表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
にん~行雲流水~  作者: 石原に太郎Ver.15y-o
44/92

《晩秋の黒組見習い戦忍小屋》

緊張に包まれた晩秋の桜修忍里。


黒組見習い戦忍小屋では櫂も叙里に呼び出され、久しぶりに六人で囲炉裏を囲んでいる。


「今年の赤組修忍で三年九人になり、先日準戦時体制になりましたね。」

「何か違和感を感じませんか。」

叙里は昔話の研究を進めていた。


「ちょうどここには五種類の村全ての出身者が揃っています。」

「櫂には以前に津島忍者の謎の話をしましたが、あれから更に面白い発見がありました。」

「叙里ごめん、あの時の話も、もう一度話してくれる。」

確かに水車小屋の前で昔話を聞いてはいたが、櫂には良くわからなかった。

仕方がないという表情で叙里はまた説明を始めた。


「まず津島忍者の昔話は、全部相克関係になっています。」

「そうこくぅ、」

「クスッ。」

櫂は団丸の反応が自分と同じだったので可笑しくなった。


叙里は気にせずに続けた。

「水は火に勝ち、火は金に勝ち、金は木に勝ち、木は土に勝ち、土は水に勝つ」

「これが相克の関係です。」

「はい、そうですか。」

そして団丸もやはりあの時の櫂と同じように叙里の口調になった。


「団丸もみんなも返事はいいから、まずは最後まで聞いて下さい。」

叙里はそういうと、

「桃の村では津島忍者が首を斧で切り落とし皆殺しにしています。団丸の村では村人の頭が大木で潰され、僕の村では生きたまま火あぶりです。蓮は生き埋めで、奏は水に沈められていましたね。」

「あっ。」

蓮と奏は同時に声を上げたが、団丸と桃はまだ分かっていないようだ。


「火系の奏の村では水で殺され、金系の僕の村では火あぶり、木系の桃の村では金属の斧で、土系の団丸の村では大木で潰され、水系の蓮の村では土に生き埋め。」

「ここからが櫂にも話していない新しい解釈ですが、」

というとみんなを見回して、


「まず三年九人の龍神の神話と津島忍者の昔話はどちらが古いでしょう。」

「龍神だよ。」

「何で団丸はそう思うのですか。」

「だって、龍神の方はずっと昔で京に都が遷るずっと前だよ。」

「もう一度、龍神の神話を思い出してください。」


「あっ。」

蓮は何かに気付いたようだ。


「奏は気付きませんか。」

「何よそれ、やな感じね。アタシだけじゃなく蓮以外は誰も気付いてないでしょ。」

プライドの高い奏はちょっと怒っている。


「いえいえ、そんな意味ではなくて、よく思い出せば本当に簡単で、団丸でも直ぐに気付くような事なんですよ。」

「えっそうなの。」

団丸は何も気にしていないようだ。

「何それ、勿体つけないで早く話しなさいよ。」

奏はそれが逆に気に入らない。

「あっそういう事か。」

櫂は気が付いた。

「本当だ、そのままなのね。」

桃も気が付いた。

「そうです、素直に聞けばそのまま津島忍者の方が古いと直ぐに分かるのです。」


「いいから、早く教えなさい。」

奏は相当イライラしてきたようだ。

「そうだよ、叙里、早く教えてよ。」

団丸もまだ気付いていない。


「教えるも何も、龍神の神話では津島忍者が女子供も一人残らず龍神に焼き殺されているのです。」

「うっ」思わず声が出た奏。


「それで、どっちが古いの。」

団丸はまだ気付いていないらしい。


「叙里、みんなに聞きながら進めるのはやめよう。今は時間が大事だから、分かった事を全て話してくれ。」

今まで黙って聞いていた蓮が叙里に注文した。


みんなの視線が叙里に集まる。


「まず龍神の神話では津島忍者が皆殺しになっているので、津島忍者の昔話の方が当然に古いはずです。」

「あああ~」やっと気付いた団丸の大声に、

「シーッ」一斉に口に指を当てて団丸を抑える。


「龍神の神話は相当に古いと思わせるように、わざわざ京に都が遷るずっと前と言ったり、昔からある色分けをしたり、わざとらしくて矛盾が多いのです。」、

「また、龍神の冒頭部分に三年九人があるのは明らかに意図的で、理由はまだ分かりませんが桜忍者が作ったものだと思われます。」

「何で桜忍者が作ったって分かるの。」

「シーッ」またしても団丸だ。


「日ノ本五大忍者は修忍の里を持っていると言われていますが、年毎に分けて修行を行うのは桜忍者だけのようです。よって何年が何人と数えられるのは桜忍者だけなのです。」


叙里が続ける。

「ここからは仮説ですが、もしかしたら桜忍者が津島忍者の殲滅に深く関わっていて、それを何かしらの理由で隠す為に作られたのが龍神の神話なのかもしれません。そう考えればつじつまが合ってきます。」

「三年九人であれ程驚く教忍頭や長老達は何か知っていると思って間違いないでしょう。」


しばしの間の後、蓮は何かを頭の中で確認するかのようにうんうんと数回頷くと。

「それで終わりか。」

「今のところは。」

話はじめと違い叙里の歯切れが少し悪い。

「いくつか質問がある。」

蓮と叙里のやりとりが始まった。

「はい、何でしょうか。」

「五大忍者修忍里の情報は信憑性があるのか。」

「はい、諜報から帰ってきた忍者と文献に載っている情報から推測しました。」

「では何処までが本当で、何処からが推測なんだ。」

「え~、まずは椛忍者ですが、ここは活動区域も近く情報が多いのでまず間違いないと思います。」

「その情報元を教えてくれ。」

「え~っと、」


眠い目を擦りながら、必死に耐える櫂。


「ウワァ~」

隣では大あくびの団丸。


奏は興味がなくなったのか、爪を磨いている。


桃は半目で寝ているようだ。


叙里と蓮は周りが目に入らないようで、二人の掛け合いは深夜まで続いた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