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幼女と執事が異世界で  作者: 天界
第7章
143/182

143,データ収集


 案内された場所は炉があったところから少し離れた部屋でもちろん暑くない。入り口には兵士っぽい武器を所持した人が2人警備している。

 オレ達の事は話が通っているみたいで頭を下げて挨拶してくれた。


 中にはたくさんの武器防具が整理されて置かれている。

 奥には金庫のような巨大な物体が置かれていて、そこに魔結晶が保管されているそうだ。

 まぁ魔結晶は高価な物だから厳重に管理するのは当然だろう。


 金庫はダイヤル式でも暗証番号式でもなく、どうやら手の平を金庫の一部分に当てて判定するみたいな感じだった。

 指紋認証みたいなもんだろうか。


 中から取り出された魔結晶は5つ。

 全部同じ魔結晶で魔結晶【狼】だった。

 鑑定結果は――。



        ■□■□■□■□■□■□■□■□■□


 魔結晶【狼】

 狼系魔物の体内で結晶化した魔力の塊。

 非常に希少で、魔結晶を生成するまでに到った魔物はかなり強くなる。

 空いているスロットに装着することにより、付与効果を与える。

 付与効果:筋力+1


        ■□■□■□■□■□■□■□■□■□



 筋力+1は人気の高い効果だ。

 武器につけても防具につけても戦力アップ間違いなしだから前衛職にはとても需要がある。



「ではこれより魔結晶付与を始めます。おい、始めろ」


「はい!」



 どうやら魔結晶を仕込むのは鍛冶師長さんではないらしい。

 部屋に一緒に来た鍛冶師さんが行うようだ。


 用意された物は『ダマスカスロングソード』という刃に極彩色の紋様が入った高硬度の長剣だった。しかも5振り。

 今回の目的はこの『ダマスカスロングソード』に魔結晶【狼】を1つ以上仕込む事、だそうだ。

 1つ以上ということで1つ成功したら同じ『ダマスカスロングソード』にもう1つ試すそうだ。それで成功すれば大金星だが、失敗しても魔結晶がなくなるだけで『ダマスカスロングソード』の方は損害はない。

 5つの魔結晶がなくなるまで試行するそうなので、うまくいけば『ダマスカスロングソード』に5つの魔結晶が仕込まれる。


 もし成功したらとんでもない逸品ができる事になるらしいけど。


 1つ成功してもそれなりの金額の『ダマスカスロングソード』になるし、2つなら倍どころか5倍以上の金額になる。

 3つなら30倍以上になり、4つならオークション行き。

 5つならもうどうなるかわからないほどらしい。







  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆







 並べられた5振りの『ダマスカスロングソード』を鑑定したが……実はどれもスロットはなかった。

 『ダマスカスロングソード』自体結構な金額のする武器だそうだが……それでもスロットは1つもない。


 オレの予想が正しいなら全部失敗するはず……。


 画して1振り目の『ダマスカスロングソード』に魔結晶【狼】を仕込むためのスキル――練武が使用された。

 『ダマスカスロングソード』はまだ柄がつけられておらず、刃の根元には魔結晶を仕込むためのスペースが用意されている。つまりこれは最初から魔結晶を仕込む事を目的として製作されているのだ。

 魔結晶はスキルで仕込むため成功すれば魔結晶の形状が変化し、スキルを使用する以前に設置されていた場所に溶けて結合する。

 『ダマスカスロングソード』の根元に空けてあるスペースに溶けた魔結晶がしっかりはまるような形状と深さが用意してあるので、成功すればそこに綺麗にはまるのだろう。



「親方、失敗です」


「よし、そのダマスカスは一般販売に回せ。次だ」


「はい」



 やっぱり『ダマスカスロングソード』への魔結晶の仕込みは失敗した。

 失敗した魔結晶は消滅してしまいもうどうすることもできない。でも『ダマスカスロングソード』の方は無傷で何事もなかったようにそのままだ。

 しかし魔結晶の仕込みが失敗したということで、この『ダマスカスロングソード』にはもう魔結晶を何度仕込もうとしても成功することがないことは経験則でわかっているのだろう。

 特注品として製作されているだろう『ダマスカスロングソード』だが、一般販売にまわされるらしい。

 柄に魔結晶を仕込むスペースが空けられているし、購入した人は魔結晶の仕込みを試すのだろうか。でも失敗することは確定しているのだし注意書きくらいは張るのかな? 信用問題的な観点からして。

 魔結晶の仕込みが失敗するというデメリットはあるが『ダマスカスロングソード』自体かなりの性能の武器だから、ソレを差し引いても高値で売れるだろう。それでもやっぱり値段は下がるだろうけど。


 次々に試される『ダマスカスロングソード』。

 1振り目と同様に5振り全ての仕込みは失敗に終わった。

 だが鍛冶師長さんも仕込みを担当した鍛冶師さんも特に落胆はしていない。これが普通なんだろう。

 ゴーシュさんの話でも2,3割いけばいいほうだといっていたし、まったく成功しない日もそれほど少なくはないのだろう。



「残念ながら5振りとも失敗に終わってしまいました。

 しかしこれが普通です。魔結晶の仕込みは成功する方が珍しいのです」



 鍛冶師長さんの説明は続き、その後は魔結晶の仕込みに成功した武具などを見せてもらえた。

 空けてあるスペースに綺麗にはまっている魔結晶は単結晶だった時と比べて透明度が若干下がっていたりするが、その分スペース毎に違った形に溶けて固まっていてとても綺麗だ。

