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幼女と執事が異世界で  作者: 天界
第3章
51/182

51,街道



 北門を抜けると土を踏み固めたような街道が通っている。

 幅は大きな馬車でも2台は余裕で通れるくらい広いが、石畳でもなければ当然コンクリートでもアスファルトでもない。

 たまに凸凹なところがある程度で歩きやすいといえば大分歩きやすい。それなりに往来もあるのか道と草が生えているところが完全に別れている。



「見える範囲で誰もいないね」


「基本的に街道は危険領域ですので護衛なしでは一般人は通行できません。乗り合い馬車も故障状態ですのでこれが正常かと存じます」


「そっかー」



 誰もいない街道をのんびり散歩気分で歩きながら雑談に興じる。

 ネーシャにも気軽に話に混ざっていいよ、と言ってあるのだが恐縮しちゃってなかなか混ざってくれない。でも話を振ればちゃんと話してはくれる。


 そんな3人は全員外套を羽織っている。

 オレは完全武装状態だが、アルは外套だけ。装備品である盾はオレの気配察知が門を抜けた時に復帰したことと街道が割と見通しがよく魔物が出てきてもすぐ発見できることからアイテムボックスの中だ。

 ネーシャにも盾を購入したが、彼女が持てる重量はそれほどでもないのでアル並の値段の盾ならば軽くて頑丈な盾もあったのでそれを買おうとしたらアルに諌められた。

 色々相談して基本的にアルの側を離れなければついでに守れるということで軽さを念頭に置いて安い盾を購入。

 防具に関してはオレのお下がりがある程度サイズ無視で装備できたので流用してみた。

 非戦闘員なのでガチガチに固める必要もないので防具はそれだけ。戦う必要はないけど一応銅の短剣を持ってもらっている。

 オレのサブ装備品でもあったので新たに青銅の短剣を購入してランニング時とかはそれを装備している。



「さてもうこの辺からなら門からも見えないし、とっとと移動しようか」


「ワタリ様ばかりにご負担をおかけしてしまって大変申し訳ありません」


「す、すみません、お嬢様……。あ、あの! が、頑張ってください!」


「気にしないで2人共。さて行こうか。複数転移Lv1」



 瞬時に限界距離をターゲッティングし転移する。

 視界が一瞬で切り替わり、気配察知で人がいないことと目視で確認してから再度転移する。

 道幅が広く街道との境となる草むらもそれほど高さもない。

 確認だけなら誰かいるかどうかはすぐにわかるし、気配察知で潜んでいてもわかる。

 まぁ範囲外だと難しいけど、盗賊の類はこの辺では見かけないらしいので大丈夫だろう。

 たとえいたとしても転移スキルを使えるような相手を襲うことはまずない。見た目が少年少女と幼女の3人組みだとしても。


 ネーシャを引き取ってからの1週間の間は仕事をしなかった代わりといってはなんだが、色々な情報を仕入れることに励み、ある程度集めることができた。

 まぁ主な情報源はエリザベートさんと騎士団詰め所で出会った騎士見習いのエイド君だけど。

 エリザベートさんは仕事終わりによく……いや毎日、海鳥亭に遊びに来るので色々と話す機会もあり、常識を疑われない程度に色々と教えてもらえた。

 その他にも街の内外の情報も知りたかったので図書館の事を聞くとなんと入館料がバカにならない額必要だということが判明。

 お金に余裕があるといっても結構厳しい金額だったため、1度だけ行ったきりだ。

 その時はオレは魔法関連の本を1日中読み漁り、魔法はかなり応用が効くものであることがわかった。

 アルはその他必要な情報を集めていた。

 図書館に行って初めて知ったがアルは速読もできるらしくものすごい速さで1冊の本を読み終わっていた。

 ネーシャが尊敬の眼差しでアルを見ていたのが微笑ましかった。

 ちなみにネーシャはまだ読み書きのお勉強中なので本は絵本くらいしか読めない。

 なので勉強ついでに絵本を読んでもらっていた。帰り道にすごく楽しかったと興奮気味に言っていたので奴隷でも入館料が代わらなかったからちょっと懐に痛かったが連れて来てよかった。


