03話 剣核開放の実験
「――ありがとうございます。本当にありがとうございます。これで村にも平穏が戻ります」
ウルフを倒した俺たちは、その死体を持ってマラア村に戻り、その足で村長の家にやってきた。
村長たちは、話し合いが終わったところだった。
避難指示を出して、マラア村を捨ててでも逃げ出す予定だったらしい。
軽く事情を説明して死体を見せると、ものすごい勢いで頭を下げ始めた。
「――頭を上げてください。私たちも襲われたのを返り討ちにしただけですから」
「そうだとしても、村を救ってくださったことに違いありません」
頭を下げ続ける村長たちに、居づらさを感じ、俺たちは宿に戻った。
いつのまにか村の住人にも話が通っていて、宿の宿泊代が免除されたことには驚いた。
さらに村を上げて祝勝パーティを開催することになり、俺たちはもちろん主賓として呼ばれることになった。
宴会は夜遅くまで続いたが、俺たちは旅のこともあるからと早めに寝ることにした。
部屋は皆同じでも寝る場所は別々なので、久しぶりに独りで寝られると思いベッドに入ったのだが、、、
(――やっぱり気になるな)
魔物を実験体として何者かが動いていることが気になって寝付けない。
実験の内容から考えても、ろくなことにもならなさそうな気がする。
――まあ、あの程度の魔物だったら、束になったところで俺たちは問題ないだろう。
でも、このマラア村のように、強い冒険者が在住していない場所では、どうなるか考えたくもない。
(――仕方ない。少し見回るか)
これも俺の安眠のためだ。
俺は、3人に気づかれないようにベッドを抜け出した。
◇◆◇
(――【索敵】)
以前、ミミとココネのパワーレベリングの時にもお世話になった聖剣のスキルを発動する。
それに【簡易マップ】も発動して、魔物の居所を反映させる。
【索敵】に引っかかった魔物は全部で10体ほど、、、
固まっている反応はゴブリンかと思うが、とりあえず全ての魔物を倒して回ろう。
俺は、攻撃用の聖剣ではなく魔剣を抜いて走る。
どうせならと思い、今回は実験も兼ねることにした。
(――いたっ!)
最初の数匹はゴブリンやスライムだったが、三回目の遭遇は例の実験個体だった。
マラア村からは少し離れた場所だったので、誰も気づかなかったのだろう。
同じウルフが素体となっているみたいだ。
(――さて、俺も実験を始めるか、、、)
腰に装備していた【索敵】用の聖剣を【アイテムボックス】にしまい、代わりに魔剣を腰に装備する。
たぶん大丈夫だと思うが、念のためだ。
どちらの魔剣も【武具創生】で作り出した、スキル狙いではなく恩恵の値が高めの魔剣だ。
「――剣核開放っ!」
天塩をかけて打った聖剣を犠牲にするのには心が痛むが、スキルでパパッと作った魔剣ならば、そこまで心苦しくない。
それに、剣核開放はいざとなったときの切り札になるのだから、調べておいた方がいいと思う。
右手に持っていた魔剣がはじけ、光の粒子に変わる。
聖剣じゃないためか、黄金色ではなく元の刀身の色の光だった。
腰の魔剣には、変化は現れない。
「――やっぱり、剣核を開放したいと思った剣だけしか、剣核は解放されないか、、、」
これならば、恩恵の聖剣を装備して、魔剣を剣核開放させて戦うこともできる。
人前で使えるかどうかの違いが出るので、確認しておきたかった。
「あとは、恩恵の値の変動と、スキルの変化か」
【超高位鑑定】を使える聖刀『アナライザー』を取り出し、剣核を開放した魔剣に使ってみる。
恩恵の値は、ぴったり1000ずつ増えていた。
剛田が聖剣『エクスカリバー』を剣核開放した時の上昇値と同じだ。
スキルも無くなっているのも同じ。
現状からみて、剛田が行った剣核開放と同じなのだろう。
「――剣の意識の違いか、、、」
魔剣だから、という理由かもしれないが、たぶん本当の意味で剣核を開放できていないという理由が正しいと思う。
『オレイカルコス』と『ハーゴード』の時は本剣たちの了承があったくらいだし。
「ともかく、恩恵の値が1000ずつ増えるのは、大きいな」
剣核を開放した魔剣で、ウルフを切り裂く。
昼間の戦闘と比べると雲泥の差だ。
「――何かあったときのために、ミミとココネ、それにシェーラも使えるようになってもらっといたほうがいいな」
聖剣は勇者か作成者でないと装備できないが、魔剣ならばレベル制限で済む。
3人の安全を考えたら、魔剣くらい使い捨てにしても全然惜しくない。
――その後、もう2匹の実験個体を見つけ、それも剣核開放の実験がてら討伐した。
ただ、実験をしていた犯人は見つかることは出来なかった。。
実験個体の経過日数からの推測だが、ここでの実験は終わったように感じたので、たぶん周辺にはもういないのだろう。
――これからの旅が、安全に行けるといいのだけど




