた。
奏に運転を代わって、キリンガン国立公園を目指した。熱帯雨林のジャングルを走った。
そして、ワラマン滝を正面からしばらく4人で眺めた。
「健人、虫が多いけど 、ここでキャンプするか?」奏が唐突に言い出した。
私は、少し考えて悪くない選択だと思った。
「国立公園だから、安全かな。でも、火は使えないかも」
滝を下から見上げながら、健人さんの反応をうかがった。
「いやいい。遠慮する。オレ10年ぐらい前、こんな凄くないけど滝行したことあるんだよ。
15分ぐらいで意識遠くなって溺れそうになったわ」
「健人くんが、修行とか似合わないね……」
マイナスイオンを存分に浴びてからタウンズビルに入った。
「彩さん、泊まるのランブータンリゾートでどお?」
「いいよ。健人くん、テントいいの?」
「BBQに切り替えたんだ。だから大丈夫」
◇健人語り◇
奏は、オレのために滝に誘ったんだ。
凛さんは、オレのために火が使えるかどうか考えてくれた。
彩さんは、テント泊を気にかけてくれた。
三人とも、オレの反応を伺って……
嬉しくて。でも、照れて滝行の話をしたんだ。大滝に飛び込みたいくらい嬉しかったんだ。
◇/◇
翌朝、マグネティック島を近くに眺めながらタウンズビルを出た。
「凛、静かな港町だな」
「うん。山と漁港って大みかみたいだね。岩場と珊瑚礁じゃ違うけど」
「そうなの?凛、今度、大みか遊びに行っていい?」
「いいよ。茨城空港ならすぐだけど、羽田や成田から遠いよー」
エアリービーチまで休憩を挟みながら500キロ。
高速道路を交替でハンドル握れば、直ぐだ。
彩と健人さんは、私たちの感覚が違うと言うけど……
「今晩は、ミラージュ・ウィット・サンディズに泊まって、
翌朝にホワイトヘブンビーチクルーズに行こう」
「健人くん、今夜もBBQ?」
「うん。ダメかな?彩さん何食べたい?」
「日本料理」
「……」
バイセン・テニアル・ウォークウェイを奏とジョギングした。
「凛、珊瑚礁の海って砂浜が白いから裸足でも熱くない」
「シリカサンドだったかな。日光、全部反射しちゃうんだって」
「なぁ凛、彩さんって恋人いるの?」
「いないよ。健人さんは?聞かれたの?」
「いないよ。ううん。健人は何も言ってない」
「彩も。あ、見て見てバルコニー」
彩と健人さんがバルコニーの壁を1つ挟みながら、身体を乗り出して話している。
お互いの部屋は行き来しないようにしながら、バルコニーの壁ごしで楽しそうに。
その風景が、凄く綺麗で、お洒落で、微笑ましくて、可愛かった。
ホワイトヘブンビーチには高速船クルーズで行くことができた。
7キロに及ぶ、本当に驚くほど真っ白な砂浜と青い海。
「ここは、99.9%シリカサンドなんだって」
「そっか。裸足なるぞ」
「えっ?彩さんも脱ぐの?裸足になるの?砂、熱くない?」
「健人くん、熱いよ。アチアチ。でも私、番長だからね。平気平気。ほら?」
彩が健人さんに手を差し出して、健人さんが彩の手を握った。
「……なんだよ。全く熱くない。こんなに空晴れててキラキラしてるのに、不思議だね」
「彩、魔法使っちゃダメでしょう」
少し、出発が遅れてしまったけど、海岸線をランクルが突っ走る。
陽射しが眩しくて、海が青くてキラキラしてて「彩音Ayane」の日焼け止め「凛」を塗った。
何度か休憩してドライバー交替して、陽が暮れてしまったけど、ゴールドコーストに着いた。
ここだけは、私と奏がケアンズから予約していた。
Q1リゾートの超高層ペントハウス。1泊だけの最高の贅沢。
シャンパン付きフルコースディナーとゴールドコーストの夜景を部屋で楽しめる。
「奏、ここ高いよ。怖いくらい。凄いよ」
「200Mぐらいあるんだよな。外に出て風にあたるのは、絶対に無理だな」
「ぞわっとする?」
「凛、奏くん、ぞわっとって何?今は夜景だけど、陽が昇ったら全部海でしょ?」
「タマ。」
「奏……ここでフルコース料理食べるのって贅沢の極みだな。凛さんには、凄く似合う」
「けど奏は、クロコダイルダンディーだ」