 騎士見習いのエイド君とは生きた情報というか生の情報を取り扱うのがうまい子だと紹介されて仲良くなった。

 騎士見習いといっても基本的には訓練に自主的に混ざるだけであとは特にすることもないので情報集めを趣味で行っていたらプロ級になってしまったそうだ。

 騎士よりそっちの道に行ったほうがいいのではないかと思ったが、本人は騎士志望なのだそうだ。

 騎士の格好よさなどを興奮気味に鼻息荒く語っていた。

 エイド君のおかげで図書館に行かなくても色々な情報を仕入れることが出来たのはかなりありがたかった。

 これからも良好な関係を保っていたいものだ。

 ちなみにやはり犯罪者を捕らえたことなんかを詳しく聞かれたが適当に誤魔化した。

 相手の連携が酷すぎて自爆して勝手に気絶していったのでオレ達はほとんど何もしていないといった感じに。

 苦しいかな、と思ったがエイド君は納得していたようだ。大丈夫なのだろうかそんなことで。


 ネーシャの処遇に関してだが、当初はすぐに奴隷解放の方向だったが今は違う。

 エリザベートさんに相談したのがよかった。

 ネーシャくらいの子が独り立ちするのは多少の後ろ盾がないと難しい。後ろ盾というと何か立派な人がいないとだめみたいに思えるだろうが、街で税を払っている町民とかでも十分だ。要は身元保証人のようなものだ。

 なのでもし解放するならエリザベートさんが後ろ盾になってくれるということになったのだが、そこまでしてもらうのは正直気が引ける。

 ネーシャが何かやらかしたらその責任はエリザベートさんが取らなければいけないからだ。

 その辺を話すと気にしなくていいのに、と苦笑された。


 解放してすぐ独り立ちというわけでもないけれど、奴隷から解放するともし誘拐などされると奴隷に強制的に落とされることもある。

 だが所有者の決まっている奴隷であれば誘拐されても所有奴隷なので売れない。

 しかも奴隷の位置はPTを組んでいなくても所有者であれば大体の位置がわかる、これはPT編成時のレーダー機能よりも正確なので、奴隷状態を維持した方が誘拐などに対処しやすい。

