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幼女と執事が異世界で  作者: 天界
第3章
49/182

49,一緒にトレーニング


 夕食を食べた後名残惜しそうにエリザベートさんは帰宅していった。

 正直エリザベートさんが帰ってくれてほっとしたのは言うまでもない。

 彼女とアルは混ざるな危険の標語がぴったり合う恐ろしい存在だ。

 でも混ざらないと喧嘩するし、混ざったら暴走するしでどうしようもない。


 そんなことを思い溜め息を吐きながら3階へと戻り一息ついているとアルが許可してほしいことがあると言ってきた。



「それで、アル。許可って?」


「はい、ワタリ様。ネーシャをメイドとして教育する許可が頂きたくございます」


「メイド……」



 オレの脳内に浮かんだのはフリフリのミニスカートのメイド服を着たネーシャが銀盆片手に萌え萌えきゅん、とやっている姿だった。

 正直メイドさんといえばそんな姿しか思い浮かばないテレビに毒された自分があほらしい。



「えーと……」


「公の場で私が手伝うのは躊躇われると思われる行為を彼女にやってもらうための教育です」


「あぁなるほど。確かに今日みたいにエリザベートさんとか居たらアルが着替えの手伝いとかするのは問題あるもんね。いい考えだね」


「お褒めに預かり、恐悦至極にございます。

 加えまして基礎的な読み書き計算、礼儀作法も教えます。その他にも戦闘技能や職に困らぬ程度に一般的なものを教える予定にございます」


「そっかそっか。うん、いいんじゃないかな。……って戦闘技能?」


「答えは是。自分の身を守るには最低限の戦闘技能が必須にございます」


「そ、そっか……」


「つきましては本日よりワタリ様のトレーニングと平行してネーシャにもトレーニングをさせたく存じます」


「きょ、今日から? まだ病み上がりだし、もうちょっとしてからでもいいんじゃ?」


「もちろん無理をさせるつもりはございません。ですがワタリ様の治療は失っていた体力を十分に戻すことが出来たほどの奇跡に等しい治療にございました。

 私の見立てでも彼女の体力は十分にございます」


「そうなの? うーん、アルがそういうんなら……」


「ありがとうございます。

 ではネーシャ。今日からあなたは私が監督します。辛い事もあるでしょうがしっかりついてきなさい」


「は、はい! よろしくお願いします、アル様!」


「私に様をつける必要はありません」


「は、はい! えっと……。アル先輩!」


「よろしい。ではさっそくですが読み書きからはじめますか」


「はい! あ、でも……。その……。あたし簡単な字しか読めないですし……書く方はまったく……」


「少し読めるのですか。それは重畳。ではこれを」



 さっそく始まったアルによるお勉強。

 ノートやペンなどというものはなく、どこから取り出したのか薄い箱に砂が入っていてそこに棒で文字を書いていく。

 なるほど、これなら何度でもやり直せる。筆記用具代もかからず砂があればどこでも勉強できるから楽だな。問題があるとしたらせいぜい持ち運びくらいだろうか。まぁそれも俺がアイテムボックスに仕舞ってしまえば解決するし、大した問題でもなかった。


 しばらくアルによる読み書きの練習が続くが正直俺にはチートスキルがあるので見ていても意味がない。

 今やっているのはウイユベール共通語なので俺には必要ない。

 夕飯を食べたばかりなので運動するにももう少し時間を置いた方がいい。

 なので正直やることがない。


 なので何の気なしにステータスを見てみると職業の治癒師のLvがかなり上がっているのに気づいた。

 なんとLv12である。

 BaseLvは1のままなのになぜか治癒師のLvが12。

 一体何が、と思ったがよく考えなくてもネーシャの大怪我を跡形もなく治療したのだ。その経験値だろうことは簡単にわかった。

 逆に言えば治癒師がLv12になるほど経験値を得たにも関わらずBaseLvが一向にあがっていないのは、BaseLvが異常に上がりにくいのか、治療による経験値がBaseLvの経験値と認められないのか。まぁ治癒師のLvが異常にあがりやすいというのも捨てがたい。


