閑話 ~ オーディンの苦悩 ~
あれから幾日か過ぎた。
お店は毎日繁盛して、忙しい日々だった。
そして、獣人の子ども2人とオーディン連れて、マリアンヌはたまに市場に買い物に行く
材料の種類が増えて自宅でどうしても使いたい物が無い時や
魚など違う物も食べたいからだ。
周辺も衛兵さんがよくパトロールしてくれているらしく
平和だ。
オーディンさんはあれから毎日来てくれて
用心棒と子ども達の遊び相手になってくれていた。
「おやおや、仲がいいね~」
魚屋の奥さんが笑顔で声をかけてくれた
「私の新しい家族なんです。ロッタとキキです。よろしくお願いします。」
あちこちで顔を売る
何かあった時のため顔見知りになっておくのだ
あちこちで必要な物を買ってから家に帰ると
なぜかオーディンさんがそわそわしていた。
「オーディンさん、何かこの後予定でもあるんですか?
用事がある時はそちらを優先して下いね。」
「いや、大丈夫だ。予定などない。」
「さっきの人、僕たちのこと家族みたいって言ってたね。」
「うん、兄ちゃん。嬉しいね。」
獣人兄妹は耳も鼻も利く
小声のささやきも拾えるのだ。
兄妹の話声を聞いたオーディンは、難しい顔をしていた。
(何かひっかかる…。)
夕食を食べて、オーディンは帰っていった。
辺境伯の屋敷へ
「オーディンです。」
辺境伯の部屋の前
「おお、来たか。入れ」
「スチュアート様、マリアンヌ嬢の噂。流しましたね」
「なんのことだ?としらを切りたいところだが、もうバレたか
速いのう。マリアンヌは気づいてもおらんじゃろう。」
「どうして、こんなこと。いくら周辺から守るためとはいえ
彼女はまだ独身です!」
「じゃあ、聞くが。彼女に伴侶が現れたら、お前は祝福できるのか?」
考えたこともなかった。
そう、マリアンヌは自分は行き遅れで無価値という態度なのを毎日見るうちにそんなことはあり得ないと心がどこか安心していることにオーディンは気づいてしまった。
「しかし、私と噂になっては!マリアンヌ嬢に迷惑がかかります!」
「実家の事だな。」
「除籍されてるとはいえ、彼女は渡り人のスキル持ちです。
もし、バレれば結婚して当主にと呼び戻されるに決まっている。
あの家はもう、うんざりなんですよ。スチュアート様とてわかっているではないですか!」
「ああ、だが、お前はいつまで逃げ回るつもりだ?
マリアンヌを好いておるのはお前だけだと思っているのか?」
「…ほかに居るのですか?」
「認めたな。」
「ふざけないでいただきたい。大事な事でしょう。」
「製作所のセウス」
「え?…」
「紙を取り扱う店の当主だ。若いができる男だ。」
「でも、それなら尚更私が傍にいるなどと噂があれば
マリアンヌ嬢の婚期が遠のいてしまいます。」
「だから、お前はそれでいいのか?と聞いておるだろう。」
「…。」
「答えられぬなら、考えろ。お前の勢いで進める性格は嫌いじゃないが
今回のこの件でそれをすればお前は一生後悔する。
儂にはわかるぞ。オーディンよ。
まずは、想像力を持て。お前は現実しか見えておらん。
戦闘のように先を読め。」
「出直してまいります。」
「ああ、いつでも話を聞こう。」
「あ、スチュアート様 これをマリアンヌ嬢から預かってます。」
「おおー!酒だな!綺麗なビンじゃな。」
「強い酒ですので、量を加減してお召し上がりください。
水やお湯で割ってもいいと言っていました。」
「ああ、ありがとうと伝えてくれ。」
こうして、辺境伯様の屋敷を後にしたオーディンは河原のほとりで考え事をしていた。
もし、マリアンヌが他の男と一緒になったら
自分は祝福できるのか…
考えたくなかった。
彼女は自分が守りたいと思った。
ただ、ああやって外堀を埋められるのは好きじゃない…。
翌日の夜
辺境伯様のお屋敷へ行き
変に噂を流すのをやめてもらった。
きちんと告白するので!と宣言して。
「指輪くらい買って行けよ。花束と。あの娘はそれくらいしないと、まったく気づかんぞ」
「わ、わかっております!」
(手ぶらで行くところだった…危ない…)
冷や汗をかいたオーディンだった
しかし、百戦錬磨の古狸であるスチュアートは何も変わらなかった
噂も止めないしそのまま
マリアンヌを守ること
噂がいずれ本当になるなら順番なんてどうでもよかったのだ。
ぐずぐずしているオーディンの為、周りへの牽制も必要だったのだ。
オーディンだけが緊張しながら
アクセサリーのお店へ行き彼女への
指輪を探し、サイズがわからず困り果て
デザインだけ決めてサイズがわかったらまた来るように言われたのだった。
渡せるのはいつになるのか
それはまた別のお話




