66 新たな少女との出会い
「さて、こいつらどうしようか」
残りの五人を手際よく無力化し、そう嘆く。
「うぅ~ん、コトミスゴいね。本当に護衛してる」
「護衛じゃなくても友達なら守るものでしょ。ところでこの人たちどうしよう」
「あ、パパに処理してもらうから電話するね」
処理って……不穏な雰囲気を感じ取ったので、深くは詮索しない。
「あ、アイツらだ! おい、アイツらをどうにかしろ」
「どうにかって……まだ子供じゃないの」
声のする方を見ると、さっきリンちゃんに撃たれた男と、身長は私と同じぐらいの……子供?
フード付きのコートを羽織っているからはっきりとは見えないけど、無機質な深い色の翠眼に見つめられる。
赤の混じった深いブラウンヘアーが隙間から見えた。
声色からして女の子かな。
「あの女は変な技を使うんだよ! いいから始末しろ」
「急に呼びに来たと思ったら、子供を始末しろ? 目覚めの悪い」
「いいからやれ!」
男がいきり立ち、女の子に怒声を飛ばす。
「はいはい……君たちに個人的な恨みはないけど、こっちも仕事だから、ごめんね」
そう言いながらこっちに向かって歩いてくる。
腰には……剣?
この世界に剣を持ち歩く人がいるの?
鮮やかな銀色をした両刃の剣を手に取り、駆ける――。
「っ、速い」
ショートカットの髪を風になびかせながら横薙ぎに剣を振るう。
横にいたリンちゃんを突き飛ばすと同時に咄嗟に後ろへ飛ぶ。
今まで立っていたところへの横振りの一閃。
横目でリンちゃんを見るとずざぁぁ、っと音が聞こえそうな勢いで滑っている。
ご、ごめんっ。
心の中で謝っておく。
今は目の前の敵に集中っ!
最初の一撃は、ギリギリかわしたが……。
「あーっ! お気に入りの服が!」
お腹の辺りで横にまっぷたつの切れ目が走っている。
なんとか直撃を避けはしたが、服がご臨終なされた。
「よ、よくも」
「へぇ、よくかわしたね。それならこれはどうだろう」
間髪をいれず、下から振り上げるような斬撃。
「っ!」
半身を捻ってかわす。
続けざまに繰り出される斬撃。
足元をすくうような剣撃は飛び越えるようにして回避し、頭上からの剣撃はしゃがんで回避。
……速いっ。
一瞬の隙をつき後ろへ跳躍する。
「私、あまり身体能力は高くないんだけど」
「それだけ動いてよくそんなこと言えるね。ちょっと本気を出すよ」
――っ!!
数メートルあった距離を一瞬にして詰め、刺突を放ってくる。
あまり手の内をさらけ出したくないけど――っ!
金属同士のぶつかる音が響く。
収納から取り出した短剣で横薙ぎに剣筋をそらす。
一瞬、彼女が驚愕の表情を浮かべたが――、
「遅い!」
「ぐへぇっ」
逸らされた剣に勢いを持っていかれ、体勢を崩しながらも足蹴りを仕掛けてきた。
腹部にモロ食らって吹き飛んでしまったが、床に手をつき反転、無事着地する。
そんなにダメージを負っていないけど、気づかれないよう治癒を施す。
アザになったら嫌だもん。
「……どこから短剣を出した?」
「あ、私マジシャンだからどこからでも出せるし、隠せるよ? ほらほら」
大ホラ吹きである。
「……子供の遊びに付き合う暇は――」
――乾いた発砲音。
銃声が三発聞こえた。
リンちゃんの放った攻撃と理解した瞬間、金属同士のぶつかる音が三度響く。
「ふん、つまらない」
何が起きたか一瞬理解できなかったけど。
「うへぇ、銃弾防ぐとか、マジで化け物」
うん。私もそれには同意。
剣で銃弾防ぐとか、人間技じゃないよね。
銃弾って秒速三百メートルぐらいはあるんじゃないの?
それ以上の速度で剣を振るうって、ありえない……。
「抗っても無駄。大人しく殺されて」
「痛いからやだ」
「……遊びはこれまで」
今まで以上の速さで切りかかってくる。
私も本気を出さないとマズいよね、さすがに。
下からの振り上げ、剣が直撃する瞬間――、
「転移」
「なっ!! 消え――」
彼女の背後に転移し、背中に手を触れ魔法を叩き込む。
「風槌っ!」
「ぐはっ……!!」
無防備となった背中に強烈な一撃を受けた彼女は吹き飛ぶ。
不意打ちの一撃だったため受け身を取る余裕も無く、地面に叩きつけられるかのように転がっていった。
数メートルの距離を跳ねながら転がり、奥の壁に激突し止まる。
「……コトミ、やりすぎじゃない?」
「……ごめん、ここまでなるとは思わなくて」
死んでいないよね? 大丈夫だよね?
敵とはいえ子供だから、さすがに心配しちゃう。
様子をみるため近づこうとしたとき、カチャリ、と背後から音が聞こえ――っ……!!
咄嗟にリンちゃんを抱き、跳躍を使い横に飛ぶ。
「ぐぇっ」
直後――銃声。
「ちっ、役立たずが。ガキ一人も殺れないのかよ」
彼女と一緒に来た男が後ろに立っている。
右手には銃が、まだやる気か。
「俺も化け物の相手はしたくないのでね。悪いけどお暇させてもらうわ」
男が懐から取り出したものをこちらへと投げてくる。
「っ……!」
咄嗟に収納から取り出したナイフを投げる。
男が投げたモノにナイフが当たった瞬間――あたり一面白煙の海となった。
「っ……催涙弾っ!? うわ~っ! 目が、鼻が~~っ!」
瞬間、リンちゃんが涙目で訴えてくる。
「くぅ……っ!」
風魔法で周囲の催涙ガスを巻き込み空気を入れ替える。
私も涙が止まらない……っ! 治癒魔法~っ!!
うぅ……、まだ目がしばしばするけど、何とか見えるようにはなった。
「コトミ~~っ! 助けて~~っ!」
あぁっ! リンちゃんごめんっ!
忘れていたわけじゃないからねっ!
リンちゃんへも治癒魔法をかけ、二人何とか落ち着いてきた。
「うぅぅ~~、まだ目がしばしばするぅ」
「私も……」
くそっ、さすがにあの男は逃げているか。
「そういえば、彼女は?」
振り返ると、そこに彼女の姿はなかった。
「逃げられたか……」
でもまぁ、動けるということは大丈夫なのかな。
すごい跳ねていたけど。
「あの子もいなくなっちゃったね」
「そうだね。いったいなんだったんだろうか」
周りを見渡すと、伸びていた男たちもいなくなっている。
少し時間をかけすぎたかな。
「とりあえずパパに連絡しておく」
「そうだね、残念だけど今日は帰ろうか」
ゆっくりと表通りまで歩いていく。
その後リンちゃんのパパが駆け付けて、まぁ大変だった。
私のせいで転んじゃっているから服は泥まみれ。
擦り傷もいっぱいできちゃっていたから、それは治癒魔法で治しておいた。
怪我は無くなったんだけど検査やらなんやらで数時間潰れた。
私はいいって言っているのに、リンちゃんと一緒に検査を受けることとなった。
脳波とか見られているけど、転生してきた魔術師とバレないよね?
科学恐ろしい。




