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フェイドアウト断章  作者: 石藏拓(いしくらひらき)


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最近、国税庁を名乗るメールがやたら届くらしい。

最近、国税庁を名乗るメールがやたら届くらしい。


「未払い税金があります」

「差押え手続きを開始します」

「24時間以内に納付してください」


そんな言葉が並ぶ。


昔なら、こういう通知は封書で届いた。

茶色い大きな封筒で、見るだけで気が重くなるようなやつだ。


ところが今は、スマホに来る。


しかも妙にそれらしい。

国税庁。

e-Tax。

税務署。

それらの名前が並ぶと、人は一瞬だけ本当に信じてしまう。


考えてみれば、不思議な時代だ。


昔の詐欺師は、人通りの多い場所で声をかけた。

電話詐欺の時代になると、相手の肉声で不安を煽った。

そして今は、メール一本で人間を追い込む。


しかも「税金」という題材が絶妙だ。


税金に自信のある人は少ない。

「もしかして何か払っていなかったか」

そう思わせるだけで、相手の心は揺れる。


詐欺師は、人間の弱点をよく研究している。


特に日本人は、「迷惑をかけたくない」「早く解決したい」という心理が強い。

だから「至急」「最終通告」という言葉に弱い。


しかし、本物の国税庁は、いきなりメール一本で差押えを通告したりしない。


むしろ、本当に怖い通知ほど静かに届く。


変なリンクを押させることもない。

コンビニ決済を急がせることもない。

ギフトカードで払え、などと言う訳がない。


だが人は、疲れている夜ほど判断を間違える。


スマホを見ながら、

「あれ? 本当か?」

と思った瞬間が危ない。


現代の詐欺は、知識より疲労を狙っている。


だから結局、最後に身を守るのは、

「すぐ押さない」

その一呼吸なのだと思う。


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