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にん~行雲流水~  作者: 石原に太郎Ver.15y-o
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《験厳洞窟その二》

桃は大丈夫かな、櫂は昨夜の事を思い出し自分より先に入った桃の事が心配になった。


ここまで洞窟は一本道で迷うような所は全然なかった。

それなのに出口まで辿り着ける修忍が毎年数人しかいないのは、きっと何かあるのだろう。

しかし考えても意味がないのでとにかく前に進むことにした。


周囲に警戒しながら進んでいるうちにある疑問が湧いてきた。

黒組の修忍達が次々と洞窟に入っているのに、誰にも合わない、歩く速さがみんな一緒なのかなとも思ったが、人が出す物音が一切しない。

洞窟内で聞こえるのは天井から落ちる水滴の音と自分の歩く音だけだ。


少し待ってみた、きっとせっかちな叙里が追いつくはずだ・・・誰も来ない。

足音もしなければ、人の気配さえ感じない。

ではと、勇気を振り絞り早駆けをしたが、前を行くはずの怖がりな桃にも追いつけない。

しかたなく歩き続けることにした。


と急に周りの景色が回りだし、段々意識が遠のいていく・・・


何かに後ろから引っ張られ、意識が朦朧として、虹色の景色だけが前に向かって進んでいる。


しばらく、極彩色のグルングルンが続いたが、徐々に意識が集中しだすと


目の前にはまん丸で綺麗な青いお月様が浮かんでいた。


周りを見渡すとたくさんの星がいつもよりはっきりと散らばっている。

よく思い出せないが、いつか同じ景色を見たような気がする。


ここは一体どこだろう。


まったく音がなく匂いもない。


ただ、青く綺麗なお月様だけが目の前にある。


手を伸ばしてみたけど触れない。


「櫂・・・」


誰かに呼ばれた気がする。


「櫂・・・・・」

見回しても誰もいない。


「櫂」

今度ははっきりと聞こえた。

辺りを見回しても、たくさんの星があるだけだ。


「誰かいるの?」

櫂が問いかけても誰も答えない。

全くの無音の空間に包まれている。

更に耳を凝らすと、


「リ・ウ・・・」

微かに声が聞こえてきた。


「リ・ウ・ニ・ツ・テ・・・」

小さくて聞き取りにくいが、、なんだか懐かしい感じがする、優しい声だ。


「リ・ウ・ニ・キ・ヲ・シ・テ・・・」

リウがどうしたんだろう・・・


その優しい声に集中すると、突然グワ~ンと青いお月様に引っ張られた。

青いお月様がズンズン大きくなる。目の前一杯に大きくなって・・・

ぶつかる~っと強く目を閉じた瞬間に目が覚めた


櫂は薄暗く狭い場所で仰向けになっているようだ。

仰向けのまま上に手を伸ばすと天井に触れた。

ヌルヌルしてヒンヤリしてゴツゴツしている。

聞いたことがあるような音がするが、反響しているようでよく分からない。

ゆっくり息を吸い込むと、湿った岩の匂いと、木カビの匂いが鼻腔に充満した。


どうやら狭い洞穴の中のようだ。

足の方向から光が差し込んでくる。

狭い中で首だけ起こして、光がさす方向に目を凝らすと足のすぐ先に、光が入ってくる場所があるようだ。

何とか体をよじって頭と足の向きを変えて、えいっと戸を押し開けると、明るい光で一瞬感覚が麻痺した。


櫂はしまったと思った。


ここで泥玉がアチコチから飛んでくるだろうと思い、

すかさず右側に飛び退いた。。


ザパ~ン・ザパ~ン・・・・・


左側から以前に聞いたことのあるような波音が聞こえてくる。


泥玉は飛んでこない。でも確かに人の気配がする。

一人二人・・・どうやら囲まれたらしい。

しかも気配が相当薄い。

これはかなりの手練れに違いない。

ここは修忍の里ではない。

櫂は自分の窮地を悟った。


前に数人、右にも数人、後ろは洞穴、左は人の気配がない、音からして崖まではおそらく五間程、もう飛び降りるしかないが、果たして崖まで移動する間に手裏剣が何本飛んでくるだろう。

全部避けられるだろうか。


でも行くしかない。


グッと丹田に気を入れて駆け出そうと思った瞬間。


バサバサッ!!


周囲から人影が飛び出してきた。ドスッ鈍い衝撃が全身を襲った。


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