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花とたゆとう ふたたび  作者: 御通由人
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第76章

 部屋に戻ると、今度はソファーに腰掛けて、花蓮は話し始めた。

「そのあと、彼女はおじさんの体の上で泣き出しました。

 初めて女の悦びを知ったのが嬉しくて。長い呪縛から突然呆気なく解放されたのにびっくりして。信じられなくて。恋人でなくお客さんにイカされたことがくやしくて。……なんか説明出来ない複雑な気持ちでした。

 彼女はどうしてイッタのか考えました。

 おじさんは遠い所から、魔法の箒に乗って、ビューと空を飛んで会いに来てくれたのでした。そんなにまでして自分に会いに来てくれた人は初めてです。それできっと感激したのでしょう。

 また、彼女は父親の愛に飢えていたので、父親くらいの年齢のおじさんに惹かれたのかもしれません。

 それに、いかにも遊び人のお客さんには警戒するのだけど、おじさんはへたくそだったので、油断していたのかもしれません。

 しかし、本当はおじさんが自分のことをすっごく愛してくれていると感じたからです。

 これまでの男の人とおじさんは違っていました。 

 おじさんは彼女の身体をまるで宝物にでも触れるように大切に大切に愛してくれました。

 割れた欠片をくっつけて壺を復元するように、おじさんの強い愛がひび割れていた彼女の心をくっつけてくれたのでした。

 しかし、おじさんはやさしいのか冷たいのか分からない人でした。連絡先を聞こうと必死になるお客さんもいるのに、名刺をあげると言っても、LINEを交換しようと言っても、おじさんは「いらない、しない」と言いました。

 「遊びの場だということは心得ているから」そんな冷たいこともよく言いました。そんな時、彼女はいつも悲しくなりました」

 花連の思いを初めて知り、正夫は驚き、心外だった。 

 いや、それは違う、誤解だ、と口を挟もうとしたが、言葉が出なかった。

 花連は話し続けた。

「その後、困ったことが起きたのです。他のお客さんに触られても感じるようになったのです。彼女は焦りました。こんなに感じていたのでは、もうこのお仕事は続けられない。

 お店を休み、火照った身体を沈めようと、スイミングに行って、朝から晩まで泳ぎました。

 それから、彼女は他の客には絶対に感じまいと誓いました。月に一回だけ来てくれるあのおじさん以外には絶対に感じまい、歯を食いしばって我慢しようと誓いました。

 しかし、おじさんはそんな彼女の気持ちも知らず、彼女の親友と平気で浮気をする悪いやつでした。

 彼女は悩みました。あんなおやじのことなんか忘れてやろうと思いました。 

 しかし、それは出来ませんでした。どうして出来ないのか、彼女の親友が不幸な死に方をした時、初めて分かりました。

 それは、あのおじさんが魔法使いだったからです」

「ま、魔法使い。どうして僕が魔法使いなんだ。無茶苦茶な話の展開だな」

「もう少しで終わりだから、黙って聞いていて。……それで彼女はすべて理解しました。

 その後、しばらくして彼女は結婚することになりました。

 その前に、彼女は魔法使いのおじさんに抱いてくれるように頼みました。

 おじさんはエッチなので、喜んで抱いてくれました。

 その時再び奇跡が起こったのです。

 時が逆戻りし、嫌な過去は全て消え去り、なんということでしょう!彼女は処女に、きれいな身体に戻っているではありませんか。もう、これで何も心配はありません。立派なお嫁さんになることが出来ます。

 それから、おじさんは小さな瓶を一つくれました。

「実はわしはレンゲの精なのじゃ。この瓶の中にはレンゲの雫が入っている。苦しい時にはこの雫を飲みなさい。苦痛をやわらげてくれるであろう」

 そう言うと、おじさんは魔法の箒に跨り、遠い空のかなたに消えてゆきました。

「おじさん、ありがとう」

 その後、彼女は村の若者と結婚して、幸せになりました。……おしまい」

 

 花連は立ち上がると、「ご静聴ありがとうございました」と言いながら、両手を身体の前で合わし、ピョコンと頭を下げた。

「どう、面白かった?」

 正夫は数回手を叩いた。

「うん。なんかボロカスにけなされたような気はするけど、彼女のことが分かったのはよかった。……レンゲ草の花言葉を知っていたんだ?」

「うん、調べてみたの。ああ、なんかスッキリした。じゃあ、私、先にお風呂に入ってくるね」

「あ、一緒に入るんじゃないの?」

「乙女はそんなことはしません。覗かないでくださいね」

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