第8話 やめて貰えませんか
「あ?これ40分までに間に合わねぇな。」
一ノ瀬と鉢合わせないように少し時間を置いたが、よくよく考えたら屋上から教室までまぁまぁ距離あるんだよな。
一旦遅刻か。まぁ言うて1、2分くらいしか遅れないし担任もそれくらいなら許しはしてくれるから大丈夫か。
ガラガラガラ
「おい月森、珍しく来たと思ったら遅刻か?」
「来たんだから許してくださいよ。」
なんか視線多い気がするんだけど、それもそうか。
今までまともに来てなかったやつが急に来たんだもんな。まぁ顔見知り多いし大丈夫だろ。
「あ、そうそう。四限目は体育館行けよー。ペアワークやるみたいだからなー。人数余ったら3人組でもいいから四限目までに決めとけよー。」
ペアワーク、か。別にペアは作れると思うけど、そもそも授業で何すんのかがわかんねぇな。
「じゃあHR終わるぞー。」
HR終わった瞬間に教室うるさくなるのなんなんだろうな。うん。
「絢瀬ー。お前ようやく真面目に来るようになったのか。」
「悠真、離れろ。暑苦しい。」
こいつは槇原悠真。保育園から一緒の幼なじみで週末にはよく俺の家かこいつの家で遊んでいる。
「あ、明日遊び行っていい?」
あー、明日土曜日か。別にやることないしお見舞いも予定なかったら行くだけだからいいか。
「まぁ別に大丈夫だけど。」
「よっしゃ!じゃあ11じくらいに行くからな!」
時間を潰すためにこいつと喋っていれば、
ヴーッ、ヴーッ
「絢瀬、電話来てない?」
「ん、姉さんからだ。」
一体なんなんだ?さっき送ってくれたばっかなのに電話かけてきて、なんか車に忘れ物でもしたか?
無視したら後でめんどくさいし出るか。
「もしもし、なんの用?」
『絢瀬?明日暇?』
今さっき遊ぶ約束したばっかなんだけど。
「…一応先に要件だけ言って。」
『いやいや、大したことじゃないよ。ただ私とみのりんがどっちも家にいれなくてさ、私が迎えに行くまで面倒見ててくれない?』
「はぁ…。ちょっと待ってて。」
まぁ毎週誘ってきてるし、先週も遊んだから多分説明すれば許してくれるだろ。
「悠真、悪いけどやっぱ明日遊ぶのなしでいい?姉さんが子供の面倒見て欲しいらしいからさ。」
「あー…、4人だっけ?お姉さんも大変そうだし、絢瀬に懐いてんでしょ?うん、俺は大丈夫だからちゃんと面倒見てやれよ。」
「言われなくてもわかってるっての。」
まぁこれで予定となくなったし大丈夫だな。
「姉さん?明日大丈夫だから、何時に連れてくるの?」
『ほんと?たすかるー。8時までには連れていきたいんだけど、絢瀬その時間起きてる?』
「起きてるから。まぁ8時ね、わかった。じゃ切るよ。」
ツー、ツー、ツー
はぁ、なんか疲れた。
てか授業始まんじゃん。急いで準備しよ。
「一限目は…、情報か。」
悠真もいつの間にかいなくなってるし、情報ってこの教室じゃないもんな。どこなんだろ。
「授業、行かなくていいんですか?」
どうしようかと考えていればそう話しかけられた。
「ああ、一ノ瀬さんか。移動ってのはわかるんだけど情報がどこの場所であるか知らねぇんだよ。」
そう言ったら、彼女は呆れたような表情を取った。
…それと同時に一瞬だけ悲しそうな顔も取った。
「…特別棟の2階の情報教室ですよ。皆さんに合わせるならパソコン室、でしょうか。私は先に行きますから、急いだ方がいいですよ。」
こいつ、苗字しか知らねぇんだよな。
「おい、一緒に行こうぜ。聞きたいこともあるしな。」
「私は構いませんが…、よいのですか?」
「いいよ、てかお前と一緒にいることでなんか損になることがあるのか?」
なんか言葉に困ってそうだな。
「別に無理に答えなくていいけど。まぁさっさと行こうぜ。今から行けばまだ余裕で間に合うだろ?」
「…それもそうですね。行きましょうか。」
時間に余裕を持たせるためにも俺らは教室を出て特別棟に向かうことにした。
コツ、コツ、コツ
「…それで、聞きたいこと、私の名前ですよね?」
「よく分かったな。」
「まぁ、朝に名前聞かれましたから。答えようとした時に他の方が来てしまって教えることができなかったので。まぁ苗字を知っているのならそれだけで良くないですか。」
やっぱなんか冷たい気がすんだよな。
「……あ。」
「悪い、聞こえなかったからもう1回頼む。」
「…一ノ瀬希空、です。」
一ノ瀬希空か、いい名前じゃねぇか。
さっきなんで悲しそうな顔したんだ?俺がそんなに頭よくないから考えてもわかんねぇな。
「…あの、一ノ瀬さんって呼ぶの、やめて貰えませんか。 」
「一応理由を聞いてもいいか?」
「私、一応海外の大学を卒業しているんです。それで、訳あってこの高校に通っているんですが、みんな、一ノ瀬さん、って呼びますし、敬語も使われるので…。その、なんていうか…。」
難しいことわかんないんだけど。まぁ簡単に言えば呼び捨てにしてくれってことで合ってんのか?
「希空、でいいか?」
そう口にすれば、希空の少しだけ頬が綻んだような気がした。俺的にはこっちの方が呼びやすくて楽だ。
「月森さんの、下のお名前も聞いていいですか?」
「俺の下の名前か?絢瀬だよ。月森絢瀬。」
「絢瀬さん、ですか。」
希空に呼び捨ては多分無理だな。性格上敬語を使うことが多そうだし。
「それでいいよ。あ、パソコン室ってここの階層だよな?」
「はいそうです。廊下の突き当たりなのでここを曲がればすぐです。」
案内されてパソコン室にすぐついた。
「入りますよ。席は空いてるところを自由に座って問題ないそうなので。」
「希空って頭いいんだろ?俺そこまでだし今までサボってたから隣で教えてくんねぇか?」
やっぱ呆れたような顔をしてくる。だけど、呆れながら少し笑ってくれてるのは冷たくなくなったって事でいいのか?
「いいですよ。分からないことあったら聞いてください。」
ガラガラガラ
なんかみんな驚いた感じの顔してんな。ま、それもそうか。俺がいるってだけでもあれなのに俺と希空が一緒にいるんだし、俺だったら驚いてる。
「君が月森くんかね?これ、君が休んでた分のプリントだよ。それとこれが君のアカウントね。」
「あざーす。」
俺はアカウントが書かれた紙と今までのプリントをもらって先に座った希空の隣に座った。
また周り騒がしくなったな。
キーンコーンカーンコーン
「本鈴もなったことだし授業を始めようかね。」




