元悪魔執事の便り
挙動のおかしなヘスティアをブティックに放り込み、着替えさせて夜景の見えるレストランで食事をして帰った。
途中、「え、プロポーズですか?」などとまた言い出したが、否定をしておいた。何かにつけて結婚と結びつけるのはいい加減やめてほしいものだ。
それにしても、子どもたちと一緒に行くような店ではなかったからあまり利用する機会がなかったが、やはりああいう店の料理は美味いな。たまにはいいだろう。
そういう点ではヘスティアと出かけられたのもよいことであったかもしれんな。本人には絶対に言わないが。
帰ったら、アルテがすっ飛んできて必死にみゃーみゃー鳴いていた。
ふむ。とりあえず抱き上げるか。
何?
「ああ。ダンテが手紙を寄越したのか。久しいな」
「フェリクスさん、アルテちゃんの言うことわかるんですか?」
「使い魔だからな」
使い魔の言葉がわからないと色々支障が出るではないか。まぁ、質問をしている豆太はそういうのを持つタイプではないからな。知らずとも仕方のない話だ。
「ダンテ、って誰です?」
「魔王時代の私の右腕であり、秘書であり、執事であった悪魔だ」
あれがどうしたのだろうな。そのあたりは手紙を実際に読めばよいか。
魔王をやめる時に別れたが、元気ならばそれでよい。意外と妻や子を見せに来てくれるかもしれんなぁ。
そんなことを思いながら、ラウルから手紙を受け取る。腕の中でアルテが威嚇をしているのは、ダンテがよく自分を揶揄ってきたことを覚えているからだろう。仕事はかなりできたものの、性格はそんなによくなかったからな。
「ふむ。……? ああ、まぁ……そういうこともあるか」
「何かあったんですか?」
「昔、私が治めていた土地な」
「はい」
「その土地の人間に滅ぼされたらしい」
私がそう言うと場が凍った。
なんだ。この程度のこと、世界各地で起こっていることではないか。共生できている土地もあるが、魔王に支配される場所も存在する。
「そもそも、私が譲ってからも代替わりしているようだしな。今はもう知らんやつの土地に過ぎん。気にすることはないだろう」
それで戦争が起きようと、私が手を出す問題ではないしな。
なぜ、そんなどうでもいい……とまでは言わんがどうしようもない問題を手紙に書くんだ。もう一度やれというのではないだろうな。絶対やらんぞ。ああいうのは面倒と権力が大好きなやつがやればいいんだ。
「ふむ。なるほど。問題はそちらか」
「問題ってそれ以上のもんがあるんです?」
「ああ。魔王になるやつに渡してきたアーティファクトがある。それがなんというか……人間たちが手に入れたものの、調子に乗って使ったら生ける屍の大量生産事件が起こったらしい」
あれは確か父曰く、『憐憫の盃』と言ったか。
私も使ったことがないというのに、人という生き物は面白いな。訳の分からない道具というのは、封印するのが一番なのだぞ。
もうすでに攻め込んだ人間たちは全滅。屍たちの大宴会が起こっているらしい。
しかも、聖なる属性の者たちにもどうにもならんと。かなり面白いことが起こっているではないか。ネタの提供のために手紙を送ってきたのか?
「追伸。はぁ……アルテ。ダンテのやつ、盃を持って遊びに来るらしいぞ」
「シャーーー!!」
思いきり威嚇をしている。
まぁ、相性というものはあるよな。
いつも読んでいただき、ありがとうございます!
◎ダンテ
フェリクスの元右腕、ドラクル家の執事だった悪魔族の男性。
フェリクスはコイツの顔がいいことを覚えているので結婚していてもおかしくないと思っているが、実際は性格が悪いので「一夜の恋人ならいいけど、番には……ね?」とぼちぼちの数のお姉さまに言われている。なお、ヘスティアもこいつが嫌いだし、ジークもなるべく近寄りたくないと思っているし、アルテもこいつがやっぱり嫌い。
好きな子ほど虐め倒したい気質。最悪。悪魔。あ、悪魔だった。
フェリクス相手は無害である。なぜかは本人にも不明。
一部の者は「天使とか聖女とか聖者に祓われててくれねぇかなぁ!!」と思っているし、実際本人に言っている者もいる。




