第37章 八月
花蓮からお盆に友達とインドネシアに旅行に行くとのメールがあった。
正夫はイイねと絵文字を返した。
稼いだお金を借金の返済や家族のためだけに使うのではなく、自分のために使うことには大賛成だった。
女の友達と三人で行くらしい。
「気をつけていってらっしゃい。不良外人に引っかからないように」+ウインクの絵文字。
「大丈夫。変なことをしてくる奴がいたら、パンチして、あそこをキックしてやるから」+グーの絵文字。
「おみやげ買ってきますね」+ハートマーク。
「今から出発します」というメールが来た後、花蓮から連絡はなかった。
毎日来るのを楽しみにしていたメールが来ないのは、ひどく淋しい。
たまにピィンと甲高い着信音が鳴ると、もしやと思い、慌てて携帯を手に取る。だが、来たのは営業メールか迷惑メールだけだった。
五日後に、花蓮からメールが来た。
「ただ今、帰りました」
わずかな日にちだったが、正夫にはようやくという感じがした。
「おかえりなさい。帰ってくるのを首を長くして待っていました。待ち続けて、ろくろ首になりそうでした」
すぐに返信が来た。
「ろくろ首笑。大げさです。たった五日間ですよ」
続いて、写真が送られてきた。
「今度お店に来る時、いっぱいお話聞いてくださいね」
写真は友達とレストランで食事をしているものとプールに入っているものだった。
友達と一緒にいる花蓮を見たのは初めてだった。
写真の中の彼女はちょうど正夫の娘と同じような屈託のない笑顔をしていた。
「うん、もちろん」と彼は画面に向かって頷いた。




