19/20
第19話 もう倉庫の鼠ではない
翌朝、王都港務局から正式な打診が来た。
監査体制を立て直すため、私へ復職を願いたいという。以前より高い席も、独立した札庫も用意できる、と。
昔の私なら迷ったかもしれない。認められたい気持ちがなかったわけではない。
けれど今は、返事を考えるのに長い時間は要らなかった。
「お断りします」
局長は少し驚いた顔をした。
「王都港と北海灯台港は、公正な契約と公開札でつなぎ直してください。私は北海で、荷札室と監査台を続けます」
それが私の答えだった。
北海へ戻ると、港の入口に新しい看板が掛かっていた。
『北海灯台港 荷札監査室』
下に小さく、私の名が添えられている。
マルガレーテが腕を組んで言った。
「王都の飾り台より、こっちの方が似合うよ」
「ええ。私もそう思います」
もう私は、暗い倉庫で誰かの検印席を支えるだけの人間ではない。
私自身の名で、荷を守り、流れを残していく。




