第45章
「すいません。花蓮さんは急病で、今日はお休みなんです」
店に入ると、先週と同じように店長が飛んで来て、平身低頭謝った。
「いや、分かってる。今日は美鈴さんを指名したいんだけど」
そう言うと、店長は一瞬驚いたような顔をし、それからなぜか浮かない表情になり、いつもの威勢のいい掛け声ではなく、事務的な口調で「承知しました」と頷いた。
部屋に入ると、美鈴は銀色のビキニの水着姿で待っていた。
自分で水着にしてねと言っただけあって、スタイルに自信があるのだろう。高身長で足が長く、ウエストがキュッとくびれていて、まるで雑誌のグラビアやテレビのCMに出てくるモデルのように見えた。
正夫は感嘆の溜息をつきながら見惚れた。
と、美鈴がいきなり抱きつき、唇を押しつけてきた。彼は驚いた。
「先にシャワーを浴びなくていいのですか?」
唇が離れた後、彼は尋ねた。
「そんなの、いいわよ。川村さんが病気を持っているはずがないもの。あんな薬品だか石鹸だか分からないようなもので身体を洗って、匂いがなくなるより、汗の匂いや体臭がある方が私は燃えるの。川村さんが嫌なら、シャワーを浴びてもいいけど、さっき一緒に来たから分かるでしょ。今日、私は誰の相手もしていないから、綺麗なものよ」
「じゃあ、僕もいいよ。君に合わせるよ」
美鈴は指や舌が触れる度に声を出した。ほとんど声を発さない花蓮とは対照的だった。
時折、大きな声を上げて、周りに聞こえるのではないかと正夫を狼狽させた。
「私の方が花蓮より上手だったでしょ?私もとても気持ち良かったわ。花蓮に飽きた時は、時々私の相手もしてね。私なら店外デートもOKよ。その時の気分次第で本番もさせてあげるかも」
分かれる時、彼女はそう言って、ドキリとするような淫らな笑みを浮かべた。
翌朝、花蓮からメールが届いた。今朝になってだいぶ熱が下がった。きのうは本当に本当にごめんなさい、という内容だった。
月曜も火曜も本調子ではないようで、彼女は店を休んでいた。
水曜になって、「やっと元気になりました。明日からまた店に出ます。この前のおわびをしたいので、来られる日を連絡してくれたら、いつでも出勤します。日曜の方がご都合がいいなら、日曜でも大丈夫です」というメールが送られて来た。
時間の都合はつくが、そう何度も行けるほど金の都合がつかない。
「無理しなくていいよ。また十月末に行くから」と正夫は返信した。
が、その翌日から、花蓮からの連絡が途絶えた。
「久しぶりに店に出て疲れていないかい?」「体調はもう良くなりましたか?」「無理しないでくださいね」などと何度かメールを送ったが、彼女からの返信は一切なかった。