 ついでに職業のLvがあがった事で治癒師の恩恵である回復力小上昇の効果もあがっていた。

 確か最初は+3だったのが今は+5だ。

 Lv12で+2ほど上昇。単純に考えるならLv6毎に+1だがどうなんだろうか。

 だが職業Lvの上昇による恩恵の上昇も確認できた。とりあえずトレーニング用のスキル構成に戻しておくことにしよう。


 とはいっても筋力増加を外して回復力につぎ込んだだけの通常構成ではあるが。

 買い物中でもMPが回復したら月陽の首飾りに注いでいたのでもう貯蓄量は満タンだ。治療用の構成の回復力は伊達じゃない。

 余ったMPはもう貯蓄することができない。

 もったいないと思ったところでふと閃いた。



「アル。質問!」


「なんでございましょうか」



 ネーシャのお勉強を見ていたアルがすぐに反応してくれる。ネーシャも勉強を一旦中止してこちらを見てくる。



「あー、ネーシャは勉強続けて。えっとね。筋トレだと筋力が増加するでしょ?

 ということは魔法の練習をしたら魔力があがるのかな?

 同じように器用をあげようと思ったら何か細かいことでもすればいい感じ?」


「答えは是。魔法の練習はなんでもいいのでとにかく魔法を使うことで成り立ちます。そして上昇するのは魔力にございます。

 器用も同様で細かい肉体制御により上昇します。

 ワタリ様の場合は特に針と糸を使った事柄が上昇しやすい傾向にあると存じます」


「針と糸……? 縫い物とか?」


「答えは是。単純な縫い物でも問題ありませんが、特に刺繍が効果が高いと愚考致します」


「刺繍……。やったことないけどやってみるかー。ありがと、アル。さすがだね。それも書いてあったの?」


「答えは是。ワタリ様に関する事柄は全て網羅してあります。

 そして勿体無いお言葉。このアル、感激で前が見えません」



 上を向いてプルプルし始めた従者君は放置するとして、オレの事は網羅してあるのか……。チュートリアルブック怖い。

 でもそのおかげでトレーニングもしやすい。普通ならどれが上昇しやすいのか色々試行錯誤しなくちゃいけないんだろうけどチートもあるのになんて楽なんだろうか。


 筋トレは複数の種類をやることで褒められたから多分それがオレにとって上昇しやすい傾向なんだろう。

 でも魔法に関しては何でもいいと言われた。

 これはみんなそうなのか、それとも俺だからなんでもいいのか。

 よくわからないがまぁいい。なんでもいいんだったらそっちの方が楽だ。


 ネーシャのお勉強に戻ったプルプル君を横目にしてスキル構成を回復力特化にしていく。

 今回はトレーニングなので威力はなくていいので、魔力分を魔法制御にも役立つ器用に回しておく。

 魔法もとりあえずの水と火だけでいいだろう。

 通常構成時にもこの2つだけなので今はこの2つを重点的に練習することにした。



 魔法はイメージだ。

 イメージにより形や動作を作り、ソレに応じてMPが消費される。

 強く、大きくイメージすれば消費があがる。

 逆に弱く、小さくイメージすれば消費は少ない。


 動作は自由性があがれば消費が大きくなる。

 単純なものほど消費が小さくなるというわけだ。


 今は練習で色々なパターンを試してみることにした。

 回復力がとんでもない状態なのでMPを消費してもすぐに回復するのをいいことにどんどん魔法を使う。

 もちろん初級魔法:火は室内なので飛び火しないように気をつけながらだ。

 初級魔法:水もびしょぬれにするわけにもいかないので気をつけなければいけない。



「室内で魔法の練習ってだめじゃね……」



 気を使いながら色々と試し、ふと漏れた呟きは空中を飛び回る小さな炎の音に掻き消された。







◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆







 しばらく試し、極少の火と水滴を細かく動かすのが1番効率がよさそうだとわかったのでそれをメインに練習してみることにした。

 効率がよさそうだと思ったのはなんとなくだけど、アルに聞いたらそのなんとなくが非常に重要なことだと言われた。

 直感はイメージが大事な魔法において最重要な事柄らしい。


