命大事に
危険なダンジョンなので私一人で来たかったものの、たまたま我が家にやってきた聖悟に見つかって同行されることになった。
感覚遮断落とし穴のエロ・グロ罠は男女問わずだからな。絶対嵌まるなよと言い聞かせた。魔物の子なんて産みたくないと気が狂ったように泣き叫ぶ屈強なハンターも見たことがあるからな……。
「しかし、僕もこのダンジョンがそんな悪質な進化を遂げているとは思いませんでした」
「ダンジョンは時折、こういう悪意の片鱗を見せてくるものだ」
そして、妙なアーティファクトが眠っている可能性もある。
魔王となる者にはダンジョンから手に入れたアーティファクトの力で支配している者もいた。まぁ、それもあって第六天やハンター協会は比較的害のない私や清明に依頼を投げてくるのだ。
実際、私は魔王に復帰するつもりはないし、ジジイも「めんどい」と言っているそうだからある程度目論見は当たっていると言えよう。
私が魔王を再びやることがあるとすれば、それこそ身内のため以外ありえんだろうな。
「あ。ここ、落とし穴がありますね」
「開けてみるか」
適当にぽいと人形を投げると、それを『人』と認識した罠が牙を剥く。そこを無理やりこじ開けると、底に触手が蠢いていた。鞄と服の一部が残っているあたり、すでに誰か喰われたのだろう。
「中途半端に残っていなくて助かったな」
「……それは助かったといっていいものなのでしょうか?」
「助かる状態ならいいが、助かりそうにないのに『助けて』と泣き叫ばれる方がトラウマになるものだぞ。実際、以前共に救助活動をした者はそう言って引退した」
「それは……そうかもしれませんね」
こういうものに触れた人間の予後、本当に悪い。
快楽に支配されてもう一度戻ってこようとする者も出るし、助けてというから助けてやったのに下半身が無くなったことを恨まれたこともあるな。恨まずには正気を保てなかった、という可能性は大いにあるが。
「とりあえず、潰しておくか」
ポイと魔法を落としてドッカーンしておく。罠を張って捕食者を喰らうような弱い魔物はこれで大抵死ぬ。ほら死んだ。
「道中、邪魔そうなものは潰していくか」
「うっかり引っかかると怖いですしね」
そうだな。私はなんとかできるが、お前がどうなるかわからんしな。その重そうな装備で落ちたら上がって来れるのか?
「……そういえば、お前の装備に体当たりして死んでいくスライムがいるのだが」
「これですか? 単純に鎧に魔力を循環させ、強化しているだけですよ。大抵の魔物はこれにぶつかっただけで死にます」
死ぬというか、溶けているように見えるのだが、どれほどの強度で流しているのだろうか。少し興味が湧くな。
そして、爽やかな声色で、事実ではあるが、ちょっと怖いセリフだな。
ちなみに、スライムのような弱い魔物でも死ぬのだから、軟弱な人間がぶつかっても当然死ぬだろう。
「よい素材を使っているようだな。自分の安全に気を使えるのはプロとして意識が高い証拠だ」
「ありがとうございます」
本当に、高ランクのハンターやそこそこ強い魔族でも、それが疎かな者はいるのだ。阿呆かと。結局最後に笑うのは生き残った者であるという自覚を持たなければいけない。そもそも、死んでまで得る称号にどれだけの価値があるというのか。
でも、そういうのが好きな連中がいるのだ。頭が痛い。
いつも読んでいただき、ありがとうございます。
聖悟くんとはたまたま出会った。はずである。