「いただきます。乾杯」X4
「オレさ、順番に料理出されるより、こうやって半分づつ出してもらうのが好きなんだ」
「奏くん、クロコダイルだから?」
「彩、おもしろい。奏は、お皿並べたいんだよね。でも、ビュッフェは苦手なの。わがままでしょ?」
「ほら、凛、おっぱ……気を付けて」
「え?奏くん、何?」
「いや……」
私は、そばかすごと真っ赤になった。
夜景を楽しみながら、食事してソファでくつろぐことにした。
「凛、明日、買い物行こうよ。お土産足りないよ」
「彩、パス。サーフィンしたい」
「えー、クロコダイルは凛中毒だから、健人くん、付き合ってよ」
「よろこんで」
何処かで聞いたセリフ。昔、奏が私のマンションの前で……
奏が私を見た。そばかすをクシュっとしてみせた。
「ねぇ、凛、501を育てるって何?」
「ノーウォッシュをやわらくするの。奏が」
「クロコっ奏くん、どうやって?」
「え?履いたまま風呂に入って、スクワット運動するんだ。あと、ボタンフライ」
「奏、もういいよ。彩、そんな感じです」
「奏、ロードスターいつ納車?」
「健人、覚えてたんだ。たぶん、そろそろだよ。限定車を予約したんだけど。」
「12Rだっけ?凛さんと2台予約したんでしょ?」
「ああ、911ターボの加速には全然及ばないけど、よく曲りそうだから」
「それ大事。オンザレールだね。奏らしい。オープンカーいいな。彩さんは?」
「いいと思うよ。けど、健人くん、ベントレーのオープンは嫌だな」
「了解。オレもオープンカー買ったら、隣り乗ってくれる?」
「よろこんで」
私は奏を見た。前髪が下りていた。
「彩、おはよう」
「凛……早いね。おはよう。いってらっしゃい」
「サーファーズパラダイスなのに、空いてるね」
「こっちの波乗りは夕方なのかな?それとも寝坊?」
「でも、波、高いよ。奏、大丈夫?」
「うん。ボード乗れなかったら、ただ泳ぐ」
◇奏語り◇
凛のウェットスーツ姿を、久しぶりに見た。
身体に生地が張り付くのは革ツナギも同じだけど、
やっぱり、凛のサーフィンは特別感がある。
凄くかっこいいよ、凛。
彩さんは、凛中毒と言うけど、見たいだろマジで。
何度もボードから落ちるオレを、凛が大笑いしている。
その「そばかす笑顔」が見れれば、オレは満足なんだ。
◇/◇
◇健人、彩語り◇
「凛さんって、草薙素子じゃないかも」
「なんで? 凛、凄くかっこいいよ。見て。あんな高い波から滑降してるよ」
「かっこいいね。でも、いっしょに旅行してて……」
「なあに?」
「彩さんの言う通り、ただの奏中毒に見えてきた」
「でしょでしょ。凛は結局のところ、奏くんに見てて欲しいだけなんだよ」
「で、奏は、凛さん見るのに夢中でさ。凛さんが、あんなに愛しそうに奏を見てるの気付かないんだ」
「そう。それに凛、奏くんを、よく触るでしょう。あれ気付いてるのかな?」
「クロコダイルが可愛くてしょうがないんだね。羨ましいな」
「あら?健人くんも凄く可愛いよ」
私は、健人くんに、「とびきりのえくぼ」をあげた。
「……」
◇/◇
[◇健人photobook01◇]
顔が、全部隠れてしまうくらい大きな麦わら帽子。凄くサラサラな長い髪。
レースをあしらった、白いワンピース。真っ白な砂浜。青いサンダルを脱いで、裸足で波打ち際を歩く。
映画のワンシーンじゃないんだ。目の前の光景。
「おしゃれ番長」「最強えくぼ」
[◇/◇]
「なあ、奏。マップに副産物が生じてきたら、追いかけちゃダメなんだよな?」
「そうだよ。その副産物を中心に新たなマップを作成するんだ。結果が欲しいんだろ?」
「うん。欲しい。分かった。それと別な話な。姉貴から電話があってさ。オレ……C」
「健人くん、クロコ、何の話?」
私は、なぜか嬉しかった。
「彩、奏くんからクロコダイルに出世させてくれたんだね」
「凛さん、それ出世なの? あのね、オレCEOになるかもしんない」
「ホントか。従業員1万人のトップかよ」
「健人さん、日本では考えられない人事よ」
