第31話 なんとか言ってよ
「話ってなんだよ。」
「いや、海音が君が信用できると言いながらとある写真を見せてきてね。」
あー…、さっき思った通りかもな。
「なぜ希空に膝枕してるんだい?」
「希空が俺の膝に頭を置いてきたから。理由は普通にそれだけだな。」
「あ、陸斗、もしかして希空に膝枕したことないから嫉妬してんじゃ?」
「そんなわけないだろう。僕は希空に膝枕をするほど暇じゃないんだ。それに希空も本当なら、世界のために働いてもらわないといけなかったんだ。」
「その世界のためっての忘れたらどうなの?希空はほんとにその世界ってやつのために生きていたいって思ってると思うの?」
これ兄妹喧嘩か?盛り上がってそうだし俺帰っていいか?
「希空が産まれてちやほやされなくなったから嫉妬してるとしか私は思えないよ〜。」
「だから言っているだろう。僕は嫉妬なんて…。」
「してるから私言ってるんだけど。自分より才能を持ってる妹が出来たからって、自分ができないことを出来るからって、それを希空に押し付けるのは、お兄ちゃん失格だよ。」
兄失格、俺も生徒会長に対して言ったことあるけど、家族から言われるのは俺は嫌だな。生徒会長に人の心があるなら嫌がるだろ、知らねぇけど。
「陸斗、希空のこれからをどうするの。今まで通りその望まれてない考えを押し付けるの?それともちゃんと希空に希空の人生を歩ませるの?」
…海音さん、馬鹿だと思ってたけどちゃんと頭いいのか?
「僕は希空のためを…。」
「それがほんとに希空のためになってる?希空、絢星くんといる時はほんとに楽しそうだったよ。陸斗が本当のお兄ちゃんなのに、絢星くんの方がお兄ちゃんに見えた。」
「…。」
「はぁ、俺戻っていいか?」
「あ、忘れてた。」
呼んどいてこの扱いは流石にキレていいよな?
いや、めんどいだけだしやめとこ…。
「絢星くんさ、1ヶ月くらい希空のこと預かれる?」
「海音、何を言ってるんだ…?」
…あぁ、そういうことね。
「別に構わねぇよ。てか、好きなだけ置いとけ、食費さえくれりゃ面倒は見るから。」
「月森も何を…。」
こいつ希空の事を大切にしたい気持ちはよくわかったかもな。
言ってしまえば、言いなりの希空に依存していたわけで、依存していた相手が居なくなればある程度戻ってくるように考えを改めるかもしれない、ってところだと思うが。間違ってなければだが、ただその程度でこいつが考えを改めるとは思えないんだが。
「もし、希空を離したくないなら考えを改めて。お願いだから…、今の希空は苦しいだけだよ?」
「…。」
「なんとか言ってよ、陸斗。」
海音さんって、こんな顔できたんだな。
なんていうか、少し悲しそうな、そんな顔をしてる気がする。
「海音、僕は今まで間違えてないと思ってたんだ。僕にも希空には及ばないが、少しの才ならあると思ってた。だけど現実ってやつは残酷でね、目の前にある圧倒的な才能を見ると自分で何かをする気を無くしてしまうんだ。少しの才があると思っても、上がいるという事実は嫌だったんだろう。」
「だから…?」
「いいや、海音の言う通りかもしれない。僕は希空に嫉妬していたのかもしれない。僕には才なんて、少しもなかった。」
この2人、マジでなんなんだ?
…今なら生徒会長も変わろうとするか?
試すだけ試すか。
「それがなんだよ。生徒会長が寝ずに努力してるって、希空から俺は聞いてるが。だからいつも学年1位なんだろ?」
「努力しなきゃ、上に行けないからね。」
「努力できる時点でそれが才能だと俺は思うけどな。俺は努力なんて出来ねぇし。」
「そうか。」
めんどくせぇ兄妹だな、ほんとに。
「ねぇ陸斗、希空のこれからはどうするの。」
「…本人に、確認してきなよ。僕が決めることじゃない。もう、いいさ。希空に無理やりさせるのが違ったって、気づくのが遅すぎたんだ。兄失格でいい。」
「だって、希空。」
その一言で俺と生徒会長は固まってしまった。




