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にん~行雲流水~  作者: 石原に太郎Ver.15y-o
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《逃走 叙里》

ズキーン右足の鈍い痛みに気付きゆっくりと目を開けた。

叙里は煤けた鉄の匂いが充満する見知らぬ小屋の中にいた。


部屋を見回すと手裏剣と忍刀が壁中に並んでいる。

見慣れた棒手裏剣に交じって見たこともない形の平手裏剣もある。

手裏剣には棒型と平型の2種類があり、主に棒型は攻撃戦に平型は防御戦に使うことが多い。

叙里は初めて見る形の平手裏剣を手に取り、まじまじと眺めた。

刃先の滑らかさ中央から先端にかけての微妙な曲線から、打った時の得も言われぬ回転力が想像できる。


これを作ったのは誰だろう。

見知らぬ小屋にいる不安感よりも、手裏剣の見事さに感嘆し作者が誰なのか、どのように作ったのかに興味がわいた。


「気が付いたか」

しわがれた声に振り返ると、そこには顔中に痣がある小さい男が立っていた。


「それは白樺忍者からの依頼品だ」

「白樺忍者。」

叙里は初めて聞く忍者名に思わず聞き返した。


「なんだ、おめぇは忍者のくせに白樺忍者も知らねえのか。」

叙里はきょとんとした顔で小男を見つめた。


「東の果てに住んでる忍者達だ。あいつらは変わった武器が大好きなんだ。」

と言って折り畳み式の棒手裏剣を叙里に投げた。

叙里はその棒手裏剣を受け取ると、


「これは凄い。」

舐めまわすように細部まで確認して、


「これかな。」

そう言うと左手で中央部の四角い突起を押して、右手で一方の先端を持ち力を込めると、ガチッと音がしてくの字になった。


「ほぉ~、よく分かったな。」

小男は叙里の所作を見てニヤリとした。叙里も目を輝かせながらニヤリとし返した。



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