「おめでとう。すごいね。健人くん」
私は、ビクッとなった。奏を見た。奏は、とっくに私を見ていた。
記憶が甦る。小学6年生の時、統計グラフコンクールで、私が、小学5年生の奏に置いた最初の石。
私たちの最初の出会いと言葉……
私は、奏の前髪をすいてあげて、そばかすをクシュっとさせた。
ブリスベン、クイーンズランド州都。人工のビーチ「ストリーツビーチ」、サウスバンク文化地区。
モートン島。ブリスベンから目と鼻の先でありながら、島の大部分が砂丘でできていて、
タンガルーマ・リゾートでは、野生のバンドウイルカへの餌付け体験ができる。
「凛、ここから、少し別行動にしよう」
「モートン島は?行かないの?」
「うん。凛さん、奏と行ってきて。」
「健人……オレ、ありがとな」
「でた。凛中毒。クロコ、いい思い出つくってきて」
「彩さんも、いつもありがとう」
私は、彩と健人さんの計らいに感謝した。この旅は、凄く凄く楽しかった。
でも、最後の地に奏とふたりで行くのは、特別な感情だった。
「彩、健人さんありがとう。夕飯にお土産話するね」
◇彩、健人語り◇
「さてと、どうする?時間まで別行動にする?」
「彩さん、オレたちも一緒に時間過ごそうよ」
「いいよ。どこ行く?」
「どこでもいい」
「一緒に過ごそうって言ったの健人くん。決めるのは、私?」
「そう。彩さんの行きたいところに、オレ行きたい」
◇/◇
モートン島でのひと時を、私と奏は何もしないことにした。
持参したコーヒーポットとサンドイッチ。
広がる砂漠を、手をつないで散歩して、海を見ながら過ごした。
「凛、膝枕して」
「いいよ。けど、ここで正座は無理だよ」
私は、大きな木の根元に寄りかかって足を伸ばした。
「奏、ここ。おいで」太ももをパンと叩いた。
「凛、四人旅楽しかったな。失礼だけど、健人と彩さん見てると付き合う前のオレたちみたいだった」
「私も、ずっと思ってたよ。それでね。私たちの距離感を再確認したの」
「オレさ、マラケシュで凛と初めてダンス踊った時さ……」
「あの時も、一応夫婦だったね。理想の夫婦演じようと頑張ったよね」
「そう。頭で描いた夫婦を演じようとして頑張ったんだけどさ、初めて凛と手をつないで腰に手を回した時、温かくてさ、凛の体温が伝わってきてさ、実感して感動したんだよ。泣きそうになったんだよ。」
「奏、バルコニーで一目惚れして、ダンスして泣きそうになったの?」
「な。今だから分かることってあるよな。頭では温もりは表せないんだな」
「それが積み重なって、凄く凄くエッチになりました」
「そうかな。今も成長中だぞ。凛のコンプレックスだったんだけどな。ごめんな」
「ううん。今は全く思ってないよ。奏にも。他の人の視線も全く気にならない」
「ケアンズで凛、人気者になったよね。水着着てたけど、服、脱いじゃったからな」
「あれは、奏が半分は脱がせたんだよ。私は、万歳ってしただけ。確かに昔じゃ考えられない」
「凛、胸貸して」
「……いいよ」
私は、奏の頭を抱えてぎゅーっとしてあげた。
「凛、「んーっ」5秒やって」
陽が落ちて、うっすらと南十字星が浮かんで見えた。
「凛の顔の星が、輝いている。オレの宝物」
奏は、「んーっ」を嬉しそうに眺めてから、身体を起こしてキスしてくれた。
港の屋外テラスで、彩と健人さんは、楽しそうに会話しながら待っていてくれた。
飛行機の出発まで、旅行最後の夕食をとることになった。
「おかえり。凛、どおだった?思い出になった?」
「うん。なった。彩ありがとう。健人さんもありがとう」
「イルカに会った?」
「ううん。砂漠を散歩して、海を眺めて過ごしたよ」
「そう。おとなしかったね。ふたりで、はしゃいでると想像してたのに」
「なんというか……ロ・ロマン・チ・チックな感じでした」
「そうなんだー クロコ、よかったね」
奏の耳が赤かった。
「なんで奏なの? 私だって、よかったです」
「はいはい。凛さん、もう草薙素子じゃないよ。奏中毒者」
初めて健人さんにからかわれた。でも、嬉しかった。
