第1話 被追放回数9回
「きゃああああ!!!」
女性の悲鳴が、ダンジョンの洞窟奥から響いてくるのが聞こえる。
ミナトは魔法の詠唱を止めると、剣の柄を握り声のする方へと駆け出した。
急げ。足を回せ。
洞窟の岩肌が、車窓から見える景色のように後ろへと流れていく。
「来ないで! やめて!」
ミナトの視界に映るのは、2体のオークに襲われる女性冒険者。正に今、オークの棍棒が振り下ろされようとしている。
まずい。やるしかない。
ミナトは背中から剣を抜くと、オークに接近しそれを振り下ろした。
「ザン・スラッシュ!!」
「ゴアアッ!」
ミナトの剣技とオークの悲痛な叫びが、同時に響き渡る。
「オウ!オウ!!」
もう一体のオークは、ミナトの突然の登場に狼狽えているようだ。その隙を見逃さず、ミナトは横一閃に剣を薙ぐ。
「ナギ・ホリゾンタル!!」
「ボガッ!」
瞬時に斬り伏せられた2体のオークは、電池が切れたようにその場に倒れた。
「ふう」
ミナトは一息付くと、そばに倒れ込んでいた女性冒険者に目を向ける。
最初に支給される皮鎧に、店で一番安かった剣。盾はまだ大きくて立派だが、それにしても新米冒険者の様相をしている。その盾を見るにタンクだろう。
「あ、あの……ありがとうございます。私、死んじゃうかと……」
「……ああ」
女性冒険者は潤んだ瞳で、震えながら自分自身を抱きしめていた。
しかし不可解なことが一つ。こいつまさか。
「あんた、もしかして一人か?」
ミナトの問いに、その女性冒険者は肩を震わせた。
「は、はい」
……やっぱり。
「お前、アホなのか?」
「へ……?」
タンクは仲間を守るジョブだろう。守る仲間がいなくてどうする。チュートリアルはしてこなかったのか?
そう言いかけて、やめる。ミナトは、この世界にそんな優しいものが存在しないということを、すでに自身の経験で痛感していた。
ミナトは、ため息をつく。
「……町に戻ったらパーティを組めよ。話はそれからだ」
全く。なんてアホに出会ってしまったのだ。
しかし、ミナトはそこまで悲観していなかった。理由は、恐らくこの後すぐに起きるであろうアレのおかげだ。
「おい!!」
……噂をすれば。
後ろから、こちらに近づいてくる足音が聞こえてきた。
ミナトは、その声に振り向く。
「なんだよ?」
そこには、同じく新米のソルジャーにタンク、ヒーラーが並んでいた。
そう。ミナトが所属するパーティである。
「勝手な行動するな! 何度も言ってるだろう!!」
「そうです、困りますよ」
「リーダーの言うこと聞けないんなら分かってるよな?」
ミナトのパーティの3人は、揃いも揃ってミナトを揶揄していた。そしてミナトは、パーティの奴らに見えないよう下を向くと、密かに口角を上げる。
……今だ。今がベストだ。
ミナトは確信すると、出来得る限り邪悪な笑みを浮かべようとしながら、3人を睨みつけた。
「うるっせえ!! バーーカ!!!」
「……は?」
言った。言ってやった。
パーティの3人は、何が起きたのかと一瞬ポカンとしたが、すぐに表情を歪ませた。
来るぞ、俺の願う言葉が。
「お前……! 追放だっ!!」
パーティのリーダーは、すぐさま自身の冒険者カードを取り出すと、何やら操作をし始めた。そしてその直後、ミナトの胸ポケットに仕舞っていた冒険者カードが震える。
ミナトがそれを取り出すと、カードにはミナトの望んだ2文字が並んでいた。
——追放。
「もうお前とはやってられねえ。じゃあな!!」
「さようなら」
「クソ野郎が!!」
パーティの3人——いや、元パーティの3人は、踵を返し遠くへと歩いていった。
——被追放回数10回に到達。レベルが10に上がります。——
脳内に流れるアナウンス。それが終わると、体に刻まれていた擦り傷が治り始めた。感じていた疲労も、それまでが嘘だったかのように霧散していく。心なしか、力も漲ってくるようだ。
ああ、いつも通りだな。……全く。何なんだこのスキルは。
ミナトは自身の馬鹿馬鹿しいスキルに吐き捨てながら、それを授かった時のことを思い出していた。
初めまして、まるたと申します。今作で、初めての小説家になろう投稿となります。「リアリティのある非日常を」をコンセプトに日々執筆しております。
楽しんでいただけたら幸いです!