 このスペースから効果を伴った状態で取り外すことは出来ないらしく、やったとしても付与される効果がなくなってしまうそうだ。

 逆を言えば取り外すだけなら方法があるということでもあるが、それではただの綺麗な装飾品なだけだ。


 武器が破損して壊れてしまった場合は、修復できるかどうかは仕込み終わった魔結晶が濁っているかどうかで判断できるらしい。

 濁っていなければ効果は持続され、修復する価値が出てくる。だが仕込んだ時の形状を大きく逸脱するような修復をされると効果がなくなってしまうらしい。仕込まれた時点での形状を記憶して判定したりしているのだろう。

 融通があまり効かない代わりにただの装備がステータスに影響を与える装備に変わるのだからこれくらいはありだろう。


 さてこれで失敗のデータも得られた。

 見せてもらった成功作品の中にはスロットが2つあってそのうちの1つだけが埋められた物もあったが1つだけだった。

 これは連続で試さなかったのだろうか。


 聞けば連続で試すのはめったにないそうだ。今回はたまたまそういう依頼があったのでやったが、通常は1つの魔結晶の仕込みをして終わりだそうだ。

 まぁ魔結晶もそうやすいものではないので仕方ないだろう。

 むしろオレ達の見学に合わせてくれたのか、たまたまなのか知らないがとにかく試行回数が多いパターンを見学できたのはラッキーだったのでよしとしよう。


 見学も終わり、鍛冶師長さんにお礼を言ってから店へと戻ってくると店長さんが笑顔で応対してくれる。

 さりげなくこれからも当店を~的な事も言ってたけどその辺はエンタッシュに任せているのでオレに振らないで欲しい。


 魔結晶の仕込みデータはこれからは安い魔結晶を集めてスロットありの装備に実際に付与してみるのがいいだろうか。

 そのためにも無駄にならない魔結晶の確保と装備を選ばなければいけない。いくらお金持ちになったとはいえ、魔結晶を大量に買ったら即破産だ。

 成功する確率が高いのだからある程度売れる物を選んだ方がいい。

 逆に最底辺の値段の魔結晶でスロット無しの装備に付与して失敗するデータ数を稼いでみるのもいい。こっちは完全に赤字になってしまうけどそれは仕方ないだろう。


 とりあえずランカスター家で色々相談してみよう。







◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆







「安い魔結晶か。まぁ1番安くても10万単位はするぞ?」


「やっぱりそれくらいはしますか。じゃあ装備に付与してある程度売れるような魔結晶で安いのだとどのくらいになりますか?」


「そうだなぁ……」



 魔結晶はどんなに使えない能力でも、一応レアドロップだ。それなりの値段にはなる。

 使えない能力とはいっても本当に使えない能力ではないので最低限の需要というものは存在するらしい。

 なので捨て値で買い集めることは不可能となる。

 やはり魔結晶に関してはある程度の資金が必須だ。



「じゃあとりあえずソレを10個くらいお願いします」


「承った。装備はそれなりの物を用意しておけばいいんだな?」


「はい。でも私が見てから仕込む物を決めるのでなるべく多めにお願いしますね」


「任せろ。魔結晶が集まる頃にはそれなりの量は用意しておいてやる」



 ネーシャはまだ武器防具の作成は無理なのでゴーシュさんとトトさんが装備を作ってくれる。2人の作った装備ならスロット付きも多いだろうし、あとはオレが鑑定で選別して試して見ればいいだけだ。


 練武を使える人がいないので、トトさんが取得したいといっていたしちょうどいいのでパワーレベリングをして取得してもらうことになっている。

 トトさんの練武の練習にもなるし、オレも実験が出来るし成功したらゴーシュさんが知り合いの店に流してくれるそうなので資金回収にもなる。

 実に一石三鳥の素晴らしい作戦だ。







◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆







 トトさんのパワーレベリングは翌日に行われ、ユユさんとネーシャの時同様に魔誘香を使って魔物を大量におびき寄せて殲滅するといういつもの超効率狩りを始める。

 前回の超効率狩りから多少時間が経っているがそんなに魔物は集まらなく、されども大量に来たのには代わりなかったのでトトさんのBaseLvもそこそこ上がってくれた。

 トトさんのBaseLvは7だったので、ユユさんのBaseLv27を目標にしていたのだが1回の狩りでは到達できず、場所を移して魔誘香を焚き目標を達成した。

 当然大量に引き寄せての狩りなのでBaseLv27で止める事は出来ず――というか止める意味もない――最終的にBaseLvは29になっていた。



「あ、ありがとうね、ワタリちゃん……。これで練武を取得できる……よ……」



 さすがのトトさんもあれだけ大量の魔物が迫ってくるのはかなりきたらしい。

 でもユユさんみたいに気絶しなかっただけマシだろう。さすが男の子!


 これで魔結晶と装備がそろい次第実験する事が出来そうだ。




失敗データの収集も出来ました。

しかしまだまだデータ収集は続けなければいけません。

だってたかだか数回の試行ではデータとしては不足としかいえないですからね!


次回予告

時は戻ってエストリア姫が帰った後。

浮遊馬車の実験も終わり、いよいよ迷宮への出発が迫ってくる。

最終的な準備を行い、いざ中級迷宮へ!


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☆★☆宣伝☆★☆
『濁った瞳のリリアンヌ』完結済み
お暇でしたらお読みください

『王子様達に養ってもらっています inダンジョン』完結済み
お暇でしたらお読みください

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