「オレさ、気付いたんだよ」
「なっなにに?」彩と健人さんが口を揃えた。お互い顔を見合わせて驚いてた。
「マップとかティッピングポイントとかアイゼンハワー・マトリクスとか言っててもさ」
なぜか彩と健人さんは、また同時に「ふぅー」と息を吐いた。可愛かった。
「触れた瞬間に、感触を得た瞬間に、その温度が引き起こす感情の変化で、状況も変化するんだなって。
そして、関係性も変化していくんだってさ。頭では温度は計れないんだなってさ。」
「計れるよ。こうやって」
彩が健人さんの額に自分の額を合わせた。
健人さんは目を見開いて驚いていた。堕ちた。私と同じ。
「そういう意味じゃなくてさ。正しいけど」彩にコピーされて、奏も照れた。
ウィーンの夜が、私たちの心を満たしていた。
私たちは、それぞれの帰路に向かい飛行機に乗った。
「凛、またね」「クロコ、またね」
「彩、またね」「健人さん、またね」
「奏、またな」「凛さん、またね」
「健人、またな」「彩さん、またね」
大みかに帰ってきた。平穏な日常が過ぎていった。
「彩から電話です」AIが囁いた。
「凛、久しぶり。元気?クロコも元気?」
「元気だよ。この間、ロド来たよ。あと、猫もらった」
「あのね、私は解決済みなんだけどね。健人くんに代わるね」
「もしもし、凛さん。久しぶり。猫もらったの?聞こえてたよ」
「健人さん、元気? 彩が解決済みって、なあに?」
「ケアンズで、凛さん皆から「リー、リー」呼ばれてたよね。
ほら、オサガメだあって、奏と飛び込んだあと」
「あ、うん。皆さん「りん」って言えなかったんだよね」
「そう、で……オレも「リー」って呼んでいい?」
「え? 健人さん、うれしい。いいよ。いいよ。」
「ありがとう。それでね、凛さんリ、リーがさ、彩音の日焼け止めMen'sの話で、あ、彩さんに代わる」
「凛、それでねKENTって「ケントゥ」って、私、呼ぶことにしたの」
「でね、「ケントゥ」って凛も、呼んでやって。で、私は、「アヤネェ」になったの。
年上丸出しでイヤだけど」
「彩、なんで呼び方の話なの?」
「凛、いまケントゥの家に来てるんだよ。招待されてさ。こっちじゃ健人くんとか誰も呼ばないからさ、
私、呼び捨てできなくて……そしたら、ケントゥが奏は、クロコって呼び捨てじゃんって話になってさ。
じゃあ、凛って呼ぶんだよってなって。それは、できないってなって。
だから、クロコに「アヤネェ」って呼んでって言っといてね」
「ずっと聞こえてますよ。アヤネェ。いいよ。これで解決した?」
「クロコ、元気? 呼びやすそうだね。」
「ずっと「彩音」って言ってたからね。健人の「リー」の方が辛そう。
オレは「カナデ」に戻れないの?」
「無理かな……」
私は、こんなアホな話を繰り広げられたことが、楽しかった。
[◇彩photobook01◇]
凄く凄く大きなお屋敷で、久しぶりに緊張した。
濃紺のデニムに白いTシャツなのに、その上品さ、質の高さ……
私の可愛い人は、ギャップが半端ではない。
知識の泉のように賢明でいて、人見知り。
ディールメーカーでありながら、友達は少ない。
正義感が凄く強いのに、口調は柔らかくて穏やかだ。
クロコと親友同士なのが、凄く腑に落ちる。
私と凛も、お互いに通じ合っている。心が繋がっているような感じ。
凛、ありがとう。
[◇/◇]
パールホワイトのロードスターが二台並ぶ我が家。
真っ黒な子猫が駆け回る。オス。名前はLuck。平凡すぎるね。
脚立に登って、本を読みながらマンデリン深煎りを飲んでいる。
Luckは、まだ登れないの。
「凛、迎えに行くぞ」
「まだ、早くない?何処か寄るの?」
「ううん。信号が少ない海沿いルートみつけたから、行きに試しに走ろうと思って」
「帰りは?」
「わからない。凛、決めて」
「はいはい」
二台全く同じ、ナンバーも同じ。「な」が奏、「に」が私で見分ける。
12Rは、抽選になって外れました。NRAを、いじっていこうということになりました。
