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86 被告尋問

「それでコトミさん」

「ふぇ?」

「お姉ちゃんが瀕死の重症を負っていたのに、なんで今はこんなに元気なんですか?」


 アウルがワタワタと瀕死じゃないよ、と弁明しているけど、ルチアちゃんにはお見通しのようだね……。


「あー、そうだね、説明しようか。っと、その前に……アウルは何も説明していないの?」


 あ、ルチアちゃんがアウルを睨んでいる。


「お姉ちゃん。何か隠し事?」

「え、いや、そんな、隠し事なんて、そんな……」


 バレバレやんか……。はぁ、仕方がない。


「ルチアちゃん。そんなにアウルに詰め寄らないであげて。私から説明するよ」

「……ごめんなさい。つい……」


 申し訳なさそうにうつむくルチアちゃん。


「お姉ちゃん想いなんだね。ちゃんと説明するから、ね」


 うなずくルチアちゃんとアウルにリンちゃん、三人に目配せして説明を始める。


「まずは私のことから話そうか。ルチアちゃんは魔法って知っている?」

「それは……もちろん、空想物語やお伽噺(とぎばなし)でよく見るやつですよね」

「そう、一般的にはその認識だけどね。私はその魔法を使えるの」

「……はい?」


 何言ってんだコイツって顔しないで……。

 前にも似たような反応されたことあったな。


「うーん、論より証拠、これを見て」


 目の前に持って来た指先に火を灯す。


「おぉ……手品、じゃないですよね。こんな時に冗談言うわけがないですし」

「うん、この通り魔法が使えるの。だから多少の怪我は治癒魔法で治せるんだけどね」

「あぁ、だからお姉ちゃんのあのシミ……ってことはやっぱりそれなりの怪我をしていたんじゃないですか」


 うっ……。


「はぁ、でも納得しました。さっきも今も、血まみれになっていたということは……」


 うっ、ヤバい。

 また、ルチアちゃんの逆鱗(げきりん)に触れてしまったか……。

 一回は私のせいだしな。


「ありがとうございます」


 ……えっ?


「お姉ちゃんを助けてくれたんですよね。その魔法で。わたしからもあらためてお礼を言わせてください」

「……たまたま、たまたま近くにいたからだよ」

「ふふっ、それでも手を差し伸べてくれたのは、コトミさんの優しさなんでしょう」

「…………」

「コトミ……そこで嫌そうな顔をしないでよ」


 だってさ……面と向かって言われると照れるじゃん。

 そんな顔見せられないよ。


「くすくすくす、やっぱり仲良いですよね、二人とも」


 ……ルチアちゃんにはお見通しか。

 アウルは相変わらず鈍感なのにね。


「アウルとルチアちゃんって姉妹なんだよね」

「そうだよ。双子なんだよね〜。私が一応お姉ちゃんやっています」


 どうだ、と胸を張っているけど、正直ルチアちゃんの方がしっかりしているしなぁ。


「コトミ、相変わらず失礼なことを考えているよね」

「ふふっ、こんなお姉ちゃんですけど良いところもあるんですよ?」


 いやー、そうかなー。

 まぁ、犬っぽいところとか人懐っこい部分はいいかもね。


「って、双子だったんだ。そういえばアウルって何歳だっけ?」

「私は十一歳だよ。ルチアも一緒」

「私と同い年か……」

「コトミも十一歳なんだ」

「二人とも歳を知らなかったんですか?」

「「…………」」


 二人して顔を見合わせる。

 リンちゃんも何か探るような視線を向けているし……。

 ま、まずい……。


「あはは……そんなことないよ。久しぶりだしね。一応確認、だよ」

「そうそう、コトミの歳は知っていたけど、一応、ね」


 苦しかったか……。

 あぁっ、じとーっとした視線で見ないで! リンちゃんまで一緒になって!

 そんな哀れみの視線を向けると、泣くぞ?