 それなりに広い部屋を3つの小さな火が追いかけっこをしたり、複雑な軌道を描きつつ高速で移動していく。

 休憩中のネーシャも目を輝かせてそれに見入っている。


 この魔法の練習。意外と簡単なのだ。

 器用による制御力の上昇の影響もあるのだろうが、アルによるとオレはかなり魔法の才能があるらしい。


 ファンタジーな世界で魔法の才能がある。

 実にテンプレで喜ばしいことだ。


 筋トレよりも魔法の練習をしたほうがステータス向上に繋がるのだろうけど、ソレはそれだ。

 やはり日課になっていたことをやらないのはなんとも言えない感覚に襲われる。


 昨日は疲れきってそれどころではなかったから仕方ないとして、今日からトレーニング再開である。



 ……なんか一昨日も同じ事言ったような気がするが気にしないでおこう。


 ステータスはぶっちゃけ魔法練習用のステータスで筋トレ用も兼ねているので問題ない。

 ネーシャの勉強も今日は終わりということで一緒にストレッチから始める。



「いだだいだだだだだ」


「ネーシャは体かたいなぁ……。そんなことじゃすぐ怪我しちゃうよ?」


「す、ずみまぜん~……いだだあだだだだあ」


「まぁ最初が痛いのはしょうがないよ。少しずつ慣れていくから我慢してねー」


「は、はいぃ~……だだだあだあだあだ」



 お相撲さんも最初の股裂きは痛いもんだ。ストレッチは多少痛いくらいにやった方が効き目があるので我慢してもらおう。

 でもそこは絶妙な力加減の持ち主のアル君。故障しないぎりぎりのところでうまく加減してネーシャにストレッチをさせている。

 オレの体はかなり柔らかいのでアルによる補助はいらないのだ。



 ストレッチもひと段落するとそれだけでネーシャはかなり疲労してしまった。

 試しに初級魔法:体力回復を使ってみるとすぐに元気になった。

 どうやら疲労回復にも効果があるらしい。かなりMPは消費したけど。

 イメージ的には乳酸除去的な感じだったんだけど合っていたらしい。


 ネーシャはストレッチに比べれば筋トレは大分マシでオレが10回くらいしか出来ないのに比べてその5,6倍やれている。

 まぁオレの方が効率はいいんだけどね。なんかちょっと悔しい。

 ステータスを変更すれば楽勝で勝てるけどなんかそれは違う気がする。


 汗だくになるまで筋トレをする。

 初級魔法:体力回復のおかげで休憩時間を短縮できるのがありがたい。ついでに回復力強化Lv3も使ってばりばり筋トレをしていく。


 1時間濃密な筋トレをしてアルにもらってきてもらったお湯で体を拭いていく。

 ネーシャはアルがいても簡単に裸になる。

 今までもそんな感じだったそうで、特に気にならないそうだ。

 まぁガリガリで男の子と大して代わらない貧相な体なので襲われることもなかったらしい。

 それを考えるとあの糞貴族は業が深い。

 オレでももうちょっと肉がついていたほうがいいと思うぞ。


 ちなみに一緒に体を拭いたりしたわけではない。

 その辺はアルがきっちり監督しているので、オレがまず最初の綺麗なお湯でしっかり身を清めてから残りの湯で2人が拭くといった感じ。

 オレ的には別に一緒でもいいのだが、アル的には問題大有りだそうだ。

 ネーシャも畏れ多くてできません、と縮こまってしまった。これは慣れとかそういう問題ではない。あとで対策を考えよう。


 綺麗にしたらあとは寝るだけだ。

 ランニングのこともネーシャにちゃんと言っておいた。

 頑張ります! と勢い込んでいたネーシャが微笑ましかったので今日はいい夢が見れそうだ。



ネーシャの教育と訓練が開始されました。

次から少し時間が飛びます。



次回予告

異世界といえば。

やっと出番です。

ただの身分証発行場所としてしか意味がなかったあの場所が!?



気に入っていただけたら評価をして頂けると嬉しいです。

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『濁った瞳のリリアンヌ』完結済み
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