村の霊①
金はあるだけ良い。
金があれば、家も買える、何処にでも行ける、美味い飯も食える。
そして、人も寄ってくる。
じゃあ、金が無かったら?
それは簡単。
「金が無かったら、なにもできない」
牢獄の中で、1人の男の囚人は看守に向かってそう言った。
男の囚人はまだ20代、銀行強盗犯として捕まっていた。懲役は16年
「だから俺は、強盗をした。……なぁ、他の仲間は、捕まったか?」
その言葉に、看守は首を横に振った。そして、看守は言った。
「本当に知らないんだな。他の仲間の行先を」
すると、男の囚人は笑い出し、その勢いで言った。
「ハッハッハ!!知ってたら、殺しに行ってるよ…とっくの前にな。」
その一週間後、その囚人は脱獄した。
「…で、俺に捜索依頼か。」
ある古びたビルとビルの間の古い路地、そこには1人の少年と、1人の警察官。少年は黒いパーカー、黒の長ズボン。
警察官「そうなんだよ…君はなんでも屋なんだろう!?」
少年「…お前の狙いは、《手柄》だろ?指名手配の奴を自分が捕まえた!って言って、出世でもしたいんだろ。でも、中々見つけられない。」
警察官「…そうだよ」
少年「ハッ!!警察も警察だなぁ…まあいい、受けてやろう。」
警察官「!!」
少年「金は払ってもらうぞ。懸賞金の半額でいい。」
警察官「あ、ありがとうございます!!」
少年「10日以内に見つける。それまでお前も命削って探してろ」
警察官「は、はい!!」
警察官は、駆け足でその路地を出て行った。
少年(…はぁ〜……めんどくせーー)
俺の名は「琴坂 秋」実は、未成年だ。
秋(銀行強盗をした犯人が脱獄ね〜…どうも怪しいな)
中学の頃、色々あって不登校になった。そして高校に進学せず、家出して2年。
俺の家は遠い田舎にある。ここ東京とは違う、本当のド田舎。そこから、俺はなんとかここまで来た。
そして、なんでも屋と名乗り、金をなんとか稼いでる。
秋(脱獄してから一週間…監獄からはめっちゃ遠くへ逃げてるだろうね。)
俺はフードを被り、路地からゆっくりと出た。
秋「さて、行くか。」
俺はあの警察官に、色々資料を渡された。
男(脱獄犯)が最後に看守に言った言葉、その男の特徴、男以外の銀行強盗をしたメンバーなど、男を探すための沢山の情報が手書きでメモ程度に書かれた紙。
秋(こんだけ情報あって捕まえれてないって…どんだけそいつ鬼ごっこ得意なんだよ。)
俺はまず駅に向かい、千葉方面の電車に乗った。
秋(男が捕まっていたのは、府中刑務所。そっから脱獄したとなると、何処へ行くか……まあ、俺は知らねえ。)
俺は吊り革を掴み、電車に揺られながらため息を吐く。
秋(10日とは言ったけど、見つかるか〜?見つかんなかったら、どうするか〜…もう食費尽きるぞ)
俺の中で、最初に思いついた考え。それは、あの警察官が囚人本人という事だ。あえてなんでも屋に頼み、なんでも屋は囚人を探す。しかし、見つからない。依頼人が張本人だと考えないからだ。そしてなんでも屋は、無理やり違う人を犯人にして、無理やり証拠をつくる。
そうすれば、自分が犯人とバレない…
秋(でも、あいつは囚人じゃないんだよな〜…)
…なんでそう思う?
秋「…また来たのか?」
言ったろう!?俺は、《《あの契約》》を果たすまで、お前から離れる事を禁じられている。
秋「…あのなぁ、せめて俺の心を読み取れるようになってくれ。これじゃ、俺が1人で喋ってるだけの変人じゃん。フード被ってるからもう不審者じゃん。」
俺と同じ車両に乗っている人は、ほとんどがスマホをじっと見つめている。数人は、こちらに冷たい目線。
俺の周りには、会社に向かうサラリーマンが沢山いる。俺は、そのサラリーマンと話しているわけではない。
秋(本当に、あの婆さんは……厄介な奴を俺に取り憑かせやがって…)
その時、急に電車のブレーキ音が地下の狭い空間に響き渡る。
秋「!!」
すると、電車の速度が上がってゆく。立っている人は大勢を崩し、慌てて吊り革を掴む。
「お、おい!!」
「なになに!?!?」
同じ車両の人々が慌てている。俺は前後の車両をチラ見すると、同じ様にワタワタしている。
秋(はー、ったく。ついてねぇーー)
俺は頭をかき、しゃーなし言った。
秋「キョウ、任せた」
数秒後、電車の速度は落ちてゆく。そして、無事次の駅に停車した。
電車のドアが開き、俺は人の波にうまく流されて、電車を降りることができた。
秋「サンキュー。キョウ」
キョウ「こういう時の為に、俺は居る。」
俺の隣を歩く、俺と同じくらいの年頃の少年。それが、「キョウ」。周りからは見えておらず、声すら聞こえない。
赤のTシャツと黄色の短パンと、派手な格好で、声量も俺の二倍大きいというのに…
この話を、聞いた事があるだろうか?
《日本のある村では、十を超えた子に、霊を憑かせる》
その村が、俺の住んでいた田舎の村の様だ。
「ガンッ」
……俺たちは、踏み入ったらいけない領域に、足を入れてしまった。
この村の話には、続きがある。
《霊に憑かれ者は、人を殺してはいけない》
秋「…キョウ……これから、俺はどうなる……」
キョウ「そうだな……取り敢えず、体の一部が無くなるとかか??」
この話を、ただの噂だと、思っていた…




