05話 ガイアウルフを実食
「――ほんとにすみませんっ。本来護衛する立場の私たちが手を貸して頂いてしまい。でも、おかげで助かりました」
「「「ありがとうございました」」」
ガイアウルフの討伐に成功した『風来の乙女たち』が、そろって頭を下げる。
「いやいや、『風来の乙女たち』の皆さんと、それにノーラさんのおかげですよ」
「そんなことありません。魔剣の強化スキルや、危ないところで魔法も使っていただきましたし、それに――」
「まあまあ、勝てたんだからいいじゃないですか。それより、『これ』をどうするか考えないと」
お礼の言葉が止まらない、ノーラさんの意識を逸らすべく、俺はガイアウルフの死体を指さす。
このお宝をこのまま放置なんてことはできない。
ガイアウルフは武器や防具の素材としても優秀らしいし、肉は美味しいらしい。
できることなら、素材は貰いたいし、肉も食べてみたい、、、
「――やっぱり、折半しましょうか」
「いえ、私たちはいりません。そもそも、護衛をできなかったですし、討伐だってシロウさん達の協力が有ってですから」
どこまでも真面目な『風来の乙女たち』。
他のメンバーもそれでいいいらしく、不満の声は上がっていない。
もしかしたら、ミサンガの効果が発動していたりするかもしれない。
「それなら、こうしましょう。俺たちだけでもガイアウルフなんて討伐できませんから、ガイアウルフの素材は折半ということで。ただ、ガイアウルフの差材は欲しいので俺たちが貰いますが、その分を依頼料に上乗せってことでどうでしょう?」
「――本当にいいですか?」
「もちろんです。俺としてはお金よりも、ガイアウルフの素材の方がうれしいですから」
こうして、ガイアウルフの素材の所有権がもらえた
「それじゃ、ガイアウルフの解体もしたいですし、今日はこの近くで、野営しましょう」
「わかりました」
この辺りは、ガイアウルフの縄張りになっていたらしく、他の魔物はほとんど寄ってこないみたいで、野営をするには好条件だ。
それに、ガイアウルフは大きいし、解体にもそれなりに時間がかかりそうだ。
「じゃ、さっそく解体してきます」
「ご主人様、お手伝いします」
「シロウ様、私も手伝うの」
「それなら、私たちは周囲の警戒と野営の準備をします」
◇◆◇
ガイアウルフは、2本の大きな牙と硬い毛皮が素材として使われ、爪は武器の加工には向かないらしい。
あとは、肉だけど、それはもちろん食料だ。
ちょうど、頭が切り離されていて、血抜きの手間も減ったし。
俺は、解体用のナイフを取り出して、ガイアウルフに突き立てる。
――ガキンッ
ナイフが折れた。
「硬いか、、、 ――しょうがない」
折れたナイフを捨て、代わりに魔剣『ファントム』を抜く。
今度は、しっかりと刃が通った。
これなら、サクサク解体できるな。
「ミミとココネは魔剣を使えないから、料理の方をお願い」
「わかりました」
「はい、なの」
俺とミミとココネは、それぞれの分担に分けて、ガイアウルフの攻略にかかった。
ガイアウルフの解体は、その巨体と硬さのせいで日が傾くまで続いた。
◇◆◇
「――っ! 美味しい!!」
野営での夕食。
今日も『風来の乙女たち』と一緒に食べている。
メニューは、ガイアウルフのフルコースだ。
ステーキに、焼肉、シチュー。ほかにも持ってきた食材と合わせ、ミミが腕を振るってくれた。
ガイアウルフの肉は、臭みが全くと言っていいほど無く。程よい弾力がある赤身、火を通すと舌の上でとろける脂身のバランスが最高だった。
肉の旨みがダイレクトに伝わるステーキと焼肉。
とろけるほど煮込まれたシチューは、肉の味すべてを引き出されていた。
これは、ガイアウルフの肉が美味しいだけではなく、ミミの腕がいいのだろう。
「こんなにおいしい料理は生まれて初めて食べた。ミミありがとう」
「い、いえ。そんな、、、」
ミミが犬耳を器用にたたみ、顔を両手で覆い隠してしまう。
どうやら、照れているところを見られたくないらしいが、そのしぐさはとても可愛らしい。
「本当においしいです。私たちまで一緒にありがとうございます」
相変わらず腰の低いノーラさんも、態度とは裏腹に食べるスピードが昨日よりも早い。
ガイアウルフの肉は大量にあったので、今日使用しなかった分は、劣化がしない俺の【アイテムボックス】にしまってある。
なので、いくらでも食べてもらっても大丈夫だ。
というか、おいしそうに料理を食べている女性の邪魔などできるはずがない。
「そういえばシロウさん? ガイアウルフはどうやって解体したんですか?」
「ん? 普通にだけど、、、」
「普通にって、ガイアウルフの硬い毛皮を切れたんですか?」
「ああ、それは、これで切ったよ」
俺は、魔剣をコンコンと叩く。
普通のナイフでは、刃が立たなかった。
「すごいんですね、その武器」
「一応はね。これでも魔剣のはしくれだから」
「――魔剣、ですか!?」
ノーラさんが、まるでガイアウルフを見たように驚いた。
そういえば、ノーラさん達には話してなかった。
「ココルテの町で、買ったんだよ」
「それは、もしかして異世界からきたという職人のですかっ!!」
「そのはずだけど、どうかしたの?」
「この白銀刀・初名も、その職人が作った刀なんですっ! これがなかったら、私はガイアウルフに勝てなかったですから、その職人さんは私の命の恩人です!」
ノーラさんが先ほどまでの真面目な様子はどこかにいってしまい、ものすごい勢いでまくしたててくる。
おっさんたちには、俺の情報は秘匿してもらっているはずだから、俺がその職人ということは知られていないはずだ。
「――それでですね、この白銀刀・初名は、見た目が綺麗で、それでいてすごい斬れ味をしているんです。ミスリルから作っているはずなのに、アダマンタイト製の武器と性能は肩を張るんですよ? それでほかにも、白銀刀・初名はスキルが――」
「そ、その辺に、、、ぐふっ」
まるで、心の中の暗黒部分を的確についてくるような言葉の刃が、俺に襲い掛かる。
しかし、ノーラさんの言葉は止まらない。
――ノーラさんの褒め殺しは、寝るまで続いたのだった