 まぁ誘拐されるのを前提に考えるのもどうかと思うが、自分が1度そういう目にあっているのでどうしても考えてしまうのだ。


 その他にもネーシャの解放にアルが異議を唱えたのもある。

 最低でも買い取った額分は働かせるべきであると。確かにその通りだと思う。

 安全性なども考慮して結果として解放はせず、買取金額を労働で払い終わるまでは解放はお預けということになった。

 ネーシャが希望するなら買取金額達成後にもそのままにすることも話してある。


 ちなみに今現在ネーシャの仕事はほとんどない。それ以前にアルに勉強を教えられているレベルだ。

 この世界での識字率は読み書きと簡単な計算が出来れば上の方に属するそうだ。

 なので読み書き計算が出来れば職の幅がかなり広がる。


 買い取り金額返済についてはアルからの意見なので、給与面に関してはアルに全権委任。

 決して面倒だったからじゃない。決して。


 ちなみに今の段階では給与0。

 勉強を教えてもらっている段階なので逆に借金が増えてもおかしくないような状況だがその辺は大目に見ている。


 任せたけど、ネーシャの返済が終わるのは一体いつになるのかちょっと心配だ。


 ネーシャの体調については毎日のトレーニングと勉強にまったく弱音を吐かず、見た目にもトレーニングモードでステータスが初期値並にのオレより体力があるように見える。

 無理してないか、とちゃんと確認もしているが問題ないそうだ。

 恐るべし初級魔法:体力回復……いや獣人の基礎能力の方だろうか……。


 能力といえばネーシャには鍛冶神の加護がついている。

 これは本人に確認したところ知らなかった。

 自身のステータスには表示されていないらしい。

 隠しステータスなのだろうか。ということはもしかしたらオレにも創造神の加護でもついているのかもしれないが、自分を鑑定できないので確認できていない。


 鍛冶神の加護がどんなものなのか知りたくていろいろ調べて見たり、実際に鍛冶場に行ってみたりしたがよくわからなかった。

 加護自体は伝承の類でしか情報がなく、神のうんたら~という眉唾物のアレだったので微妙といわざるを得ない。

 鍛冶場で魔結晶の付与が出来るところもあったのだが、今のところ保留にしておいた。


 街中の人などいろいろな人に鑑定をした結果としては加護持ちはネーシャとアル以外なし。

 というかほとんど鑑定失敗だった。

 やはりBaseLvが関係しているのかもしれない。働いてそうな人は悉く失敗したからだ。

 仕事をすればBaseLvがゆっくりとだが上がるとアルに教えてもらっているし。


 その他にも冒険者ギルドに登録したことにより取得した職業:冒険者がキーだったのか、PT編成が取得可能だった。ただし1ポイント消費する。

 1ポイントくらいなら問題ないので取っておいた。



 そんなこんなで慌しく1週間が過ぎた。



「おっと、人がいるね」


「馬車と護衛が3人。商人かと愚考致します」


「1時間で結構な距離稼いだけど、やっと会えたね、第1街道人」


「街道人……ですか?」


「あー深くは突っ込まないで……ネーシャ」


「す、すみません……」


「いやいや、謝らなくていいよ……」



 さすがにネーシャに前世のテレビ番組のネタは通じないようで不思議そうにしていた。

 まぁ会話からわかるように1時間転移連発して相当な距離を稼いだにも関わらずすれ違った人は0だ。

 この街道は寂れているのだろうか。それともコレが普通なのだろうか。途中で分岐する道はそれなりに合ったのでこっちの方面が人気がないだけなのかもしれないけど

 何せ初めてあった人は護衛を3人も連れているような人だ。

 魔物が出るからこれが当然なのかもしれない。



「やぁ、こんにちは。子供だけでこの道を行くのは危ないぞ?」


「こんにちは。心配していただきありがとうございます。でも私はこれでも冒険者ですので大丈夫です」


「これはご丁寧に。しかし冒険者……? ふむ。なるほど、そっちの男の子は相当できそうだね。なら安心だ。

 夜にならなければ魔物もあまり出てこないだろうし、あと3時間も歩けば村に着く。ここからは俺達がほとんど道中狩りながら来たから大丈夫だろう。

 だが今日は村に泊まった方がいいぞ」


「わかりました。ありがとうございます」



 第1街道人の護衛の1人から馬上からにこやかに話しかけられたので、無難に返したが思いがけず情報を仕入れられた。

 実際転移で飛びまくってきたのと、地理に疎いのもありどの程度進んでいたのかわかっていなかったのでありがたい。


 それにしても護衛の3人全員が微笑ましそうにしていたのはなんか違和感がある。

 彼らも冒険者だろうがオレの知っている冒険者とは全然態度が違っていた。

 まぁ世の中色んな人がいるということだろう。深く気にしても仕方ない。

 それにアルを見て出来ると言っていたし見る目がある。ギルドで絡んできたような馬鹿どもとは違うということだろう。

 きっとランクが高い人達なんだろう。うん、きっとそうだ。



 護衛の3人も騎乗しているので馬車はそれなりのスピードで進みあっという間に見えなくなった。

 それからは誰とも会うことなく連続転移し、目的地近くまで辿りついた。



「左に行けば第1街道人の人が言ってた村だね。右が採掘場か。ここまで2時間くらいしかかかってないと思うし、お昼まで多少時間もあるからぱぱっと終わらせちゃう?」


「調査に時間がかかれば夜になる可能性があり、夜の街道は危険です。早めに動くべきかと愚考致します」


「そうだよね。んじゃさっそくやっちゃいますかー」



 依頼内容は採掘場の石切り場に出没している岩食いペンギンの調査。

 調査の内容は大体の数の把握。出来れば巣の特定。もっと出来れば数を減らしておく。更に出来れば殲滅だ。


 最低でも数の把握でも十分であり、巣の特定はしなくてもいい。

 討伐に関しても自由なのでやらなくてもいい。

 でもやればやるほど追加報酬は上がる。


 オレは最初から巣は探さず、石切り場に居るやつだけの殲滅を目標にしていたりする。

 ネーシャもいるので巣が森の中にあったりしたら面倒だからだ。


 ちなみに最低ランクFの仕事でもあるので調査以外の項目は当然まったく期待されていなかったりする。



 別れ道で調査用に借り受けているアイテムを起動させ右の道を少し歩くこと10分程度、問題の石切り場が見え始めたところで大人サイズのごつごつとしたシルエットがいくつも見え始めた。




色々あるんです。

ワタリちゃんも色々考えたんです。

結局こうするのが1番いいという結論に達したのです。


そんなこんなな1週間。

さぁ次回はいよいよ?


次回予告

ペンギン。

それは足が短く地上ではぺちぺち歩きの可愛い存在。

ではあそこにいるのはなんでしょう?


気に入っていただけたら評価をして頂けると嬉しいです。

ご意見ご感想お待ちしております。


実際のペンギンは見えている部分が短いだけで足は短くありません。

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『濁った瞳のリリアンヌ』完結済み
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