表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/34

希望

小学校の道徳で、先生は言った。

「みなさん、希望を持って生きましょう。希望は人生の光です」


僕はノートに「希望=光」と書いた。

隣のタカシは「光? 蛍光灯じゃん」と笑った。

その時は「なるほど」と思った。まだ笑えた。


中学では「希望校」、高校では「希望進路」、就職では「希望職種・希望給与」。

希望の言葉はすべて書類に置き換えられ、現実の光はどこにもなかった。

面接官に「希望は?」と聞かれた時は、「いつか会社を背負って立つ立場になりたいです」と答えたものだが、面接官の苦笑は今でも覚えている。

あれから数年、まじめに働いてきた僕は、希望を持った新入社員達に「非常口はこちらです」と案内する立場に変わっただけだった。


ある夜、コンビニで弁当を温めながらふと思った。

希望は人生の光じゃない。

ただ、チカチカする蛍光灯を見ながら「俺の希望ってあんなものか…」と思うだけだ。

チラつき具合は、人生の滑稽さにぴったり合っている。


レジ横の揚げ物コーナーでは、揚げたての唐揚げが湯気を上げていた。

香りにつられて手を伸ばすと、唐揚げはスルリと網から落ち、まるで俺の希望もつまずいたかのようだった。

「ああ、俺の希望って、こんなにも小さくて脆いのか」と唇を噛み締めた瞬間、電子レンジから「チン!」という音がして、現実は温め直されるだけだと気づく。


隣の冷蔵ケースでは、アイスクリームが棚の隙間に押し込まれ、誰も取らないまま固まっていた。

希望も、こんな風に冷凍保存されるだけで、賞味期限が過ぎるのを待っているのかもしれない。


帰り道、足元の段差に躓きながら、ふと思った。

「蛍光灯でもいいじゃないか、あれくらいの希望でもないよりはましさ」

俺に合わせた希望を持って歩いていこう。


暗くなった夜道を急いで帰ろうとした時、道路脇の外灯が消えそうで消えない光を灯していた。

その一瞬、僕は少しだけ希望を持った気がした。

そして、まるでそれを知っていたかのように、外灯は「パチッ」と消えた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