「はぁ、二人は似た物同士ってことで納得しておきます」


 それはそれで嫌だなぁ……。


「コトミ、また嫌そうな顔している」


 うっさい。


「ルチアちゃんも私と同い年ならタメ口でいいよ」

「いえ、そういうわけには……。お姉ちゃんの命の恩人なわけですし、それに頼り甲斐があるのでお姉さまとお呼びしたいぐらいです」

「……私はノーマルだからね」

「ふふっ、そんな意味では無いですよ」


 ……ホントかなぁ。

 リンちゃんといいアウルといい、必要以上にくっついてくるから誤解しちゃう。

 あ、アウルは単に犬っぽいからか。


「話が逸れちゃいましたが、そうなるとお姉ちゃんも何か能力(ちから)を持っているのですか?」

「そうだね。アウルは剣が得意なんだよね」

「あ、うん。これだね」


 床に置いてあった剣を手に取りうなずく。

 これは予備だけどねー。メインの剣は切られちゃったけどねー。ってぶつくさ言ってる。

 ……仕方がない。あとでリンちゃんにお願いするか。

 まったく世話の焼ける。まぁ、私のせいでもあるんだけどね。


「剣……ですか。でも、魔法と比べると、なんというか、地味な気がするんですが。今のご時世に剣ってのもおかしい気はするのですけど」


 辛辣(しんらつ)だね……。まぁ、相手がアウルだからかな。


「あぁ、アウルの剣技はちょっと反則級の強さだからね。目の当たりにしたリンちゃんならわかると思うけど」

「うん。そうだね。きっとどんな人でもアウルには勝てないよ。銃の弾でさえ弾き飛ばしちゃうし」


 戦っているときのことを思い出したのか、リンちゃんがゲンナリとしている。


「お姉ちゃんってそんなに強いのですか?」

「そりゃね。コトミと互角な勝負だったしね」

「互角って……戦っていたのですか?」

「「「あっ」」」


 や、やばい……! リンちゃんの一言に反応しちゃった! ルチアちゃんに心配かけないよう説明しているはずが……。

 ほ、ほら、眼が(うつ)ろになって……。


「おねぇ、ちゃん?」

「はいぃっ!?」

「どういう、こと、かな?」


 あ、これヤバいやつや。


「あ、いや、その、えと……」


 アウルが助けて欲しそうにこちらをチラチラと見ている。

 ……くそっ。貸しだぞ……。自分のことは棚に上げ、恩を押し売る。


「ル、ルチアちゃん。まだ、お話途中だから、さ……」

「うー……」


 ほっぺたを膨らませて、不満そうな声を上げる。


「……はぁ、わかりました。今だけは我慢します。でも、コトミさんも同罪ですからね」


 う……。仕方がない……。これが終わったらほとぼりが冷めるまで隠れていよう。

 コトミだけずるい。って人の心読まないでよ。


「えーと、それで話を戻すと、アウルも私と同じような能力(ちから)を持っているの。それでアウルは、その力を使って重要人物の護衛? の仕事をしているんだよね。確か」

「あー、うん。確かに護衛と言えば護衛になるのかなぁ」


 こいつは誤魔化そうという気があるのか。

 心の中でため息をつきつつも説明を続ける。


「アウルと戦ったのも、その護衛の仕事中なんだ。私たちは危害を加えるつもりはなかったんだけどね。ちょっとした勘違いで戦うことになっちゃったの」


 あ、また嘘くせぇって顔している……。

 まぁ、そりゃこんな説明じゃアウルぐらいしか騙せんか。


「コトミがまた失礼なこと考えている」


 アウルうっさい。誰のせいだと思っているんだ。


「……まぁ、わかりました。いえ、納得したわけじゃないですけど、どうせお姉ちゃんが先に手を出したんですよね。お姉ちゃんの不祥事は妹のわたしの責任でもありますから、この件は不問にします」

「「……ふぅ」」


 アウルと二人で小さく安堵の息を吐く。

 ルチアちゃんしっかりしすぎでしょ。

 でもまぁ、なんとか収まった、かな?


「コトミさんはいいですけど、お姉ちゃんはあとで詳しく聞くからね?」

「「…………」」


 なんとか収まった? よね。

 呆然(ぼうぜん)としているアウルに心の中で合掌する。


「放心しているお姉ちゃんは放っておいて、コトミさんに聞きたいことがあるんですけど」

「……うっ、何かな」

「そんなに身構えないでくださいよ。わたしはお姉ちゃんが心配なだけですから」


 いやー、うん。その辺の愛情が変な方向に重いんだよなぁ……。

 リンちゃんも苦笑いしているし。


「もう、コトミさんも変なこと考えないでくださいよぉ」


 ほっぺたを膨らませながら抗議してくる。

 その姿だけ見ると年相応で可愛いんだけどなぁ。って、ルチアちゃんも人の心を読まないでよ。

 はぁ、もういいや。気を取り直して話を進めよう。


「えーと、それで、何を聞きたいんだっけ」

「えっと、ですね。お姉ちゃんもそうなんでしょうけど、魔法ってどうやって使っているのかな、って」


 うーん、魔法の使い方か。

 リンちゃんからも前に同じ質問されたんだけど、説明が難しいんだよなぁ。

 簡単に言うと魔力を操作して、不可思議な現象を(おこ)すんだけど、そもそも魔力とは何ぞやから説明がいるし、理解するのにも時間がかかる。

 理解出来たところで魔力の無い人には魔法が使えないしね。


「だめ……ですか?」


 しばし無言でいると、ルチアちゃんから不安な声が上がる。


「あぁ、ごめん。何から説明した方がいいかな、って思って」


 そう説明すると少し安心したかのように、ほっと一息つく。


「それじゃあ、そうだね。簡単な魔法を使いながら説明しようか」

 部屋の中で攻撃魔法を使うわけにはいかないし、無難に治癒魔法かなぁ。

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