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隠子の婚約+美人の退職+愛娘の受験+仕事の責任=幸せの1/2  作者: 亨利(ヘンリー)


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プロローグ

まえがき


100%の幸せなんか、めったに掴めない。

それは、100%頑張れる人が少ないから。

でもその1/2(半分)ぐらいやれる人なら多い。

それで、幸せの1/2(半分)でも感じられればいいんじゃないか?

そしてどれだけの数、それを感じていけるかだ。



今日、お気に入りの部下が退職した。

それはとても残念なことだ。仕事上でも、精神面でも・・・


今思えば、その女性がいた職場は心地良いものだったな。

でも、仕事っていうのはそんなことばっかりじゃ、やっていけない。


社会的な責任を負うようになると、一つのことだけ考えて日々を送るなんて不可能だから。

あれもこれもどれもそれも、全部やらないといけないのか。


自分のことより、他人のことを気にするようになってしまった。

常に心配を抱えながら。


最近では、家族のことも二の次になってしまっているし、幸せを追い求めることは、責任を果たすことより、優先度が低くなってしまった気がする。


これは半年間ほどの出来事。

挿絵(By みてみん) 



「部長。ちょっと相談したいことがあるんですですけど。今日の晩、お時間いただけませんか?」

 部下の小原が申しわけなさそうに、木田博之に頼んだ。上目遣いに眉を寄せて作るその表情は、男扱いに慣れた彼女得意の仕草だろう。


 彼女が突然声をかけたのは、水曜日の午後、博之が事務所のデスクでコーヒーを飲みながら、パソコンのメールをチェックしている時である。二人以外、他には誰もいなかった。博之は目を細めたまま、すぐにモニター画面に視線を戻したが、それは受信件数が多く、忙しかったのが理由なのではない。

「ああ、今日はちょっと用事があってね」

 博之は、面倒だからそう言ったのでもない。しかし予想外の返事に、小原は絶句している。そして、一呼吸置いてから、

「・・・ごめんね。何だったかな?」

 と、それでも彼女のほうは向かず、キーボードをたたきながら尋ねた。

「はい。実は退職に関してのことなんですが。仕事が忙しいのに無理言ってるんで、しっかりお話がしたかったんですけど」

 なるほど、彼女としては、申しわけなさそうな表情を作るはずである。

「その気持ちは有難いけど、今日は先約があって、どうしてもそっちに行かないといけないんだ」

 博之はわざと目線をそらしたまま、ぶっきらぼうな言い方をした。せっかくの誘いを、そう簡単に断るはずもないのだが、小原は面と向かうには照れくさいほど、きれいな顔立ちの女性主任なのである。


 博之はようやく手を止めて、ゆっくり彼女に視線を向けると、こう付け加えた。

「その話は明日でもいいかな?」

「はい。大丈夫です!」

 小原は嬉しそうに笑いながら言った。これも作り笑顔だということは、博之もお見通しだが、彼女が笑うとなぜか博之は安心するのだった。

「それに、ちょっと僕も相談したいことがあるんだよ」

「え? 私に、どんなことですか?」

 博之は普段、彼女に気軽に声をかけたりできない。面と向かって話すのも照れくさい。しかし、この時はせっかくの誘いを断ったものの、ほんの少し、彼女の信頼は得たいという思いから、このようなお願いを口にしてしまった。

「知り合いの結婚式についてなんだけど」

「ああ。それってピアノ講師の方の?」

「うん。今晩、そのことで相談を受けてるんだけど、僕は最近の結婚式事情に疎くって」

「私、去年に式挙げたばかりなんで、何でも訊いてください」

「ホント助かるよ。じゃあ明日の晩おごるから」

「あ。そんな、私が無理言ってるのに、申しわけ・・・」

 博之は人差し指を立てて、彼女の言葉を遮り、眉を寄せて言った。

「割勘は、有り得・ない!」

「です・ね(笑)」

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