悪役令嬢予定の最後
「イージュ!よかった!目が覚めたかい」
「フィーナは?」
「ハルスクーダ公爵家から勘当されて、国境沿いにある修道院にヤード男爵令嬢と出発したよ。」
「…!」
「イージュ…ごめんね、フィーナ嬢やヤード男爵令嬢には現実を見てもらわなくては行けない」
「カイル…そうね…フィーナには幼い頃から、私達家族が言い聞かせて来たけれど…ヤード男爵令嬢と出合ってから酷くなるだけだったもの…。」
フィーナは婿養子の父と愛人であるシャロン様の娘で血筋を重視するこの国では、公爵家の跡取りとは認められず母の家である男爵家の娘としか認められないと、周りの大人たちや私からも何度となく。
「フィーナには…幼い頃から言い聞かせたのに…。」
近頃は、自分がハルスクーダ公爵家令嬢として、カイルと結婚しロローア・ヤード男爵令嬢を第二夫人にすると言い張り、デビューの日に謹慎を言い渡されワースト男爵家に軟禁されて居たはずが…。
公爵家に二人で現れカイルが作ってくれたウェディングドレスをヤード男爵令嬢へ贈られた物だと勘違いし、使用人達の目を盗みドレスを着た後、バージョンロードを歩く二人をカイルに連想させ今のうちから夫婦仲を良くしようと考え実行したらしく。
「最近はホントに何を考えてるのかさっぱりだったわ」
「イージュ…」
「殿下、お嬢様…旦那様と奥様がサロンでお待ちです」
扉の横に待機していたマーサが、私達に声をかけてきた。
カイルと結婚すると決まって居ても、まだ二人きりにはしてはくれないわよね。
「イージュ…大丈夫かい?」
「ええ、大丈夫よ。マーサ直ぐにサロンに…着替えてから行くわ。」
「部屋の前で待ってるよ。」
着替えを済ませ、カイルと二人でサロンに入る。
「お父様、お母様お待たせいたしました。」
サロンに入り、お父様とお母様の前にカイルと二人で座ると。
「カイル殿下、この度はフィーナ…公爵家に連なる者がご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。」
お父様が、カイルに頭を下げて謝罪の言葉を口にした。
「義父上、謝罪を受けとりました。」
「ありがとうございます。イージュ、私が至らぬせいで苦労をかけた。」
「お父様…。」
「結婚式では僕が用意したドレスは間に合わないでしょう」
「殿下…申し訳ありません、公爵家が作らせているドレスの仕上げを急がせています。殿下が提案していただいたように、式には公爵家のドレスをイージュに。」
「ええ、ありがとうございます。私も針子達に新しいデザインのドレスを急いで作らせます。」
予定とは逆に、結婚式で公爵家が用意したウェディングドレス
に変わり披露宴でカイルが用意してくれたドレスに決まりました。
フィーナやヤード男爵令嬢の話は、お父様の最初の謝罪のみで後には全く話題に上がりませんでした。
フィーナ達が起こした騒々など無かったかのように、私とカイルの結婚式は無事に終わり、披露パーティーではカイルが用意してくれたドレスを着ることができました。
そして…カイルは愛人を一人も作らず、死が二人を別つまで私と子でも達を愛してくれました。