挙動のおかしな魔女
さすがにすぐに復活した。
ヘスティアはどうしてこうも挙動がおかしいのか。
まぁ、隣で腕を組んでうっとりしているあたり、この前よりは耐性ができているようだ。
私個人としてはチョコレート売り場をはしごして爆買いしていくのでもよかったのだが、『恋人らしいことがしたい』というならばこのくらいは構わんか。
しかし、この女。ずっと私の顔を見ていないか? 一応、プラネタリウムなのだから、映し出される星を見てやれ。施設が泣くぞ。そして、説明も聞いてやれ。
周囲の様子を見ると、確かに星をだしにしていちゃついている気はするが。
もしかして、バレンタインデートとはこういうものなのか?
二月はまだ寒いしな。屋内施設に出かけようとすれば、こういうところに需要が集まると言うのは理解できる。見に行くとしてもイルミネーションだろうし、夜だろう。
そうなれば、近い距離で座ってベタベタできる施設というのは貴重なのかもしれん。
我々はまだ恋人ではないが。
このあたりはしっかり釘を刺しておかないと、ヘスティアの場合は婚姻届けを持ってくる。「そろそろ付き合い始めて長いですし♡」とか言いながら。実際、やられたことがある。面倒だからと放置していたらそうなった。
当時の執事には「彼女を放置していればそのうち、外堀埋められて身動きがとれなくなりますよ」と言われた。まぁ、私も別に良い魔族ではないので、評判なんか悪くなってもかまわんので無駄なのだが。
そんなことを思いながら無心で天井を見上げていたら、終わる頃にはヘスティアが頬を膨らませていた。
「あの、キスの一つもするべきでは?」
「そういうのは恋人とやれ」
「今日はフェリクス様がそうじゃありませんか」
何か面倒なことを言っているな?
「今日、私が承諾したのは、デートだけだったはずだが?」
そう返すと、なにやら悔しそうな顔をしていた。
「そういうことは、恋人同士がやること。ということは嫌がらずに承諾して頂けた以上、これは交際しているといえるのでは?」
「たまに訳の分からないことを言うな、お前」
そもそも、私と交際しても何も楽しいことはないぞ。
これは、『約束』だから外出しているだけで、実際に付き合いが長くなれば、大体ずっと引きこもる自信がある。
「そろそろ時間だな」
「時間?」
「店を予約してある」
ディナーは以前、ヘスティアが見ていた雑誌の店だから、とりあえずそこにしておいた。
普段の外食は定食屋とかしか行かんからな。洒落た店というのもたまにはよいが、堅苦しい。
「ディナー前に身支度も整えねばならんからな。そちらも頼んである」
「え。あの、結構、よい店、なのですか?」
「ドレスコードなるものがあるのだから、そうかもしれんな」
少し上品な恰好が必要という程度のものだろう。
さすがに、はじめからそれをヘスティアに告げればどんな服装でくるか想像がつくから言わなかったが、それならば入る店に応じた服は私が用意すべきだろう。その程度の甲斐性はある。
世の中には、その手のことをおろそかにして恋人に振られる者もいるそうだが。
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