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にん~行雲流水~  作者: 石原に太郎Ver.15y-o
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《水練 潜水その二》

ザパ~ンと勢いよく川に飛び込んだ櫂は、軽快に水中を進んでいた。


前方には誰かの足らしきものがある。


よしこいつを抜くぞと気合を入れて進んでいくと、前方ではなく何故か川底に進んでいるような気もする。


やはり何かがおかしい、グングンと進んでいくが一向に向こう岸には着かないし、川底だとしてもこんなに深いはずはない。

しかも先を泳ぐ修忍が直ぐそこにいる。

何だろう随分と長い鉢巻が水に揺れているようだ。

緑の鉢巻って誰だろう。

更に気合を入れて前の修忍を追い越す時に誰だろうと横を見た。


全身が緑色で口が黄色い。背中に甲羅。


「かっかっ河童だぁ!」


引き返そうにも何故か体がいうことを聞かない。


それにしても川がこんなに深いわけはないのだが、と思った時にザパ~ンと水面に顔が出た。


なんだか不思議な光景だ。


天井には白い壁の家がたくさん並んでいる。

家々の間には水路のような青い道が張り巡らされている。

上下が逆になっているようだ。

カチカチ・カチカチ・規則正しい変わった音が微かに聞こえる。

何の音だろう、その音に耳を傾けると、


カチカチ・カチカチ・チ~ンッ。


ゴ~ン!


大きな音と共に、ザパ~ン、ザパパ~ンと水面から一斉に緑鉢巻の河童が飛び出していく。


あれあれっ・・・


櫂も水面から天井に飛び出しそうになっている。

いや、正確に言えば天井に落ちそうになっている。

水面から落ちないように体を捻じり頭を水中に戻す。

必死に潜ろうとするが、どうやっても水面に引き寄せられる。

足が水面から出たようでいくら蹴ってもスカスカだ。

一生懸命両手で水を掻いて潜ろうとするが、徐々に体が宙に飛び出していくのが分かる。

うわっ、とうとう顔まで出てしまった。

上にある水面に残った手で、何とか水中に戻ろうとするが、


スポンッ!


遂に全身が水から出てしまった。


ウワァ~落ちる~と思った瞬間にグルグルと目が回る・・・


意識が朦朧とする中でフワフワ~っと幸せな安心感に包まれた。


ドクンドクン安心の鼓動が聞こえる。


僕の鼓動じゃないのに安心する。


ウ・レ・カ


何かが聞こえる


「産まれてきたいか?」


なんだそりゃ?


「産まれたいか?」


・・・・・


どうやら答えなければいけないらしい。


「うっうっう~産まれたいか?」


「はい、産まれたい!」

と答えるとまた周りがグルグル回りだし気が遠くなっていく。


どのくらい経ったのだろうかシャラシャラと川のせせらぎが聞こえてきた。

耳を澄ますと遠くからブギュブギュとイノシシブタの鳴き声も聞こえてくる。


あ~潜水は失敗しちゃったのか。


大きく息を吸ってから目を開けると、桜の花びらが春の光の中で舞い踊っていた。


鼻に付いた花びらを指で摘まんで眺めていると。


「櫂、気が付いた。」

「握り飯持ってきたよ」

「櫂・・・」

いつもの三人が心配そうに覗き込んでくる。


「プカプカ浮かんできた時は本当にビックリしちゃった。」

「死んだかと思ったよ。」

「櫂・・・」


-本当に久しぶりに溺れちゃたんだな~-


櫂は摘まんだ桜の花びらを、フ~っと息で飛ばすと。

既に散り始めている友達に混じり楽しそうに踊っているようだ。


この桜の花が全て散ると、いよいよ験厳洞窟の試練の日となる。


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