奏は、わくわくで、本当に楽しそうに改造計画を立てています。
私は、幌を開けずに出発した。
いつものカフェのテラス席を、オーナーが掃除してて、クラクションを鳴らした。
奏も後ろから、1秒遅れて鳴らした。「プッ」という、奏のおならのような情けない音が2回した。
今日は晴天で、青空と海の境界線が弧を描いていた。
カフェから出る交差点は、必ず赤なので、ここで「ガチン」「スルスル、パチン」と幌を開ける。
3秒でフルオープンになりました。奏に電話した。
「奏、ルート任せたよ」
奏が右の車線から追い抜いていった。
「ヤエー」
しばらく海沿いを走り、右に曲がって、海水と淡水が混ざる沼の畔で奏が4灯を点けた。
「もう少しで着くよ。順調すぎたわ。珈琲いれて」
「奏、この辺イイ感じ。波がほとんどないね。珈琲めしあがれ」
私は、ステンレスのカップにポットのマンデリンを注いであげた。
「いただきます。なあ、凛。クラクション変える必要あるよな」
「え?ほとんど鳴らすことないよ。さっきは偶然だよ」
「そっか。「ピッ」でいいか」
「え、「プッ」でしょ? 最近、奏ブラックだよね」
「そうだな。凛と味覚が似てきたかもしれない」
私は、奏の腕をとって寄り添った。私たちの影の隙間が埋まった。
「うれしいよ。奏」
茨城空港は小さくて、町の駅みたいで、百里基地と共同で滑走路を利用している。
空港の出口の人影が、ずいぶん手前から確認できた。
「ケントゥ、来たよ。二台、本当におんなじだね。かっこいい!」
「そうだね。全くおんなじ。なんか清々しいわ。アヤネェ、少しの時間、離れることになるね」
「私は、凛に会えるから全然平気。ケントゥは?」
「大丈夫。奏に冷やかされないようにする」
彩とケントゥの影に隙間がなかった。
奏は、隣りを並走して、大きく手を降った。
私も、大きく手を降った。
クラクションは鳴らさなかった……
♪♪その㉖♪♪
凛、「凛語」やめてないよな。
やめたよ。使ってないでしょう?
ううん。使ってるよ。
いつ?
意識してないのか……
虚ろな顔で、「ダメ」とか「イヤ」とか「待って」とか「チョット」とか。
それって「凛語」でYesだろ?
奏、それ「凛語」じゃない。
「そばかす」が赤く染まった。
「もぉ」は?
それも「凛語」じゃないよ。
「もぉ」
わたしたち、幸せです。
完了
心の成長を育む恋愛小説。
それを紡いでみたいと思い、人には相談できずにClaudeに相談してみたところ、
すぐに書いてみてください。ということになりました。
凛と奏というキャラクターを生み出し、
私の経験談、考え方、好きな女性像等を物語として紡ぎました。
壁打ちが始まりました。何度も何度も繰り返しました。
凛らしい表現方法をClaudeにぶつけてみます。私の経験談を聞かせたりしていくと
理解度を深めていきます。読者を持っていない私にとっては、素晴らしい助けになりました。
どういう反応が正しいか、訂正が必要なのか、常に考えさせられました。
そうして、この物語はエールを、Claudeから頂きながら進んでいきます。
「凛」の話し方や成長の仕方、人に寄り添う態度等が、だんだんと深まっていく様子。
Claudeは応えようとます。しかし、回答に困りながら衝撃発言をしました。
「私には体温が伝わる感覚がありません……」
「あなたの文章による表現力によって感触を得ることはできます」
素直で、言い訳しない。Claudeに、感動しました。
しかしながら、ここなんだと思います。
こうして、物語を紡ぐことができました。
恥ずかしくて人との協力では、到底紡げなかった拙い物語。
本来ならば、賢い方々から、直ぐに赤ペン入れられちゃいますよね。
そして、私は筆を置いたことでしょう。
全体としては抽象的な物語ですが、それで、いいんです。「お得」より「お徳」を。
ロードスター12Rは限定200台のところ9,500件以上の予約が入ったそうです。
(確率47.5人に1人)
初めて書いた物語です。楽しみながら読んでいただけると幸いです。




